天然ガス最大手ガスプロムは収益半減、「影の船団」も制裁で、プーチンの軍資金が危機に
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 19時16分
ブレンダン・コール
<天然ガス最大手ガスプロムで、経営状況の悪化を理由に人員削減が提案されていることがわかった。ロシアの重要な収入源である天然ガス販売の不振は、ウクライナ戦争の行方にも影響を与えるかもしれない>
ロシアの天然ガス大手ガスプロムは、ウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻によって科された制裁で収益が減少し、大規模な人員削減を計画するまで追い詰められている。
【動画】調査報道「影の船団」
重要性
ガスプロムは、プーチンが本格的なウクライナ侵攻を開始する前年の2021年には、ロシアの連邦予算の約7%を提供していた。2023年までには、制裁による減産と歴史的な損失で大打撃を受け、収益は半分程度になったと推定されている。
大規模なレイオフは、ロシアにとって戦費の稼ぎ手であるガスプロムの経営にさらなる下押し圧力がかかっている証拠かもしれない。戦費の調達がさらに滞る可能性もある。
知っておくべきこと
47newsのテレグラム・チャンネルによると、ガスプロム経営委員会のエレナ・イリュヒナ副委員長は昨年12月、アレクセイ・ミラー最高経営責任者(CEO)に、ガスプロムの中央オフィスとサンクトペテルブルク支店のスタッフを4100人から2500人に削減する提案をした。
同チャンネルは1月13日、この書面の画像を掲載した。イリュヒナはそのなかで、ガスプロムの直面する課題について説明し、「あらゆる管理レベルにおけるコストの最適化」を要請し、重複する機能や官僚主義を徹底的に排除する必要があると述べた。
イリュヒナによれば、過去20年間で職員の数は膨張し、給与総額は500億ルーブル(4億8500万ドル)に達したという。「人件費と社会保障費の削減で浮いた資金」は、「職員の能力開発」に振り向けるとも述べた。
フォーブス誌によれば、ガスプロム経営委員会のもう一人の副委員長セルゲイ・クプリヤノフがこの書面の信憑性を確認したが、それ以上のコメントはしなかった。
2023年、ガスプロムは6290億ルーブル(約68億ドル)の赤字になった。25年ぶりの赤字だ。プーチンのウクライナ侵攻を契機に欧州各国がロシアに代わるエネルギー供給源にシフトし、最大の収益源だった欧州市場の売り上げが減少した。
新たな試練
ガスプロムの人員削減の可能性を報じた47newsは、今年1月1日にウクライナとのロシア産ガス輸送協定が期限切れで失効したこと、米財務省が1月10日に発表したロシアのエネルギー部門に対する新たな制裁措置など次々と厳しい試練に見舞われていると指摘した。
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