次期トランプ政権は不法移民の強制送還で自分の首を絞める
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月16日 13時24分
1期目のトランプ政権では移民関税執行局(ICE)の局長代理を務め、2期目には国境管理を仕切ることになるトム・ホーマンはFOXニュースの番組で「ICEの手枷(てかせ)を外し」、手段を選ばず不法移民の流入を阻止できるようにすると語った。
だが大量送還には巨額の資金がかかる。バンスは年間100万人の送還を示唆しているが、それだけの数の不法移民を逮捕、拘束し、法的手続きを取って本国に送還するには、毎年およそ880億ドルの予算が必要になると、移民支援団体・米国移民評議会は見積もっている。
経済的コストはそれだけではない。不法移民は米経済を支える重要な働き手で、特に農業部門では過去30年間を通じて農場労働者の40%を占めてきた。彼らはアメリカ人がやりたがらないような仕事を(しかも多くの場合は低賃金で)担っているのだ。
不法移民は消費者としても経済に大きく貢献し、連邦政府の社会保障制度の恩恵をほとんど受けられないのに、納税義務も果たしている。
「彼らの経済的貢献、生産性、税金を失うという間接的なコスト」を考慮すべきだと、シンクタンク・移民政策研究所の米移民政策担当ジュリア・ジェラットは指摘する。
2022年には不法移民は連邦、州・地方自治体に総額およそ967億ドルの税金を納め、その半分以上は連邦政府の税収となったと、シンクタンクの税制・経済政策研究所は報告している。
ただし、不法移民の納税は「連邦政府には大いにプラス」になるが、州や地方自治体レベルでは事情は異なると、ブルッキングス研究所のエコノミスト、ウェンディ・エデルバーグは言う。州・地方自治体の税収はあまり増えないのに、教育や救急医療など必要な支援の提供を迫られるからだ。
こうした事情も受け、バンスらは不法移民を排除すれば住宅価格の高騰も収まり、雇用機会も増えて、アメリカ人にとっては良いことだらけだと主張する。低賃金で働く不法移民はいわば「賃金ダンピング」をしているが、彼らがいなくなれば企業はより高い賃金でアメリカ人を雇わざるを得なくなる、というのだ。
「アメリカ人はそういう仕事をやりたがらないと言うが、不当に低い賃金が嫌なだけで、まともな賃金なら喜んで働く」と、バンスは昨年10月にニューヨーク・タイムズに語った。
だが過去の事例を見ると、アメリカ人の労働環境は改善されるどころかむしろ悪化しかねない。コロラド大学デンバー校のアンドレア・ベラスケス准教授(経済学)らは、40万人以上の不法移民を強制送還したオバマ政権の政策の効果を検証し、大量送還が労働市場に与えた影響を調べた。
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