グリーンランド買収を巡るトランプ氏の野望と「中国問題」...識者3人が語る「北極圏の行方」
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月20日 13時20分
クラウス・ドッズ(ロンドン大学):グリーンランドは中国を「投資者」として期待
グリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相は、将来の独立したグリーンランドのビジョンが、トランプ大統領の大戦略による条件付けられたものではないことを明確にしている。
中国はグリーンランドにとって重要な経済パートナーであり、2022年だけで魚の輸出貿易は3億5000万ドル以上に達した。中国は、鉱業や観光業の発展、さらにはホテル建設への投資者として広く認識されるだろう。
また、中国がチベットや台湾に対して取っている立場を考えると、中国がデンマークとその自治領における関係に干渉する可能性は低いという見方が広く共有されている。
むしろ、トランプ大統領がグリーンランド(およびパナマ運河)について行った発言は、台湾が中国の侵攻や回収によるリスクにさらされる可能性を高めたと言える。
最終的に、独立したグリーンランドはアメリカにとって安全保障上の懸念と広く見なされるだろう。そして、北極圏での中国とロシアの協力が進む中で、この問題は緊急の対応を要するものとなる。
クラウス・ドッズ氏はロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の地政学教授であり、生命科学・環境学部の執行学部長を務めている。彼の研究分野は、地政学と安全保障、氷の研究、南極と北極の国際ガバナンスに及ぶ。
マーク・ナトール(アルバータ大学):中国との協力はグリーンランドの「広範な野心」の一部
中国はグリーンランドのシーフード輸出、特にエビやハリバット(オヒョウ)の重要な市場であり、これらはグリーンランド経済にとって不可欠な存在だ。
グリーンランドの政治家やビジネスリーダーは、経済的なつながりをさらに強化することを奨励しており、鉱業プロジェクトに興味を持った中国企業が何を提供できるかについての議論を進めている。また、インフラ、技術、科学的協力への投資に関しても中国と話し合いが行われている。さらに、グリーンランドは中国人観光客をより多く誘致することにも大きな可能性を見出している。
ただし、中国との協力は、グリーンランドの「広範な野心」という文脈の中で捉えられるべきだ。それは中国だけでなく、他の多くの国々との貿易関係や経済的パートナーシップを強化することに重点を置いている。
この優先事項は、グリーンランドが経済的な機会を得て貿易関係を多様化し、グローバル経済への参加を拡大し、デンマークや欧州連合市場への依存から脱却するために必要なものだ。
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