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トランプは、議事堂襲撃と大量恩赦でアメリカを2度殺した

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月23日 19時56分

多勢に無勢のなか英雄的に議事堂を守った警察官からは後に自殺者も出ている(2021年1月6日、米連邦議会議事堂) Photo by Michael Nigro/Sipa USA

ゲイブ・ウィズナント
<トランプの大量恩赦は、アメリカの民主主義を汚物まみれにした大統領と暴徒たちを法で捌こうとた司法界や法執行機関、そして市民を愚弄する行為>

ドナルド・トランプ米大統領は就任早々、4年前に起きた連邦議会議事堂襲撃事件で有罪となった受刑者たちの大量恩赦・減刑に踏み切った。

【動画】議事堂前に表れた巨大な汚物

トランプの行政命令で減刑された1人、極右過激派組織「オース・キーパーズ(誓いを守る者たち)」の指導者で、扇動共謀罪などで有罪となったスチュワート・ローズ服役州は釈放後の1月22日、「トランプ2020」のロゴ入りのキャップを被って連邦議会を訪れた。

トランプの恩赦の対象となったのは、2021年1月6日に起きた議事堂襲撃に関連して起訴された1500人余り。この襲撃事件では、100人余りの警察官が負傷している。

ローズはこの事件で最も重い刑を宣告された被告の1人で、彼を含めた14人は恩赦の対象から外されたものの、減刑されて自由の身となった。

別の被告人の釈放を訴えるために連邦議会を訪れたローズは記者団に対し、自分も完全な恩赦を求めるつもりだと語った。

事件で起訴された1600人近い被告人のうち、1000人以上が有罪を認め、ざっと250人は裁判の結果、裁判官もしくは陪審員団の判断で有罪が確定した。1100人余りが処罰を受けることになり、うち700人余りは数日〜22年の懲役刑を言い渡された。

暴動の最中に負傷した警察官は130人余り。この日議事堂にいた警察官のうち、少なくとも4人が後日自殺した。連邦議会警察の警察官ブライアン・シックニックは事件の最中に護身用の唐辛子スプレーを浴び、2回発作を起こして翌日に死亡したが、検視の結果、病気による「自然死」と判定された。

首都ワシントンの連邦地裁の裁判官らは1月22日、審理が続いていた襲撃事件関連の多数の刑事裁判を棄却した。何人かの裁判官は突然の審理打ち切りについて、文書で無念の思いを吐露した──これはアメリカの民主主義の根幹を揺るがした重大事件であり、トランプの大量恩赦で、これまでの捜査や裁判で明らかにされた事実がもみ消されることがあってはならない。

連邦地裁のコリーン・コラーコテリー判事は、暴動の証拠はビデオの「中立的なレンズ」や裁判記録、陪審員団の評決、判決理由などとして保存される、と強調した。

「被告人やその支援者らが、1月6日の出来事をどう粉飾しようとも、記録は残り、真実を伝え続ける」というのだ。

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