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「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月29日 14時30分

2点目は、DeepSeekのテクノロジーが基本的にガラス張りだということです。つまり、主要なテクノロジに関する論文やデータが公開されているのです。DeepSeekの姿勢としては、その方が集合知、つまり世界中の学者やエンジニアが参加することで、技術の改良と欠陥の是正ができたとしています。

ということは、別に国別の競争に負けたということではなく、オープンな開発思想が、何でも自前でやって囲い込む開発姿勢に勝ったのだという認識が浸透しています。別にアメリカが負けたわけではないというわけです。

3点目は、シリコンバレーには反撃の戦略があるということです。DeepSeekに負けたので、猛烈なカネを使って巻き返すとか、追いつかねばならないという発想はありません。とにかくDeepSeekの技術はオープンなので、誰でも使っていいのです。ですから、各社とも猛烈なスピードで事業計画の書き換えに走っています。つまり、自分たちはDeepSeekに対抗するのではなく、その成果を取り込みながら、AIを実際に利用するインプリケーションの部分に資源を投入すればいい、各社はそのように戦略を組み替えつつあるのです。

そんな中で、アップル社の姿勢が注目されています。GAFAMの中でアップルはAI戦略に遅れを取っているとされてきました。自前のテクノロジは弱く、ChatGPTにかなりを依存する中で、iPhoneなどに搭載された「アップル・インテリジェンス」の評判はあまり良くありません。ですが、DeepSeekの登場により、遅れていたアップルも先行していた他社と「同じスタートライン」に立てたと言われています。28日のアップル株の上昇にはそうした見方が反映しているようです。

4点目はエヌビディアの戦略です。確かにDeepSeekの成功により、高性能GPUを必要としない形で高性能なAIが実現できることが証明されました。ですが、それはエヌビディアの将来が暗転したことにはなりません。DeepSeekのテクノロジーを利用すれば、簡単にAIの性能は確保できるわけで、その先のAIの利用にどんどん進むことができるわけです。そうなればAIによる高性能半導体の需要は落ち込むどころかかえって拡大する可能性はあるというわけです。

そのような声明をエヌビディアは明らかにしていますが、これは決して強がりではないと思われます。シリコンバレー各社が「DeepSeekの達成を前提条件にして」新しい技術開発に突っ走ろうとしている中では、市場はそのストーリーを信じたのです。

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