仕事と私生活を「別人格」で生きる...SFドラマ『セヴェランス』とは? 多くの批評家が「年間ベスト作品」に
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月31日 14時52分
「人はそれぞれ自分の世界の中で、職場ではある人格になり、友人や家族といるときは別の人格になったりする。自分を再び1つに統合して、本来の感情を感じ、どこにいても本当の自分でいるためにはどうすればいいのだろう」
ルーモンの従業員が手術を受けた理由はそれぞれだ。主人公のマーク・スカウト(アダム・スコット、Adam Scott)は妻の死を忘れたいと思うあまり入社を決めたが、悲しみを忘れていられるのは仕事中だけだ。
ルーモンが開発した「セヴェランス(分離)」の手法は、完璧なワークライフバランスを見つける解決策とされる。しかしシーズン1で、一部の従業員が疑問を感じ始める。マクロデータ改良部で働くスカウトと彼のチームの同僚は謎を解明しようと格闘するが、自分たちの仕事の本当の意味を突き付けられる。
マクロデータ改良部はどうなるのか JON PACK/APPLE TV+
ルーモンの非道さは事情を探っているスカウトには衝撃的かもしれないが、この会社の奇妙な仕事を見ている視聴者は驚かないだろう。スーツ姿の男性従業員が子ヤギに哺乳瓶でミルクを飲ませていたり、目標達成のご褒美が「5分間の音楽ダンス体験」だったりという具合だ。
ベテラン俳優クリストファー・ウォーケン(Christopher Walken)が演じるバート・グッドマンは光学デザイン部の部長。彼のチームはオフィス内にサブリミナル効果を計算した絵画を飾っている。
アークエットが演じる中間管理職のハーモニー・コベルは、会社のカルト的なやり方に心酔している。従業員の反抗を抑え込む責任者として厳しく管理し、規則に従わない者には激高する。一方、会社の外の生活ではスカウトの隣人であり、特に害もなさそうな年長者として、彼のアウティーの生活に溶け込んで監視している。
冷淡なコベルはポーカーフェースに徹しているが、非常に危険な人物でもあるとアークエットは語る。
会社に忠実な管理職であることに全人生をささげてきたコベルは、シーズン1の終盤でクビになったときから壊れ始める。シーズン2の序盤では、自暴自棄になった彼女が、これまで以上に不穏な行動を取る様子が描かれる。
途方に暮れる会社人間
「コベルは宗教じみた会社にどっぷり洗脳されてきたから、会社から自由になるとはどういうことか分からない」と、アークエットは説明する。
「シーズン1の終わりに(ルーモンについての)大きな暴露がなされ、シーズン2の序盤で、コベルはそれまで対処する必要がなかった問題に直面する。会社が人生の全てだった彼女は、会社から切り離されると、物事をどう考えていいか分からなくなる」
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