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高圧的なトランプ関税の背景には中国を念頭に置いた「貿易の武器化」があり、世界貿易戦争の可能性は侮れない

ニューズウィーク日本版 / 2025年2月3日 17時52分

それがあからさまに示されたのは、1月下旬。アメリカが不法滞在のコロンビア人を軍用機で強制送還したとき、コロンビアの大統領は着陸・受け入れを拒否した。するとトランプは、コロンビア製品に25%の関税を課すと言ってコロンビアを方針転換させた。

経済的な利害関係

アメリカ、カナダ、メキシコ間の貿易量は膨大で、さまざまな商品やサービスが含まれている。 最大の分野は、自動車製造、エネルギー、農業、消費財などだ。

2022年、アメリカとカナダの間で取引されたすべての商品とサービスの価値は、約9090億米ドル(1兆4600億豪ドル)に達した。同年のアメリカとメキシコの貿易は8550億米ドル(1兆3700億豪ドル)以上となった。

最も打撃を受ける産業のひとつは、国境を越えた取引に依存する自動車産業だ。 カナダ、メキシコ、アメリカで組み立てられる自動車は、北米全域からの部品供給に大きく依存している。

関税はこのサプライチェーン全体のコストを大幅に引き上げ、自動車価格の上昇を招き、アメリカに拠点を置く自動車メーカーの競争力は大きく損なわれる恐れがある。

農業にも影響は及ぶだろう。アメリカはカナダとメキシコに数十億ドル分のトウモロコシ、大豆、食肉を輸出し、メキシコからはアボカドやトマトなどの生鮮食品を輸入している。

関税は報復関税を招き、3カ国の農家や食品メーカーは経営た立ち行かなくなる可能性がある。

石油への関税賦課を延期し、引き下げるトランプの決定は、ある程度予想できた。アメリカのカナダ産原油の輸入量はここ数十年、着実に増加しており、関税は即座にアメリカの消費者の財布に打撃を与えることになる。

既視感のある展開

世界がトランプ関税への対応を迫られるのはこれが初めてではない。1期目のトランプ政権を振り返れば、今後の展開に関するヒントが得られるかも知れない。

2018年、トランプ政権は鉄鋼とアルミニウムの輸入品への追加関税を発表した。当時も今も、アメリカはカナダとメキシコの両国から大量の鉄鋼を輸入している。

そこで両国は、アメリカからの輸入品に報復関税を課した。結局、3カ国はUSMCAの締結に向けた交渉の中で、鉄鋼とアルミニウム製品への関税を撤廃することで合意した。

その一方で、トランプの通商政策の多くは後任となったジョー・バイデンに引き継がれた。

これは政党の垣根を超えて広がる自由貿易への懐疑論や、アメリカの政策当事者の間にある材料や部品も含めた製造業の国内回帰を目指す流れの一環と言える。

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