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高圧的なトランプ関税の背景には中国を念頭に置いた「貿易の武器化」があり、世界貿易戦争の可能性は侮れない

ニューズウィーク日本版 / 2025年2月3日 17時52分

カナダとメキシコの選択肢は?

カナダとメキシコは今回も、アメリカに報復関税をかける姿勢を見せている。

一方で両国は、トランプの懐柔にも務めている。例えばカナダはフェンタニル輸出に対する「取締強化」に着手した。

一般論を言えば、この手の関税への対策としては、外交から攻撃的な報復措置まで幅広い選択肢が考えられる。カナダとメキシコは、農業やガソリンといった政治的に慎重な扱いが求められる分野(いずれもトランプの支持層を経済的に苦しめる可能性がある)を標的にするかも知れない。

法的な選択肢もある。カナダとメキシコはUSMCAの紛争解決メカニズムもしくは世界貿易機関(WTO)を通して訴えを起こすかも知れない。

いずれも不公正な貿易慣行に異議を唱えるための制度だ。だが時間がかかる上に結果がどうなるか見通せない。たとえ訴えが認められたとしても相手国から無視されることも少なくない。

カナダとメキシコの企業にとってもっと長期的な選択肢としては、輸出先を分散させてアメリカ市場への依存度を下げることが挙げられる。だが地理的条件から言っても、アメリカ市場の大きさから言っても、これは言うは易く行うは難しだ。

世界貿易戦争に拡大する恐れも

トランプがこのほど課した関税から見えてくるのは、対象品目とは無関係な地政学的目標を達成するための「オバートンの窓」が拡大しているという大きな流れだ。

オバートンの窓とは、政治家にとって一般大衆に受け入れられるような政策の選択肢の幅を指す。

中国が地政学的・地理経済学的なライバルとして台頭する中で、重要な産業をアメリカに回帰させ、国内の雇用を守り、外国のサプライチェーンへの依存を弱めることを求める声が、国民の間にも高まっているのだ。

この主張が勢いを増したのは新型コロナウイルス感染症のパンデミックの時期で、実際の政策にも反映されていった。

さらに規模の大きな貿易戦争が起きる恐れは高まっている。トランプが短期的に狙っているのは、他の国々から譲歩を引き出す道具として関税を引き上げることだったとしてもだ。

デンマークの自治領グリーンランドの支配権を手に入れようとするトランプが、デンマークに対して行った脅しがいい例だ。カナダやメキシコと比べはるかに強大な経済力を誇るEUは、デンマークを支持する姿勢を明らかにしている。

カナダとメキシコの政府の対応からは、北米地域における貿易戦争の可能性も見て取れる。そんな事態になれば、経済的損失は巨額なものとなり、貿易相手国同士の信頼が損なわれ、グローバル市場がさらに不安定化することにもなりかねない。



Markus Wagner, Professor of Law and Director of the UOW Transnational Law and Policy Centre, University of Wollongong

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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