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「掘って掘って、掘りまくれ」トランプ2.0のアメリカは石油人脈が仕切る

ニューズウィーク日本版 / 2025年2月6日 14時38分

しかし環境派の活動家に言わせると、LNGの輸出は温室効果ガスの排出を増やし、クリーンエネルギーへの転換を遅らせるだけだ。また輸出を増やせば米国内のエネルギー価格が上昇するとの懸念もある。

ちなみにエネルギー省が昨年12月に発表したところでは、大規模なLNG輸出基地は「それだけで世界141カ国それぞれの年間排出量よりも多くの温室効果ガスを排出する」そうだ。

輸出を増やせば国内向けの供給が減って価格が上がり、電気料金が上がるとも予測している。

対してソマーズは、S&Pグローバルの新しいデータによればLNG業界は過去10年間でGDPに4000億ドル以上の貢献をし、数十万人を雇用していると反論した。

エネルギー長官の指名承認公聴会で発言するクリス・ライト AL DRAGOーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

自動車業界と利害対立?

APIは石油・ガスの掘削や輸送の過程で排出されるメタンガスに対する課金の廃止も求めている。メタンは天然ガスの主成分だが、二酸化炭素以上に強力な温室効果ガスであり、掘削現場や輸送管からの漏洩で大気中に放出されている。

高感度の観測衛星などにより、漏洩メタンが大気中のメタン濃度を押し上げていることも判明している。昨年夏には上空からの観測で、米国内の石油掘削現場からのメタンガス排出量が石油業界の自主規制値の8倍に上ることが分かった。

また7月にオンライン学術誌フロンティアズ・イン・サイエンスに掲載された研究によると、大気中のメタン濃度の増加率は「従来の想定ペースを上回っている」という。

ソマーズによれば、業界もメタン排出の抑制に取り組んでおり、一定の規制が必要なことは理解しているが、それでも排出量への課金には反対だという。

そんなことをすれば「アメリカ経済の原動力となっているこのエネルギー源の生産が、いずれ減少に転じかねない」からだ。

APIは自動車業界への規制にも言及している。具体的には、バイデン政権下の環境保護庁(EPA)が昨年3月に出した厳しい排ガス規制の廃止を求めている。

しかし、これは電動化に莫大な投資をしてきた自動車産業の利害と対立してしまう恐れがある。

実際、業界を代表する自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼッラ会長はEPAの新たな排ガス規制を歓迎し、業界の「未来は電動化にある」と述べている。

厳しい排ガス規制があればこそ国内の自動車メーカーは電気自動車の開発・増産に注力でき、結果として国外市場での競争力も付くという。「自動車メーカーはこうした流れにコミットしている」ともボゼッラは言った。

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