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石破首相は日米首脳会談でガザ難民受け入れ問題をスルーするべき

ニューズウィーク日本版 / 2025年2月6日 22時0分

それはともかく、表面的には市場もアメリカの政財界も、そして国際社会も「様子を見る」というスタンスで推移しています。異例の状況ですが、内容が重すぎるがゆえに、誰もがそのような態度を取らざるを得ないとも言えます。

そんな中で、石破首相が現地7日、つまり問題の会見の2日半後に首都ワシントンでトランプとの首脳会談に臨みます。最悪のタイミングと言ってもいいでしょう。様々な困難が予想されますが、最低限、石破首相が留意しなくてはならないのは、この中東の問題には一切言及しないということです。問題があまりにも大きく、そして流動的である中では、日米の会談には全く馴染みません。

実は、石破首相は「シリア難民の受け入れ事例」を参考にして、ガザ難民を医療と教育の分野で受け入れる検討をしていると発言しています。国会質疑で議事録にも残っていますから、これは消せません。公明党の岡本幹事長の質問への答弁ですから連立与党内で検討が進んでいたようです。

仮に、万が一、トランプにこの計画が「事前に漏れて」おり、今回の「ガザからの住民の全員退去」と結びつけて「受け入れ要請」がされた場合は、日本外交は行き詰まります。絶対に、このことを話題にしてはいけないと思います。

何故かというと、これは日本の国是の問題だからです。日本政府は国是としてイスラエル=パレスチナの2国家体制を支援してきました。承認も早かったですし、承認後はパレスチナを正式な国家として扱い首脳の相互訪問などを続けてきました。ですが、仮に今回のタイミングで「ガザ難民の受け入れ」の話をトランプと交わしてしまうと、2国家体制の否定を日本が追認しているという印象を与えます。

トランプ発言の直後であり、各国首脳からの明確な意思表示が揃う前に日本の首相が、たとえ100人だけでも「受け入れ」の相談を、トランプ本人と行うということは、これは非常に大きな意味を持ちます。最低でも、アラブ世界全体を敵に回すことになります。そうなれば、過去半世紀、日本の歴代政権が必死で守ってきた資源確保政策が完全に破綻します。

事態は全く流動的

では、イスラエルは歓迎してくれるかというと、これも疑わしいと思います。彼らにとっては半世紀前に日本発の凶悪な日本赤軍というテロ集団に攻撃されて多くの犠牲者を出した記憶は消えていません。ですから、今でも日本のパスポートはイスラエルでは「最も滑りの良い」扱いはされていません。そんな中で、日本がパレスチナ難民を受け入れるというのは、冷静に考えれば無害かもしれませんが、万が一ということを考えてしまう危険があります。イスラエルとの関係においても、日本として得することはないと思います。

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