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夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関係が示す、脳の病気の「初期兆候」【最新研究】

ニューズウィーク日本版 / 2025年2月12日 15時40分

レム睡眠の出現がより遅い人は、アルツハイマー病と関係するタンパク質がより多い HALFPOINT/SHUTTERSTOCK

イアン・ランドル(科学担当)
<「レム睡眠」出現の遅れと健康な眠りの重要性について>

夢を見る睡眠段階に入るまでの時間が長すぎるのは、アルツハイマー病の初期兆候の可能性がある──。

アルツハイマー病の患者と軽い認知障害のある患者、認知機能に問題のない人の睡眠パターンを比較した国際チームが1月下旬、そんな研究結果を発表した。

通常の夜間睡眠では、深い眠りと浅い眠りから成る周期を繰り返す。夢をよく見るのは、1つの周期の最後の段階であるレム睡眠中だ。このときに脳は一時的記憶を処理して、長期記憶に変換する。

レム睡眠に入るのに要する時間は一般的に、加齢とともに長くなる。「レム睡眠の出現が遅れると、学習や記憶に関わるプロセスが阻害され、脳の記憶固定化能力に混乱が生じる」

今回の研究報告の上席著者の1人で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神医学・行動科学部のユエ・ラン准教授は、声明でそう指摘する。

「レム睡眠が不十分、または遅れる場合、ストレスホルモンのコルチゾールが増加しかねない。その結果、記憶固定化に重要な脳部位である海馬が損なわれる可能性がある」

ランらの研究に参加したのは、中国・北京にある中日友好医院神経内科の患者128人(平均年齢約70歳)。そのうちアルツハイマー病患者は64人で、同病の一般的な前兆である軽度認知障害の患者は41人。残りの23人は認知機能に問題がなかった。

研究チームは、参加者全員に医院内で一晩過ごしてもらい、睡眠中の脳波活動や呼吸、眼球運動、心拍数を測定。レム睡眠に入るまでの時間に応じてグループ分けした。

入眠から最初のレム睡眠出現までの時間は「早い」グループの場合、総じて98分以内だったが、「遅い」グループは193分以上かかった。

アルツハイマー病患者はレム睡眠の出現が遅くなる可能性がはるかに高く、アルツハイマー病に関連するタンパク質のβアミロイドとタウの量がより多いという。

「睡眠ホルモン」の効果

研究によれば、レム睡眠の出現が遅い参加者は早い参加者よりタウが29%、βアミロイドは16%多かった。その一方で、アルツハイマー病などの場合に発現が低下するタンパク質、脳由来神経栄養因子(BDNF)は39%少ない。

「病気の進行を改善する可能性があるため、睡眠パターンに影響を与える薬剤の効果を将来的に研究すべきだ」と、ランは述べている。

一例が、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンだ。レム睡眠を増やす効果が知られ、マウスを用いた研究では、βアミロイドやタウの凝集抑制との関連が確かめられている。

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