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K-POPの20年を見つめてきた男 古家正亨氏が感じた変化…世界を意識した市場へ

日刊スポーツ / 2024年4月22日 7時30分

著書を手にする古家正亨氏(撮影・中島郁夫)

<情報最前線:エンタメ>

ラジオDJ・韓国大衆文化ジャーナリストの古家正亨氏(49)が、新著「BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち」(KADOKAWA)を2日に出版した。2000年(平12)以降、韓国大衆文化を伝え続けてきた中、軸足を置いてきたラジオを聴いているように言葉を感じられる“読むラジオ”というコンセプトで、03年にドラマ「冬のソナタ」が日本上陸を果たしてからの20年を総括した。【村上幸将】

■読むラジオ

「皆さん! こんにちは。古家正亨です」。1ページ目をめくり「OPENING TALK はじめに」と題した1行目を読んだ瞬間、脳内に古家氏の声が流れてくるようだ。肉声を聴いたことがない人も、恐らくは文字が頭の中に声のようにしみこんでくるような感覚を得られるだろう。

目次は、番組進行表の体裁にした。表紙はラジオのスタジオのイラストで、マイクのオンとオフを切り替える「カフ」も上がり、オンになっている。それが、最終230ページの左下に描かれたイラストのカフは、下りてオフになっている。「せっかくカフを上げて始まるんだったら下ろすまで」と細部までこだわった。

何より、あまたある、タレントのラジオ番組をまとめた“ラジオ本”と一線を画すのは、単なるトークの文字起こしではない、書き原稿として整った文章だ。古家氏は「自分の仕事はラジオDJだし、特に若い子を中心に本を読む人が減っている中で、活字を読んでもらうためには、僕がしゃべりかけるように書いているのであれば、幅広く読んでもらえるんじゃないか」と考えた。その上で「番組を1つ、聴いているような感じの読むラジオ」というコンセプトで執筆した。脳内で作り上げた1つの番組を、書き原稿として違和感のない言葉で執筆したからこそ、活字が脳内にしみこみ、番組として“再生”されるような、不思議な感覚が得られる1冊となった。

■冬のソナタ

古家氏は第1章「TALK ABOUT K-POP」で「冬のソナタ」が上陸した03年を「韓流エンタメが日本に上陸した起源」と定義付けた。「23年が、日本に韓流が上陸して20周年。何がどう変わったのか総括していなかった」。メインテーマは、韓流エンタメが日本に上陸してから20年の総括だ。「一番、分かりやすいのはK-POPの変化だろう」と、韓国国内の音楽賞の主要受賞者と音盤販売量の表、データの03年、23年分を並べて掲載。

03年:R&B、韓国バラード、日本の演歌に当たるトロットを歌うソロ歌手

23年:アルバムトップ10はアイドルグループが占め、上位34位までが100万枚超えとなった一方、ソロ歌手はほぼいない

とK-POPの変容を明確に示した。では、どのような流れで、ここまで変容していったのだろうか?

第1世代(H.O.T.、S.E.S.)

第2世代(東方神起、BIGBANG、KARA、少女時代)

「第1、第2世代は内国向けのコンテンツ。00年代前半は、彼らは日本語オリジナルの楽曲を作り、日本語の歌詞を歌い、J-POP化していた。それがKARA、少女時代が日本に本格的に上陸し始めた10年くらいから外向きに志向が変わった」

第3世代(BTS、TWICE)

第4世代(NiziU、IVE)

「外国人メンバー登用、外国作家の楽曲など、世界に打って出るには、世界中のいいものを活用と、リソースに対する目の向け方が変わった。第2世代の市場が日本だとすると、第3世代はアジアからグローバル。第4世代は完全にグローバル」

■英語歌詞が

そうしたグローバル化が、日本の芸能&音楽界にも影響を与えたことは疑いない。22年のNHK紅白歌合戦には、K-POP勢が5組出場。東方神起、KARA、少女時代の3組が出場した11年以来11年ぶりの複数組の出場となった。さらに23年に、旧ジャニーズ事務所所属タレントが性加害問題で44年ぶりに出場が0になった中、さらに2組増え7組となった。

「BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち」には、目玉企画として韓国を代表するヒットメーカーへのインタビューが掲載されている。その中で、22年の紅白歌合戦に出場した6人組ガールズグループIVEの「I AM」を手がけた作詞家キム・イナ氏との対談からも、K-POPの変化を感じたという。

「『英語詩の使い方が変わった』と。昔は遊びとして使っていたが、歌詞の意味として成立する詩の使い方になった。世界を意識している」

その点を踏まえ、23年の紅白歌合戦に出場した第4世代の女性5人組NewJeansの次世代の、第5世代といわれる今のK-POPを次のように評した。

「グローバルというより、ポップの領域の中で活躍している1アーティストが韓国のグループという感じに移り変わりつつある。今や、K-POPというジャンル自体、正直、存在しないのかもしれない。世界の人に聴いてもらう楽曲作りに大幅に変わりつつある」

■日韓関係性

K-POPの変容に伴い、古家氏は韓流ナビゲーターという自らの立ち位置も、変わってくる可能性があると考えている。

「今はステージに立ったり、番組の司会がメインと言えるんですけど、裏方の方でサポートできることがあるかなと。経験、実績も積んだので、プロデュースも考えたり…より深く、日本と韓国とを結び付けるお手伝いができるんじゃないかと」

その裏には日本と韓国、両国への深い思いがある。

「本の中でも言いたかったことがあって…。僕は韓国のエンターテインメントの専門家で飯を食っていますが、韓国にも日本のカルチャーを受け入れる土壌はある。これだけ特殊な2国間の関係性のある国は世界でもまれだと思います。政治、歴史の問題はあるけれど、乗り越えて引かれ合うものがあるんだと思う。お互い協力して、いいものを寄せ合って作ることが出来る環境があることはエンターテインメントの世界で実証されています。手を取って、お互いのいいところを活用しながら、カルチャーを作って世界に発信していくのがすてきだと思います」

今回の出版で古家氏は夢のスタートラインに立ったのかもしれない。

◆古家正亨(ふるや・まさゆき)1974年(昭49)5月22日、北海道北見市生まれ。上智大大学院文学研究科新聞学専攻前期博士課程修了。専門は韓国大衆文化、日韓文化比較論。00年以降、ラジオ、テレビなどのマスメディアを通じて日本における韓国大衆文化の普及に努め、08年6月から韓国観光名誉広報大使。09年10月には韓国政府から文化体育観光部長官褒章を受章。韓流、K-POPイベントのMCを年200回以上、務めるほか、NHKラジオ第1「古家正亨のPOP★A」(土曜午後9時5分)、ニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」(土曜午後4時50分)NHK Eテレ「ハングルッ!ナビ」(木曜午後11時、月1レギュラー)などに出演。

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