【名人戦】藤井聡太名人が初防衛まであと1勝 「初心」返り、幼少期愛用「棒銀」で豊島九段下す
日刊スポーツ / 2024年5月9日 19時2分
藤井聡太名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)が、名人初防衛まであと1勝とした。
挑戦者の豊島将之九段(34)に連勝して迎えた、将棋の第82期名人戦7番勝負第3局が9日、東京・羽田空港第1ターミナルで行われ、先手の藤井が95手で快勝した。8日からの2日制で始まったタイトル戦初の“空港対局”は、少年時代に好んで指した「棒銀」から豊島陣を攻略して3連勝。第4局は18、19日、大分県別府市「割烹(かっぽう)旅館もみや」で行われる。
◇ ◇ ◇
藤井が「空港対局」で、上昇気流をつかんだ。豊島が角道を止め、振り飛車もにおわせた出だし。雁木(がんぎ)に構えた挑戦者に対し、素早く棒銀で急戦を仕掛け、1筋に銀が躍り出る。「後手に手が広く、先手1五銀としないと主張がなくなってしまう」(藤井)。「普通に棒銀にされて収拾困難になってしまった」(豊島)。ここから敵陣攻略へと離陸した。乱気流に巻き込まれもせず、リードを奪って押し切り、見事に着陸した。
棒銀は、将棋を指し始めたばかりの幼い頃に覚えて多用した。「とにかく攻めて序~中盤を省き、詰め将棋の形のような終盤に早く持ち込み、相手玉を詰ましたかった」。夢中で指した、子供の昔に戻った。
くしくも今期の名人戦開幕前、色紙に「初心」と揮毫(きごう)した。「どんな展開になるか分からないし、初心に返って集中する」。その「所信」を盤上で表現した。
昨年6月1日に20歳10カ月の史上最年少名人を獲得した時には、「温故知新」と色紙に記した。「歴史ある立場になって、昔の将棋も勉強しよう」との狙いがあった。かつて好んで指した手を、タイトル戦仕様にアレンジしてみせた。
初めて名人になった直前の昨年5月28日、叡王戦3連覇を岩手県宮古市で果たし、翌日に三陸鉄道宮古駅で「一日駅長」を務めた。「出発進行」の合図そのままに名人戦第5局の対局場(長野県高山村「藤井荘」)へと移動し、頂点に立っている。
「対局室から離着陸の様子が眺められてリフレッシュもでき、よい環境で対局できました。いい状態で臨めるよう、しっかり準備したいです」。今回は、羽田から初防衛へとはばたく。【赤塚辰浩】
◆棒銀(ぼうぎん) 将棋の戦法の1つ。飛車と銀の協力で2筋突破を図る指し方で、銀がまっすぐ進んでいく様子から名付けられた。将棋の入門編的な戦法のひとつで、加藤一二三・九段が得意としていた。他の棋士は最近あまり指さないが、対振り飛車の有効策とされる戦法。
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