現金給付は「早くても5月末」~商品券との効果の差は 新型コロナ経済対策
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年3月25日 11時45分
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月24日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。新型コロナウイルス拡大にともなう緊急経済対策について解説した。
緊急経済対策の現金給付、早くても5月末
西村経済再生担当大臣は23日、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急経済対策の柱として検討している国民への現金給付について、給付の開始は早くても5月末になるとの考えを示した。
森田耕次解説委員)新型コロナウイルスの感染拡大にともなう政府の緊急経済対策は現在検討中ですが、国民への現金給付について麻生財務大臣は24日閣議後の記者会見では「一律の現金給付でやった場合、貯金に回らない保証はあるのか」と述べ、現金給付は全国民に配るのではなく対象を線引きする必要があるとの認識を示しています。一方で、西村経済再生担当大臣はテレビ番組のなかで国民への現金給付について「実際の給付は早くても5月末になる」と述べています。3月末に当初予算案が国会で成立しまして、その後この経済対策を実施するための大規模な30兆円規模とも言われる補正予算案の国会審議に入ります。それから給付の準備を考えると、現金の給付は5月末くらいになるのではないかとのことです。ここで現金を配るのか、あるいは商品券にするのかはまだ定まっていないようですね。
現金給付は貯蓄に回る~商品券でも大差はない
野村)商品券にすれば印刷の時間がかかるという議論もあるのですが、増山さん、1人3万円という意見もありますが、3万円貰ったら何に使いますか?
増山さやかアナウンサー)とりあえず買うものが決まるまでは寝かせてしまうかもしれません。
野村)そこが麻生さんの言っていたように、現金だと貯蓄に回るということです。リーマンショックの後に1万2000円ずつ国民1人当たりに配ったのですが、75%が貯金に回ったと言われているのです。経済対策というのは消費してもらわなければいけません。GDPが大きくへこむわけで、それを回復させるための政策なわけですが、GDPというのは国民総生産と言われていますが国民総消費と同じ額でもあります。買い物をするのは政府と企業、外国人、向こうで輸入して買ってもらうということですが、それと個人消費です。その個人消費が圧倒的多数を占めているので、GDPのへこみを回復するには個人消費を盛り上げるしかありません。そこで消費をとにかく増やしてもらうための方策を検討しているということになるわけですが、貯金に回ってしまうのはどうなのか。商品券で期限を決めて買い物をしてもらうという意見もあるのですが、本来現金で買うものを商品券で買って、その分を貯金に回してしまう可能性もあるのですよ。もともと何もお金を貰っていなかったから現金で買う予定だったものを商品券で買って、現金は貯金に回してしまうと。そうなると結果はあまり変わらないという意見もあって、そうだとすると時間が早く済む現金の方がいいという意見もあります。
他方、このご時世だと麻生さんが言っておられるような電子マネーみたいなものを配る意見ももちろんあって、その方が早いと言われていますが、これでも同じ原理が働いて消費に回るかはわかりません。ただ、比較するのはどうかと思いますが、アメリカは現金を配ると言って2週間で配ります。スピード感という点で見ると、遅いのではないかと言われる可能性はあります。しかし、その理由の1つには本予算がまだ成立していないということもあります。
補正予算の審議を急ぐべき
森田)いつも不思議に思うのは、もう衆議院を通過しているわけじゃないですか。でも、参議院でまた同じような審議をいつもしています。そして年度末になって。こういうご時世なのだから参議院の審議なんてとっとと終わらせて、予算を上げて補正の審議を始めればいいのにと常々思います。
野村)私もそう思います。それについては、やはり国会が2院制になっていることを重視しようという意見があるのですが、結局参議院と衆議院はコピーみたいなものだとも言われてしまうのです。しかも予算委員会がパフォーマンスの場所になっていて、テレビが入るから頑張ってしまうというのはいいことではないので、こういうときに予算を早く上げてすぐに補正を組めばもっと早くできるとは思います。
森田)こういうときにこそ参議院の良識の府の精神を見せて欲しいです。
野村)その通りです。ただ、西村経済再生担当大臣はかなり悩んでおられて、いまはいろいろな意見があってどれも一長一短なのです。先ほどから議論していることをいろいろな方々がいろいろな形で言うので、それに対して何がいちばん効果的なのかということが非常に悩ましい。いま出てきているのはどうしても経済がへこんでいるいちばんの原因は観光なので、旅行券みたいなものがいいという議論もあります。特定の旅行に限定的に使ってもらうというような形の旅行券構想というのも出てきているのです。GDPがどれくらいへこむのかということも視野にそれと同規模のものですから、リーマンショックのときは15兆円くらいを真水で使っているわけですが、あのときは全体の事業規模が56兆8000億円です。これは民間の資金も含みます。規模観というものを考えればリーマンショック以上だと言われていますので、大きな規模でいって欲しいとは思います。
必要なのは金融マーケットの下支え~金融政策の本当の狙い
野村)1つには減税の問題もあります。減税効果というのは消費税の議論もありますが、所得税でも減税すると私たちはかなりの部分で楽になる面があります。ただ、所得のない人にとって所得税減税は意味がないと言われているので、現金給付付きの税額控除も考える必要があると思います。
森田)いずれにしても早く対策を打って欲しいのです。
野村)もう1つだけ注意点を申し上げると、いまは実体経済が悪いということに注目して経済対策を行っていますが、アメリカなどはバブルだったのではないかと。このバブルだったものがへこんでしまえば戻らないですよね。結局、各会社が持っている株式の価格が戻らないということは、バランスシートが毀損してしまうことになるので、そのことによって不良債権がたくさん出ることになります。そうなると、金融市場自体がパニック状態になる可能性があるのです。だからこそ、中央銀行はいまどんどん金融政策を打っているのです。この金融政策はそこからお金を流して実体経済をよくすると言われていますが、実は狙っているのは金融マーケットの下支えです。この二元的な対策が必要だということは注意しておかなければいけません。
森田)これで金融機関が崩壊したら大変なことになるということですね。そこを封じ込めるという狙いもあるのですね。
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