防災・危機管理アドバイザー山村武彦~防災のための心構え“3つの教訓”
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年9月8日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に防災・危機管理アドバイザーの山村武彦が出演。「防災のための心構え“3つの教訓”」について語った。
黒木)今週のゲストは防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんです。よろしくお願いいたします。
山村)よろしくお願いします。
黒木)山村さんがこれまでの経験から学ばれた、「防災のための心構え“3つの教訓”」について伺います。防災の3つの教訓とは何でしょうか?
山村)1つは、安全は与えられるものではなく、自ら努力してこそ勝ち取れるものだと思っています。50年ほど前ですが、評論家の山本七平さんがイザヤ・ベンダサンというペンネームで書かれた『日本人とユダヤ人』という本があります。そのなかに書かれている言葉があるのですが、「日本人は水と安全はタダだと思っている」と。これは50年前に書かれた言葉ですが、いまだに何となく防災というのは、「自分が行うことではなく行政が、自治体がやることではないか」と、人頼みのような形になってしまっている部分があります。自分に何かあったときには、そうしたものに従えばよいのだと。準備も備蓄も、何かあったら避難所に行けばよいのだから、そんなに準備しなくてもよいのではないかと思っていらっしゃる方もいると思います。しかし、安全というものは誰かがやってくれるのではなく、自分で準備をしない限り自分や家族は守れないということを、ぜひ皆さんに知って欲しいなと思います。また、「防災とは大切なものを最後まで守り抜くこと」と書いていますが、やはり失ったら取り返せないものは、命、時間です。命はもちろん自分や家族、隣人の命も取り返せません。それは当然として、もう1つは時間です。「いまやらなければ、いま逃げなければ」という、そのタイミングを失してしまえば取り返せません。ですので、タイミングを失わないように準備をして、大切なものを最後まで守り抜く対策、準備をして欲しいと思います。
黒木)はい。
山村)もう1つ、防災とは「被害者、加害者、傍観者にならない」ということです。いずれ誰でも人は年をとれば、助けられる側にならざるを得ません。ですので、元気なうちはできれば助ける人になって欲しいと思います。被害者にならないのは当たり前ですが、自分の家から火を出して、他の家まで類焼させてしまえば、結果として加害者になってしまいます。平成30年、「7月豪雨」という西日本豪雨がありましたが、そのとき真備町で亡くなった51人のうち、41人は自力で避難できない「災害時要配慮者」と言われている人たちなのです。高齢化社会において、災害時に公助という公の力が、すべての家に行くことは難しいです。そのときに、隣近所でしか助け合うことができない可能性が高くなっています。元気なうちは助ける人になる。防災関係機関と言われる消防、警察、自衛隊も、すべてのところへ災害直後に助けに行けるわけではありません。特に大雨が降っていたり、家が倒れていたりする状態のなかで、すぐに駆け付けることは難しいです。ですので、助け合うことができるのは自助、共助、公助と言われますが、私は「近所」と、近くで助け合うことが大切だと思いますね。
黒木)その他、山村さんが伝えたい防災の格言について教えてください。
山村)「安心、安全は知識と知恵の継承」ということです。日本は古来から、災害が繰り返し襲って来た国です。そのたびにみんなが助け合って、支援して乗り越えて来た国でもあります。いまは3密防止ということで、なかなか寄り添いにくい状態です。そうは言っても、いろいろな知恵や教訓が災害ごとにつくられて来ているので、そうしたものを思い返して、自分が経験したことや見たり聞いたりしたことを、子供にもぜひ読み聞かせたり、話をしてあげて欲しいと思います。
山村武彦(やまむら・たけひこ)/防災・危機管理アドバイザー
■1943年、東京都出身。防災システム研究所所長。
■1964年、学生時代に遭遇した「新潟地震」でのボランティア活動を契機に、防災システム研究所を設立。
■その後、50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を250ヵ所以上で実施。
■その知見を活かし、報道番組での解説や3000回以上の日本各地での講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組む。また、多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任し、BCP(事業継続計画)マニュアルや防災マニュアルの策定など、災害に強い企業、社会、街づくりに携わる。実践的防災・危機管理の第一人者。
■座右の銘は「真実と教訓は、現場にあり」。
■著書は『感染症×大規模災害 実践的 分散避難と避難所運営』(ぎょうせい)、『災害に強いまちづくりは互近助の力 ~隣人と仲良くする勇気~』(ぎょうせい)など多数。
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