中国経済の先行きが見通せない「これだけの理由」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年3月6日 11時58分
中国の習近平国家主席(ロシア・モスクワ)
ジャーナリストの須田慎一郎が3月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3月5日に開催された中国の全人代について解説した。
中国で国の重点政策を決める全人代が開幕
中国では3月5日、国の重要政策を決める「全国人民代表大会(全人代)」が開幕した。今回の全人代では習近平氏が国家主席として再選される予定で、3期目の政権が確実とされる。その他、新しい首相の人事や経済回復の道筋をどのようにつけるかが焦点となる。
飯田)引退が決まっている現首相の李克強さんが演説を行ったところまで報じられています。
2023年の経済成長目標「5%前後」 ~達成しやすい数字を設定
須田)既に次の体制に関心が移っていると思いますが、次の体制では、内閣は習近平国家主席の側近で固められています。いままでは党主導でも一定のバランスがあったのだけれど、バランスが全部壊れて、完全に共産党の主導で進められることになるのだと思います。いま最も注目されているのは、2023年の経済成長目標です。
飯田)経済成長率。
須田)これが5%前後に設定されたのですが、現実的な数字を出してきたというのが実情だと思います。国際通貨基金(IMF)の予想は5.2%ですから、同じような水準で現実路線を取ってきた。
飯田)そうですね。
須田)ここであまり高い目標を設定してしまうと、未達成になったときにいろいろと問題が出てくるのでしょう。前年(2022年)はとりあえず「目標達成せず」としましたが、「ゼロコロナ政策」によって消費が大きく落ち込みました。
飯田)経済が。
須田)ゼロコロナ政策から「ウィズコロナ」になり、元の水準に戻していく。そこで達成しやすい目標を設定したのだと思います。
経済成長の牽引役になるのは個人消費の拡大
飯田)いままでであれば高めの目標を掲げて、軒並み各省や地方組織が達成したことにする。そのためにいろいろな無理をしたり、数字をいじったりしたのではないかという話が出てきましたが、さすがに「それはまずい」ということになってきたのですか?
須田)これまでも高い目標を設定した結果、不動産バブルを招くなど、さまざまな弊害が出てきました。その辺りも見直していこうという方針なのでしょう。
飯田)見直す。
須田)問題なのは、中国がこれから5%の経済成長をするなら、牽引役になっていくのは個人消費の拡大です。ただ、個人消費の拡大と言っても、他の先進国のように国内総生産(GDP)に対する個人消費の割合がそれほど高くないので、どこかで息切れしてしまうのではないかということです。
生産人口減少で安定した成長に疑問 ~再び不動産開発や不動産投資が牽引していかざるを得ない
須田)ベースのところの経済成長を考えても、生産人口が減少に転じていますから、果たして中長期的に安定した成長のスタートになるのかどうかは、クエスチョンマークが付いています。そうすると、また不動産開発や不動産投資が牽引せざるを得ないのではないでしょうか。
飯田)再び。
須田)それが明らかになっているので、そういったところに対し、銀行が積極的に融資を再開しようという動きになっています。だから、もう1回不動産バブルが起こる。しかし、「一旦潰れたものがうまくいくのか」というところだと思います。
中国が金融不安になると世界経済への影響も大きい ~新たな人事では経済に強い人材が見当たらない
飯田)最近の信用不安などが、金融システム全体に影響を与えるのではないかという話もあります。日本のバブル崩壊以降は、金融機関に対する政策として、そこをクラッシュさせないためにどうするかを考えた。そのための資本注入などもありましたが、中国で金融不安が起きれば、世界経済への影響も相当大きいですよね。
須田)そうですね。金融システムのリスクだけでなく、経済の結びつきが強い部分に関しては、大きな影響が出てくると思います。
飯田)5日に行われた李克強首相の演説のなかでも、不動産に関して「信用不安やバブル崩壊のリスクをかなり強く主張した」という報道もありましたが、バトンを渡された人たちには、あまり経済の専門家がいないという話です。
須田)ですから、単純にバブル崩壊を再びバブルによってカバーしていくという、安易というか痛みを伴わない処理をしてきた結果、日本が「失われた30年」から得た教訓が生かされていないのではないでしょうか。
アメリカが中国に対して半導体の輸出規制を強化 ~自ら開発する技術力があるのか
須田)もう1つ、中国経済の成長を曲がりなりにも支えてきたのは、ある意味でイノベーションや技術革新です。技術革新と言っても先端技術ではなく、先進国から技術を合法・非合法含めて持ってくることにより、何とか経済成長を進めてきた。
飯田)そうですね。
須田)ところが「産業の米」と言われている半導体に関しても、アメリカの規制やプレッシャーがあって、例えばファーウェイは5Gのスマートフォンを扱えない、つくれない状況に陥っているわけです。これが相当大きなダメージになっていることは間違いないので、設計からファウンドリも含めてすべて自前でやるにしても、果たして可能なのか。ベースとなる技術力があるのでしょうか。あるとしても、5~6年というタイムラグはとんでもない遅れを招いてしまいますから。
飯田)半導体の世界では。その辺りも、中国に対してアメリカは「半導体の製造装置も含めて渡すな」という方向になっている。
須田)技術やパテントも含めてですね。
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