日中外相会談 アメリカにとっての「国益」と「懸念」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年4月3日 17時30分
日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が4月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月2日に行われた林外務大臣と秦剛外相の会談について、また、米中関係における台湾の存在について解説した。
中国とは「敵対」関係にあるアメリカ ~日本にもついてきて欲しいが、日中が危機管理の意識を持つことはアメリカの国益でもある
飯田)4月2日、中国を訪問した林外務大臣が秦剛外相と会談しましたが、今回の会談について、アメリカはどう見ているのですか?
秋田)7対3ないしは8対2で「よかった」と思っているでしょう。先日、ワシントンで会議に出た際に話題になっていたのですが、アメリカは中国との関係において、単なる対立から敵対関係という感じに進んでいます。
飯田)対立から一歩進んで敵対に。
秋田)対立はハイテクなど、いろいろな案件で揉めるような状況ですが、敵対というのは、中国側はアメリカが共産党体制を弱めようとしていると思っているし、アメリカ側は中国がアメリカの秩序を壊そうとしていると思っている。
飯田)お互いに。
秋田)だから「ロシアも庇うのだろう」と思っているのでしょう。そういう意味では、中国との緊張関係が続くと考えている。
飯田)緊張関係が続くと。
秋田)アメリカとしては日本にもついてきて欲しいのだけれど、足を踏んづけて日中が戦争になることは望んでいない。日中の間で尖閣や南西諸島に関する紛争が起こらないように、日中が今回のように危機管理意識を持つことは、アメリカにとっての国益でもあると思います。
日中が経済の部分で手を組んでアメリカの対中規制についてきてくれないことを懸念
飯田)一方で、残りの2割~3割の部分はどうですか?
秋田)アメリカは中国に対して、ハイテクや経済のデカップリングをさらに進めると思います。日本が下手に中国と経済の部分で手を組んでしまい、アメリカの半導体もそうですけれど、「対中規制についてきてくれなくなる」ことは少し心配しているのです。今回の会談では、そういう心配にはならなかったと思いますけれども。
飯田)日本が不用意に「中国と仲よくしよう」というような動きをすると、アメリカは「何を言っているのだ」となり、ある意味で虎の尾を踏んでしまう可能性もありますか?
秋田)あり得ると思います。ただ、アメリカが恐れているのはもう片方のシナリオです。米中が冷戦になってしまうのは仕方ないとしても、戦争にはなりたくないわけです。それは防ぎながら、米中の競争で勝ち抜こうと思っている。
飯田)敵対関係になっても。
秋田)しかし、最前線の日本は中国との危機管理がきちんとできておらず、例えば尖閣周辺でも漁船衝突事件がありましたよね。
飯田)2010年の。
秋田)ああいうことをきっかけに、日本が中国と紛争になってしまった場合、アメリカが意図していないところで介入しなくてはならないかも知れない。それはやめて欲しいのですよ。
飯田)日中が紛争になってしまうのは。
秋田)一方、中国と日本がアメリカを差し置いて、特に経済に関してアメリカのデカップリングに日本がついてきてくれないことも嫌なのです。でも今回は、前者の懸念に応えるという意味合いが強いのではないかと思います。
「米中敵対」の時代になり、台湾問題へのテンションが一段と上がる米中 ~蔡英文総統がマッカーシー下院議長と会うことをこれまで以上に牽制する中国
飯田)一方、東アジア情勢を考えると、台湾の存在抜きには考えられません。台湾の蔡英文総統は中米を歴訪中であり、今後はロサンゼルス経由で台湾に帰る予定ですが、そこでマッカーシー下院議長と会うのではないかと言われています。台湾との間合いはどうでしょうか?
秋田)台湾問題のテンションの高さは、「米中対立」の時代と「米中敵対」の時代では格段に違うと思います。対立の時代であれば、中国は「台湾までは許容するけれど、これ以上はダメだよ」というような尺度で、例えば下院議長が台湾に行くのは許さない。去年(2022年)、ナンシー・ペロシさんが訪台したときは強く反発しました。しかし、「アメリカで会うならいいや」という尺度で見ていた気がするのです。
飯田)これまでなら、アメリカ国内で会うのであればいいと。
秋田)ただ、敵対するとなると、人間関係で言えば相手の性格や性質が信用できないという仲ですから、やることなすことすべてに悪意や疑念を感じてしまうわけです。
飯田)やることなすことすべてに。
秋田)そうなると、中国はペロシさんが台湾に行ったのと同じくらい、マッカーシー下院議長がロサンゼルスで蔡英文総統と会うことに反発すると思います。
「どちらがより台湾を強く支援するか」で競い合う米民主党と共和党
秋田)もちろん軍事演習を行うかどうかはわかりませんが、同じくらい深刻に受け止めるでしょう。逆にアメリカがなぜ台湾を支援するかと言うと、対立の時代には台湾海峡の軍事バランスを管理しなければならないと思って支援していたのですが、いまは「中国がアメリカ側の秩序である民主主義を壊そうとしている」と。特にロシアを擁護していることからそうなっているのでしょう。最前線として「台湾の民主主義を守らなければ」というテンションになっているのだと思います。
飯田)なるほど。
秋田)台湾問題の熱量がかなり上がっている印象です。
飯田)アメリカ議会などを見ていると、超党派という感じになっていますけれど、実際もそうですか?
秋田)いろいろと台湾の話を聞いていても、これに関しては超党派というより、「どちらがより台湾を強く支援するか」で競い合っているようなのです。多少、心配にもなってしまうくらいエスカレートしている感じがします。
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