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【専門家解説】イランがイスラエルにミサイル攻撃 戦火拡大…その背景は? それぞれの主張は?

日テレNEWS NNN / 2024年10月2日 20時34分

日テレNEWS NNN

イスラエルは、レバノンへの空爆でイスラム教シーア派組織ヒズボラのナスララ師を殺害、緊迫した情勢が続く中、日本時間の2日未明、ヒズボラの後ろ盾となっているイランが、イスラエルに向け200発近いミサイル攻撃を行いました。なぜこのタイミングでイランが攻撃を行ったのか。中東情勢が専門の慶応大学・田中浩一郎教授が解説します。

   ◇

イランによるイスラエルへのミサイル攻撃について、それぞれの主張が異なっているので整理します。

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まずイスラエル側は、180発以上のミサイルの多くが防空システムによって迎撃されたと主張しています。また、イスラエルを全面的に支持するアメリカは「イランの攻撃は失敗、効果はなかった」と言っています。

一方、イラン側の主張は異なっています。今回の攻撃はイスラエル軍の関連施設を標的にしたもので、ミサイルの9割が命中したと主張しています。

ただ、ロイター通信などはイスラエル南部では小学校にミサイルが直撃したと伝えていますが、イスラエル側は被害の全容を明らかにしていないということです。

また、国連のグテーレス事務総長は、中東での紛争拡大を非難した上で「絶対に停戦が必要だ」と訴えました。

日テレNEWS NNN

ここからは、中東情勢が専門の慶応大学・田中浩一郎教授が解説します。

森圭介キャスター

「なぜ今、イランがイスラエルに向かってミサイルで攻撃したのでしょうか。その理由や背景は?」

中東情勢が専門 慶応大学教授 田中浩一郎

「ひとつは、7月にハマス指導者のハニヤという人物をテヘランで暗殺され、イスラエルがやったといわれています。そして、つい先般、ヒズボラの指導者のナスララ師を含めて、かなりの数の幹部を殺害したということ。イランにとってみれば、手駒をどんどん失っていく状態に対する報復もあります。イランの軍人も命を落としているので、その報復もあります」

「ただ、それ以上に意味が深いのは、イスラエルが勝手なことをするほどに、イランがイスラエルに対してけん制を仕掛けることができなくなっているのではないかという状況があったので、抑止効果を生むためにも、イランは本気になったらイスラエルに対してちゃんと報復を行う、攻撃を行う能力だけでなく、その意志もあるのだと。そして実際に防空システムが優れていても、それをかいくぐるだけの能力を持っていることを示す、ある種の予行演習みたいなものだったともいえます」

森キャスター

「これまでイスラエルが好き勝手にやっていたのを、けん制する狙いがあるのではないか、ということですね」

日テレNEWS NNN

森キャスター

「今回のミサイル攻撃をめぐって、イラン側とイスラエル側で主張がかなり食い違っていることについて、どうとらえていますか?」

田中教授

「これは、それぞれの立場があります。攻撃した側は目的を達成したと言うし、防御する側にとってみれば効果がなかった、撃ち落としたということです。ただ、前回4月の打ち合いと比べると、着弾している映像がたくさん出ているので、きちんと落ちた、きちんと届いていることは間違いありません」

「ただ一方でイランは イスラエル南部の砂漠が多い地帯にミサイルを飛ばしていますが、そもそもそこに落ちても、たいした被害は生じない可能性が高いんです」

森キャスター

「それはイランがあえて、そういった地域を狙っているのでしょうか?」

田中教授

「それはありえます。なぜかというと、ここで人的被害を発生させてしまうとアメリカも黙っていないし、イスラエルからイランに対しての次の一手、すなわち報復がより激烈なものになり、最終的にはエスカレートしてしまう。これをイランは避けたいので、できるだけ被害が実際に及ばないようなところを狙って撃っている可能性がかなり高いですね」

日テレNEWS NNN

森キャスター

「では、イスラエルとヒズボラの関係は、どういったものなのでしょうか?」

田中教授

「お互いに不倶戴天(ふぐたいてん)の敵、といえば話が早いですね。1980年代にイスラエルがレバノンに対して軍事侵攻を仕掛け、南部などを長い間、占領していました。そのとき武装抵抗勢力として生まれ、強大化したのが実はヒズボラです。その点では、ガザ地区などに勢力を持っていたパレスチナ組織のハマスの生い立ちと、少し重なるところがあります。ある意味、イスラエルが行った軍事作戦などが、こういった組織を生み出すことになったと」

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桐谷美玲キャスター

「中東情勢が緊迫化していますが、今後どういう展開が予想されるでしょうか」

田中教授

「ネタニヤフ首相が公言しているように、イスラエルは確実にイランに報復します。ただ、どの程度の規模になるのか、なにを狙うのか。その際にイラン側にどれだけの被害が及ぶのか。イラン側が、今回のイスラエルがとっているような表現のように『何もたいしたことはない』と、笑って済ませられる程度の被害であれば、ここでいったん、お互いの交戦は止まると思います。ただ、いったんです。永続的に止まるわけではない」

「しかし、ここで大規模な攻撃をイランに仕掛ければ、当然またイランが反撃をするので、そうなると歯止めがきかない。国家対国家の戦争という形になってきます。その可能性は捨てきれません」

森キャスター

「中東から距離の離れた日本への影響は、どのようなものがあるでしょうか?」

田中教授

「イスラエルやレバノンといった地域は、日本の経済活動に直接影響するようなところではありません。しかしイランは、ペルシャ湾の北側に位置している大国です。さらに日本の原油の9割以上が渡ってくるといわれるホルムズ海峡に面した国でもあるので、このあたりが不安定になったり、いわゆる火の海になると、日本のエネルギーの安定供給やエネルギー安全保障上、ゆゆしき事態に直面することがありえます」

森キャスター

「世界的にも原油の価格が上がっていますが、そういった影響が日本に及ぶかもしれないのでしょうか?」

田中教授

「価格はこのところ乱高下していて、それほど極端に動くことはないと思います。しかし中長期的に原油供給や、世界に対しての天然ガス供給などが影響を受けると、日本だけでなく多くの国が困ることになると思います」

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