始まりは1人のホストから…女性を性風俗店へと紹介する大規模スカウトグループ摘発“まるで人身売買”その実態とは
日テレNEWS NNN / 2025年1月14日 18時2分
女性を性風俗店へと紹介する違法な大規模スカウトグループが摘発され、警視庁生活安全部は16年ぶりに特別捜査本部を設置。“人身売買”に近い実態が明らかになりつつある。
■大規模スカウトグループ「アクセス」摘発…実態は…
2025年1月7日。警視庁は、女性(24)を埼玉・川口市のソープランドに紹介したとして、大規模スカウトグループ「アクセス」リーダーの男(33)を職業安定法違反の疑いで逮捕した。
リーダーの男の逮捕はこれで3回目だ。
男がリーダーをつとめる「アクセス」。組織の構成員であるスカウトを通して数々の女性を性風俗へと紹介し、その見返りとして店からスカウトバック(紹介料)を受け取っている違法なスカウトグループだ。
紹介される女性は、主に悪質なホストクラブで高額な売掛金をつくらされた女性客だったとみられている。
■まるで人身売買“入札式”“ランク付け”で全国の性風俗店へ…
「アクセス」は島根県をのぞく全国46都道府県、約350店舗の性風俗店と提携し、女性を全国へと派遣していたとみられている。
女性を全国にわたるどの性風俗店に紹介するかは「入札式」で決めていたという。
「入札式」とは女性たちの年齢や身長、写真などが記載されたプロフィルを店舗にばらまき、金額を一番高く提示した店に紹介するというものだ。
さらに、女性たちはそれぞれ、最低の「1」ランクから最高の「8」ランクまでにランク付けされていた。
ランクは顔や年齢、体に傷やタトゥーがあるか、さらには「スペック値」と呼ばれる身長から体重をひいた数字などを判断基準として「アクセス」が付けたもので、ランクが高ければ高いほど高級店で働けるシステムになっていたという。
女性をモノのように扱うこの非人道的なシステムについて、捜査幹部は「人身売買とも言える」などと話す。
■全国に根をのばす「アクセス」…手法は“トクリュウ”
「アクセス」の構成員は約300人規模。中には大学生なども含まれているが、構成員は主にSNSで集められ、それぞれが偽名を使い面識もないという。
SNSを使い全国から多くのスカウトが集まることで、大規模なスカウトグループへと成り上がっていったとみられている。
警視庁は、SNSで広がり偽名を使う構図は闇バイトと類似しているとして、匿名・流動型犯罪グループいわゆる「トクリュウ」と認定し捜査を進めている。
■「アクセス」構成員の昇格は“ネズミ講”
「アクセス」は構成員たちにもランクが付けられている。研修生→新人→準社員→社員とランクを上げると、その上には「ブロンズ」「ゴールド」「スーパーブラック」とスカウトの中での幹部へと昇進する。さらにチーフ、マネジャーとスカウトを管理する立場へとランクが上がれば上がるほど、女性を店に紹介した時にもらえるスカウトバック(紹介料)が高くなる仕組みだ。
さらに、ネズミ講と同じ仕組みもあった。例えば、スカウトA氏が新たにB氏をスカウトに勧誘した場合、スカウトになったB氏が女性を店に紹介すると、A氏にもスカウトバックが入るという。
■性的搾取による売り上げは“70億円”
紹介した性風俗店から「アクセス」本体に送られてくるスカウトバックは、女性が稼いだ額の15%。それをリーダーの男が構成員に分配していたという。
今回、再逮捕された「アクセス」リーダーの男がその座についたのは2019年7月頃とみられているが、その頃から2024年10月までの約5年間で売り上げは約70億円にも上るという。
この70億円はすべて女性たちへの性的搾取によって生まれた金だ。
すでに検挙されたスカウトの1人は、調べに対し「時間や場所を問わず、携帯1台あればでき、毎月安定して大金を受け取れるから続けていた」と話していて、仲間や女性と顔を合わせず、名前も偽名なことから犯罪意識が極めて低かったことがうかがえる。
■1人のホストの逮捕から明るみに…これまでの変遷
そんな「アクセス」の実態が明るみとなったきっかけは、1人のホストの逮捕だった。
新宿区歌舞伎町にあるホストクラブに勤めていた当時25歳のホストの男が、女性客に「ムショ行きになるよ」などと言った上で消費者金融を申し込ませ、売掛金の93万円を取り立てたとして検挙された。
その後このホストの捜査が進むと、ホストがスカウトと手を組み、売掛金を回収するために売春をさせようと女性を性風俗店へと紹介していたことが発覚、関係したスカウトや別のホストなどが次々に検挙されていった。
中には当時店のナンバーワンホストだった男も含まれ、スカウトと手を組んだきっかけとして「上を目指すホストは風俗で働かせ稼いだ金を使わせて売り上げをあげている」などとスカウトにそそのかされ、女性客を性風俗店へと紹介し始めたとみられている。
捜査が進むにつれ、こうしたスカウト行為が個人で行っているものではなく組織的なものであることが判明していったとみられる。
■16年ぶり“異例”の特別捜査本部設置
警視庁は、この「アクセス」の全容解明が必要だとして、2025年1月8日に特別捜査本部を設置。
警視庁生活安全部で特別捜査本部が立ったのは16年ぶり。さらに、今回の「アクセス」事件を捜査する保安課に限定すれば、実に30年ぶりの設置となる。
過去に特別捜査本部が設置されたのは、生活経済課が2009年の「健康食品販売会社L&Gによる巨額詐欺事件」、保安課が1995年の「オウム真理教自動小銃密輸事件」以来となり、異例の特捜本部設置といえる。
警視庁は、今回の特捜本部立ち上げについて「全国規模で継続的な違法活動が裏付けられたことや、リーダーや一部のスカウトをすでに逮捕しているものの組織性が不透明なため」としている。
具体的には、人身売買ともいえる手段で性風俗店へあっせんしていることや性的搾取で莫大な犯罪収益をあげていること、それによる組織の拡大化やSNSでつながる構成員の肥大化などを理由にあげている。
また、リーダーの下にまだ検挙されていない幹部がいることから、警視庁は組織の全容解明を進めるとともに、リーダーの代わりとなり得る幹部陣を摘発するなどして、組織そのものの解体を目指しているという。
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