[社説]国の「指示権」強化 地方分権 後退させるな
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月2日 5時0分
自治体に対する国の権限を強化する地方自治法改正案が今月にも国会で審議入りする。
改正案は、大規模な災害や感染症のまん延などによって「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が起きたことを想定したものだ。
新型コロナ禍で国や自治体の業務が混乱した苦い経験を踏まえ、自治体に対する国の「指示権」を地方自治法の中に新たに盛り込んだ。
指示権とは、国が必要な事務処理などを指示できる権限のこと。
国は今でも感染症法などの個別法に基づいて指示権を発動することができるが、個別法に規定がなくても、必要な対応を自治体に指示し、国の意向に従わせることができるようにする。それが法改正の大きな特徴だ。
2000年の地方分権一括法によって国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に改められた。
国による指示権の拡充によって分権改革の成果が骨抜きにされ、再び「上下・主従」の関係に逆戻りする懸念が拭えない。
「台湾有事」を巡る政府の対応に沖縄の自治体を従わせる際の法的な根拠にもなりかねない。それが決して杞憂(きゆう)だと言えないのは、指示権の適用対象が具体的に明示されていないからだ。
「台湾有事」を想定した社会の軍事化が急速に進む沖縄で、民意が軽視され、地方自治が骨抜きにされる事態が相次いでいる。改正案への懸念は尽きない。
■ ■
国が自治体に委ねた「法定受託事務」だけでなく、自治体が責任を持つ「自治事務」にも幅広く指示権行使の網をかぶせた。
全国知事会は今年1月、「国と自治体の対等関係が損なわれる恐れもある」として安易に指示権を発動できない仕組みを総務省に求めた。
非常時の対応は個別の法律で定めるべきである。
必要なことは「対等・協力」の関係を深化させ、さまざまな事態に適切に対応することであって、国による指示権を強化して「上下・主従」の関係を復活させることではない。
明治憲法に地方自治に関する章はなく、「官治・集権型」の政治行政が日本全体を覆い尽くした。
戦後、新憲法に地方自治制度が明記されたことで「自治・分権型」の政治行政が定着した。地方分権改革はその目に見える成果であり、後戻りさせてはならない。
■ ■
気候変動や大規模災害に象徴されるように、一昔前には考えられなかったような事態が世界的に多発していることは確かだ。
だからといって、なぜ、災害対策基本法や感染症法などの個別法を充実させるのではなく、一般法である地方自治法に手を付けるのか。
辺野古の新基地建設に伴う代執行は、過去に前例がない。代執行が可能になったのは地方自治法改正によって国の関与を定めたためだ。
代執行と指示権強化は、国と地方の対等な関係を根本から突き崩す。
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