[社説]対中包囲網と日本 緊張緩和の役割果たせ
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月16日 5時0分
中国に対抗するための多国間連携の枠組みがさまざまな形で形成されつつある。
いずれのケースも米国が主導し、日本が中核的な役割を担うことを期待されている。
米ホワイトハウスで開かれた初の日米比首脳会談は、東・南シナ海での中国による威圧的行動を名指しで非難し、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練を拡充することで一致した。
共同声明では、フィリピン船の航行や補給への妨害、埋め立て地の軍事化などを列挙し、深刻な懸念を示した。
日米韓という従来の枠組みに加え、日米豪印のQUAD(クアッド)、米英豪のAUKUS(オーカス)が相次いで形成され、今回、新たに日米比の枠組みが始動したことになる。
南シナ海を「核心的利益」と位置付ける中国は、これに猛反発し、日本大使館の首席公使を呼び、抗議した。
自衛隊がこの地域に乗り出せば、中国は対抗措置として、尖閣周辺での活動を活発化させる恐れがある。
日米英の3カ国は来年からインド太平洋地域で合同演習を定期的に実施する。中国をけん制する措置だ。
英海軍は空母などの艦船を派遣し、日本に寄港させる予定だという。
こうした動きの背景には、米国の力が弱まり、もはや米国だけでは台頭する中国を抑え切れないという現実がある。
そこで考え出されたのが、同盟国や友好国と多国間連携の枠組みを築き上げ中国を多重包囲するというやり方だ。
■ ■
日米一体となった対中包囲網形成は、日本にとって「米国をアジアに引き留めるための保険」という側面もある。
政府は「抑止力の強化につながる」と評価する。
だが新たな対中抑止戦略は緊張を激化させるという大きなリスクも抱えている。
中国との競争を「民主主義と覇権主義の対立」と位置付ける米国にとって、競争の本質は覇権争いである。
米国と一体化することで日本は、独自の役割を果たすことができず、米国に引きずられる恐れがある。
東南アジアの国々は、日米に付くか中国に付くか、外部から勝手に色分けされるのを嫌がるという。
植民地支配や米ソ冷戦下の苦難に満ちた経験があるからだ。
日本に求められているのは、そうした国々への働きかけを通した緊張緩和に向けた独自の取り組みである。
■ ■
多国間の枠組みによる対中包囲網の拡充・強化は、沖縄の負担増に直結する。
戦争を起こさせないためには、戦争がもたらす一般住民の犠牲を知ることが重要だ。
県はこれまで平和構築のための活動で大きな功績を残した団体に沖縄平和賞を授与してきた。戦後80年に当たる来年、県内各地で受賞団体による連続講演会を開くことを提案したい。
草の根の「平和の文化」を押し広げること。その土台の上に日中が関係改善を図ること。そのための対話の窓を常に開けておくべきだ。
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