[社説]沖国大ヘリ墜落20年 早期返還へ道筋を示せ
沖縄タイムス+プラス / 2024年8月13日 4時0分
宜野湾市の緑ヶ丘保育園や普天間第二小学校の保護者らが組織する団体「#コドソラ」の与那城千恵美代表は先日、特別な思いでシンポジウムに登壇した。
「子どもたちに『声を上げても何も変わらない』と思ってほしくない。安全な空の実現まで諦めない」
沖縄国際大学に米軍の大型ヘリが墜落した事故からきょうで20年となる。
2004年8月13日、与那城さんは市内の自宅にいた。墜落を知り、大学にいる弟の安否を確かめようと電話をかけ続けた。あの時感じた恐怖はいまだに忘れられない。
ヘリが接触した大学の本館壁面は焼け焦げた。機体はばらばらになり破片は大学内だけでなく、数十メートル先の民家にも飛び散った。
事故は誰が犠牲になってもおかしくなかった。米軍普天間飛行場の危険性を歴然と示したのである。
事故後、日米両政府は飛行ルートの変更を合意した。周辺の学校や住宅地上空を避けることなどが定められたが、守られていない。
そして13年後、今度はわが子の通う保育園に米軍ヘリの部品が落下した。
沖国大へのヘリ墜落では民間地にもかかわらず、日本の捜査権が及ばないという問題もあらわになった。
批判を受け日米両政府は基地外での共同捜査を認めるガイドラインに合意したものの、その後も主導権は米軍にある。
事故を通して見えたのは、基地の存在が地域の安全や主権を脅かしているという現実だ。
■ ■
だが政府が、本気で危険性除去に取り組んできたとは思えない。
13年には当時の仲井真弘多知事が普天間の「5年以内の運用停止」を要請。安倍晋三首相は「できることはすべて行う」と約束したものの、米側との交渉さえ見えぬまま、約束は雲散霧消した。
普天間の移設先として強行する名護市辺野古の新基地建設も、運用開始には少なくともあと10年以上かかるという。
「その間の危険性除去をどうするのか」という問いに対し、政府の回答はない。
墜落事故の後にも新たにMV22オスプレイ24機が配備されるなど、普天間の機能は強化されてきた。
昨年度に普天間周辺で測定された航空機騒音は前年度比3千回以上増えている。騒音のほとんどはオスプレイだ。
■ ■
普天間を巡っては、海兵隊のグアムへの移転が今年12月に始まる。沖縄の負担軽減策として日米両政府が06年に合意した計画がようやく実行段階に移る。
だが移転完了は28年ごろとされ完了後も約1万人が残る。危険性が除去されるかどうかは依然分からないのである。
日米両政府が普天間飛行場の返還に合意したのは1996年のことだ。このまま危険性を放置するつもりなら、これほど県民を愚弄(ぐろう)するものはない。
「一日も早い危険性除去」は政府の責任である。今こそその道筋を示すべきだ。
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