[社説]辺野古訴訟 県敗訴 自治の理念大きく後退
沖縄タイムス+プラス / 2024年9月3日 4時0分
名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟でまたも県の訴えが退けられた。
新基地建設の設計変更について、県の不承認処分を国土交通相が取り消した裁決は違法だとして県が裁決取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決で福岡高裁那覇支部は、県の控訴を棄却した。
県は2021年11月、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の変更申請について調査不十分を理由に不承認とした。これに対し22年4月、国交相が不承認を裁決で取り消したため、県がその取り消しを求めた裁判だ。
那覇地裁は昨年11月、承認撤回についての別の抗告訴訟で、県は裁決の適法性を争えないとした最高裁判決をもとに「県が訴えを起こす資格はない」などと退けていた。
二審で県側は憲法や地方自治法などに基づき、あらためて原告適格を主張。公有水面埋め立ての認可事務は「強く自治が保障されるべきだ」としたものの、裁判所は今回も「県に訴訟提起の適格はない」と入り口論に終始したのである。
県の不承認や国交相の裁決が違法か適法かなどの判断を示さず、門前払いとした。
その上で法定受託事務については「裁判を起こすことが認められないとしても、憲法が定める地方自治の本旨に反するとまではいえない」と指摘した。
かつての地方分権改革で法廷受託事務制度が導入された際にそのような議論はなかった。改革の成果を骨抜きにするような判断だ。
■ ■
新基地建設を巡る県と国との間の訴訟は、今回を含め計14件にわたる。これまで4件で和解や取り下げとなり、9件で県の敗訴が確定した。
しかし、いずれの訴訟についても裁判所は新基地建設の合理性や適法性そのものを判断していない。
マヨネーズ並みと言われる軟弱地盤の埋め立ては可能なのか。完成するまでの間の普天間飛行場の危険性除去はどうするのか。
建設が県民の利益にかなっているのかという県の疑問に、この間、国も司法も何一つ答えることができていない。
一連の敗訴を受け、県は地方自治体の処分に国が異を唱える「裁定的関与」の見直しの必要性を全国知事会に提案。県の主張に基づき全国知事会は昨年、国に見直しを求める提言を出した。
その趣旨を鑑みれば、司法も国と地方の調整の役割を果たすべきだ。
■ ■
新基地建設で国の強硬姿勢は強まるばかりだ。代執行により先月、大浦湾側の本格工事を強行した。
県がこれまで何度も求めてきた水質汚濁による生態系への影響などについての事前協議の打ち切りを通告してもいる。
国と県が15年から続けている一連の訴訟は今回が最後だ。
判決を受け県は上告を検討している。過去の判決を整理し、県の主張の正当性を分かりやすく県民に示した上で臨んでほしい。
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