[社説]米兵また性的暴行事件 続く被害に怒りと不信
沖縄タイムス+プラス / 2024年9月6日 4時0分
またか、との強い怒りが湧く。女性の人権を踏みにじる卑劣な犯行をこれ以上繰り返させてはならない。
成人女性に性的暴行を加え負傷させたとして県警は5日、20代の米海兵隊の男を不同意性交等致傷の疑いで書類送検した。
事件は6月下旬に本島北部で起きた。直後に女性が受診した医療機関を通じて通報があり発覚。県警は交流サイト(SNS)でのやりとりや、現場周辺の防犯カメラ映像から立件に至った。
男の身柄は米側の管理下にあり、県警はこの間、任意で事情聴取してきた。男は容疑を否認しているという。
県警は今回も身柄の引き渡しを求めなかった。傷害を伴うにもかかわらず、容疑者を拘束しないのは腑(ふ)に落ちない。身柄の引き渡しは日本の主権にも関わる問題で、要求すべきだ。
事件の公表が発生2カ月後ということにも疑問符が付く。
今年6月下旬には2件の性犯罪が報道で明らかになったが、報道されるまで県に知らされていなかったことで批判を浴びた。
今回の事件はこの2件が報道される前に発生したのである。
昨年12月の米兵による少女の誘拐暴行事件を巡っては、発生後速やかに情報共有されれば学校や児童生徒に注意喚起できたとの反省から、県は政府に対し情報共有を求めた経緯がある。
そうした最中にもかかわらず、事件発生が県へ知らされなかった。政府への不信は深まる一方だ。
■ ■
批判を受け政府は7月に情報共有体制を見直したが、事件防止の実効性が伴った対応とは言い難い。
一つには事件のあった日時や場所、米兵の所属も明かされず、伝達される情報は限定的である。
これでは県から市町村に注意喚起しようにもおぼつかない。被害者のプライバシーを守った上で、できる限りの情報が共有されなければかえって県民の不安は増す。
「事件処理が終了した後」という伝達のタイミングも疑問だ。
捜査に時間を要することは理解できるが、事件の未然防止につなげるということであれば、覚知後速やかな情報共有が求められる。
基地周辺では米兵による事件事故が多発し、住民生活の負担となっている。自治体レベルでもいち早い伝達が必要だ。
■ ■
相次ぐ性犯罪の発生を受け在日米軍司令部は7月、日本政府と連携して県や地域住民による新たな枠組みとなる「フォーラム」創設を表明した。
しかし、いまだに発足していない。
米兵による事件事故防止については既存のワーキングチームがあるが、県の要望にもかかわらず、2017年を最後に開催されていない。
新たな枠組みも米軍任せになればまたも立ち消えになる恐れがある。政府は県や自治体と連携して、真に実効性のあるフォーラムの創設を実現すべきだ。
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