[社説]自民総裁選告示 まず「裏金」を総括せよ
沖縄タイムス+プラス / 2024年9月13日 4時0分
自民党総裁選が告示された。
立候補したのは高市早苗経済安全保障担当相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長の9氏。
裏金事件で退陣に追い込まれた岸田文雄首相の後継首相を事実上決める選挙である。「政治とカネ」の問題にけじめをつけることができるのか。問われているのは、自民党の自浄能力だ。
先の国会で成立した改正政治資金規正法は「抜け穴だらけ」の不十分なものだった。ブラックボックスとして批判されてきた政策活動費は温存。領収書の公開は10年後とされ、政策決定への影響が指摘された企業・団体献金の禁止は盛り込まれなかった。
党本部の演説会で多くの候補が、裏金事件を念頭に信頼回復を訴えたが、具体策の言及は少なかった。
その中で茂木氏は、一転して政策活動費の廃止を打ち出している。政権を支える幹事長という要職の立場であれば、なぜ、国会論議で、廃止を党内で主導しなかったのか。小泉氏や高市氏も廃止を提唱している。
石破氏は、当初裏金に関与した議員について「公認するにふさわしいかどうか、徹底的に議論すべきだ」と指摘していた。党内で批判の声が上がると「新体制で決めることだ」と、トーンダウンした。
国民が最も聞きたいのは裏金事件の真相と反省だ。本気度を見透かされれば政治の信頼回復は望めない。
■ ■
物価高対策や地方の活性化、少子化対策、選択的夫婦別姓導入、安全保障など候補者がアピールする政策は多岐にわたる。
演説会で防衛力強化を強調する候補者は多かったが、防衛力強化により負担が集中する沖縄の問題に触れた候補者はいなかった。
小泉氏は立候補の会見で、日米地位協定について問われ、両国の協議の枠組みがあるとし「一足飛びに改定は考えていない」と発言している。
県内で相次ぐ米兵による暴行事件についてどう考えているのか。岸田政権が決めた、いわゆる敵基地攻撃能力保有や防衛費の大幅増は妥当なのか。南西諸島の「ミサイル要塞(ようさい)化」、辺野古の新基地建設を巡る全国にも例がない「代執行」。
17日には那覇市内で演説会が開かれる。候補者は、県民が実感できる基地負担軽減策を語るべきだ。
■ ■
政策を前に進めるには、裏金事件で増幅した政治不信と向き合い、国民の理解と協力を得なければならない。
総裁選で人気の高い「新しい顔」を誕生させ、その勢いで次期衆院選に臨むという政局的発想が優先され政治改革を怠れば、有権者からは見限られるだろう。
早期の解散総選挙が取り沙汰されている。政治改革は、政権選択である衆院選で重要な判断材料となる。
臨時国会では、新代表が選出される立憲民主党など野党との党首討論の日程を十分に確保すべきだ。
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