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「男らしさ女らしさ」って? “男の娘”マンガの作者と声優が葛藤した「100%の表現」

ORICON NEWS / 2024年5月10日 9時10分

(写真左より)アニメ『先輩はおとこのこ』でまことを演じる声優・梅田修一朗と原作者のぽむ先生(撮影・片山よしお) (C)oricon ME inc.

 2022年の「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位のwebtoon作品『先輩はおとこのこ』(作:ぽむ/「LINEマンガ」オリジナル)が、7月4日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにてアニメ放送される。主人公はロングヘアのウィッグをかぶり、女子生徒用のセーラー服を着て学校生活を送る男子高校生・まこと。彼を取り巻く友人たちとの友情と純愛、周囲の人々との葛藤を瑞々しく繊細に描き、多くの共感を得ている作品だ。「男らしさ、女らしさ」よりも「自分らしさ」が尊重される社会。そんな理想が掲げられながらも、さまざまな偏見の目線もある現代にこの作品が届けたものとは? 原作者のぽむ先生、まことを演じる声優・梅田修一朗さんに語り合ってもらった。



【漫画】アニメ化で話題!セーラー服の“男の娘”が可愛すぎな『先輩はおとこのこ』

■実感なかったアニメ化、梅田さんの声を聞いて「あ、まことだ」と思った

──多くの熱望を受けていよいよアニメ放送を控えた今のお気持ちを伺えますか?

【ぽむ先生】(アニメ化の)お話をいただいた時は現実感がなかったんですが、キャストさんが決まったり、PVが完成したりするうちに少しずつ「本当なんだな」という気持ちになってきました。何より音の力ってすごいなと思いましたね。マンガを描いてるときは、まったく音を意識していなかったので。

──描きながら登場人物の声をイメージしたりは?

【ぽむ先生】特になかったんです。梅田さんの(キャストオーディションの)サンプルの声を聞かせていただいて、初めて「あ、まことだ」ってわかりました。だからよけい音の力、声優さんってすごいなって思ったんです。

【梅田修一朗】よかった……。『先輩はおとこのこ』という作品と出会ったのは、連載開始前だったんですかね。たまたまXに流れてきた4コマのイラストを目にして「綺麗な絵だな」と思ったのが最初でした。それからマンガも読んで大好きになって、声優としてはもちろんですが、僕個人としてまこと先輩という人物に寄り添いたいという思いにもなっていたので、生みの親であるぽむ先生にそう言っていただけたことが何よりうれしいです。

【ぽむ先生】読者さんの中には、まことの声をもっと高いトーンで想像していた方もいたと思うんです。だけど私の中では低すぎるわけじゃないけど、最初聞いたときに見た目に対して違和感がある感じのイメージ。そこからまことを知るうちに、少しずつ馴染んでいくくらいの塩梅がいいなと思ってました。具体的にどんな声という明確なイメージはなかったんですけど…。

【梅田修一朗】オーディション用の声を吹き込むときは最後まで悩みました。可愛い見た目だからといって可愛い声とかしゃべり方というのは違うなと思っていて、でもやっぱりまこと先輩の中の「可愛くありたい」という気持ちにも寄り添いたくて。それを声で表現する上で何が正解なのか──。性別ではなくまこと先輩という存在の声をずっと考えながら、「これでよかったのかな」って確信もないままオーディションテープを提出したんですけど。

【ぽむ先生】そのお話を聞いて、改めて「梅田さんでよかった」って思いました。私もこの作品は最後まで「何が正しいんだろう」って揺れ動いていたので。結局はこの子たちのことを真剣に考えることが大事なのかなと思って描いてきたんですけど、梅田さんが同じような思いでまことに向き合ってくれていることがうれしいです。

【梅田修一朗】アフレコが始まってからも「果たして僕は100%、まこと先輩を演じられているだろうか?」と考えてしまうことはあります。でもぽむ先生のおっしゃる通り、僕自身の葛藤がまこと先輩を形作るのにもどこか重なっていればいいのかもしれない。そんな願いを込めながらアフレコに臨んでいます。

■正解のない悩み、もがきながら考えた「まことの幸せ」

──連載中の多くの反響を先生はどのように受け止めていましたか?

【ぽむ先生】ジェンダーについて悩んでいる方から「このマンガと出会えてよかった」といった感想をいただいたことがありました。それはとてもうれしかったんですが、逆に不安にもなったんです。私は“このこと”をちゃんと考えられてるのかなって。この作品を描くにあたってジェンダーについて調べたりはしたんですが、悩んでいることや解決の仕方は人それぞれで、それこそ正解はなくて──。「じゃあ、まことの幸せってなんだろう?」と考え込んでしまった時期もありました。

【梅田修一朗】僕の勝手な感想なんですが、この作品のたくさんのファンの方々は(主要登場人物の)まこと先輩、咲ちゃん、竜二くんの3人を「ずっと仲良くいてほしい」という気持ちで見守ると同時に、どの子かに少なからず自分を重ねていると思うんです。それぞれに抱えている悩みがあって、それも3人でいるとふっとほころぶ瞬間があって、だけど自分自身と向き合わなければいけない時間は必ず来るわけで──。そんなこの作品に、僕は“放課後の匂い”みたいなものを感じるんですよね。

【ぽむ先生】ありがとうございます。この作品は私が学生の頃に考えたり悩んだりしてたことを描いたんです。学生の頃はただ悩むだけだったり、友だちの悩みも聞くことくらいしかできなかったけれど、そこから数年経って「あの頃、こんなふうに考えてたらもうちょっと生きるのが楽になったかもな」と思えたことがあったので、それが今、悩んでいる方の何か手助けになれたらマンガにする意味もあるんじゃないかなと思って描いていました。

【梅田修一朗】「今の時代だからこそ届けるべき作品」という側面で見られがちですが、僕はもっと普遍的なテーマというか、「大切な人とどう関わるか」とか「自分がどう自分であれるか」といったことが温度感を持って丁寧に描かれている。だから、いろんな人がいろんな形で勇気づけられたんじゃないかと思うんですよね。

■100%の幸せじゃなくても「自分は大丈夫」って思えればいい

──ぽむ先生が最も悩んだ「まことの幸せ」について、本編を最終回まで描き終えた今はどのようにお考えですか?

【ぽむ先生】他人と関わって生きていかなければいけない以上、すべての人に自分を受け入れてもらえることって本当に難しいと思うんです。だけど「自分は大丈夫」って思えるようになったらいいのかなって。それが「100%の幸せ」ではないかもしれないけれど、「自分は大丈夫」に向かってまことたちが成長していけたらいいなというのが、本編の最終回で一番考えたところでした。

【梅田修一朗】まこと先輩の場合は、最も身近な存在であるお母さんが受け入れてくれないのが悲しいところです。個人的な話ですが、僕の父も「男らしくあれ」というタイプでした。だけど「男らしく、女らしくってなんだろう?」という疑問はずっとあって、それは声優という職業に向き合うにあたって考えることもあります。表面的なものなのか、内面的なものなのか。この仕事をしていると「結局、その人になってみないとわからない」という壁にぶつかることって往々にしてあるんですよ。

【ぽむ先生】見た目にはわからないところで悩んでいることって、人それぞれきっとたくさんありますよね。でもそれを根本的に解決できることって、実はけっこう少なくて。だから「自分は大丈夫」に向かっていけたらいいのかなと思ったりもするんです。

【梅田修一朗】そうですよね。それと自分じゃない人のことを考えよう、理解しようとすることも大事だと思うんです。それは声優としても、梅田修一朗という人間としても。そのことに改めて向き合う素敵な機会をこの作品でいただけたなと思っています。

──まこと先輩を通して、梅田さんはどんなことをアニメ視聴者にお伝えしたいですか?

【梅田修一朗】自分が言えるのは「いいんだよ」という言葉でしょうか。「あなたはあなただよ」と。ぽむ先生が何かに悩んでいる人たちが「自分は大丈夫」と思えるようにこの作品を描いたとおっしゃった、その思いをきちんとお届けできるよう、任せていただいたキャラクターを精いっぱい魅力的に演じたいですね。

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