1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

さいたま市が「子供の英語力日本一」になったワケ 教育長に聞くメディア座談会に行ってみた

おたくま経済新聞 / 2019年12月25日 14時36分

さいたま市が「子供の英語力日本一」になったワケ 教育長に聞くメディア座談会に行ってみた

左から野口理事、細田さいたま市教育長、金本代表理事

 埼玉県さいたま市が「子供の英語力日本一」って知ってますか?近年、特に注目をあつめている子供の英語教育。各教育委員会では様々な施策を検討していますが、さいたま市の公立小中学校で行われている英語教育について教育長から話を聞くというメディア座談会が、12月23日に一般社団法人日本人グローバル化計画推進協会主催で行われました。今回はその様子をお伝えします。

 2019年、国連が定める「世界英語デー」の4月23日に設立された日本人グローバル化推進協会。日本人に多い「英語が苦手」という意識を変え、世界中の人々とコミュニケーションする手段として使いこなす手助けを事業として行っています。

 今回、さいたま市の取り組みを紹介する座談会が企画されたのは、文部科学省が公立中学校を対象に実施した、英語の「聞く・読む・書く」に関する試験の正答率が全国トップだったから。その正答率75.5%は、全国平均の42%をはるかに上回るものでした。

 この成績の背景には、小学校から段階的に英語と親しむ「グローバル・スタディ」という取り組みがありました。これについて、さいたま市の細田眞由美教育長からお話をうかがおう、という訳です。

 座談会は、日本人グローバル化推進協会の金本子竜代表理事と、野口洋一理事によって進行しました。さいたま市の教育行政トップに女性として初めて就任した細田さんは、元々英語の教員だったといいます。

 さいたま市が行っている「グローバル・スタディ」は、2016年からスタートしましたが、2007年から少しずつ、児童生徒に対して従来の「英語科」とは違った形の授業を始めていたといいます。細田教育長がポイントとして挙げていたのは、英語を「勉強する」という意識からの解放。

 特に小学校の段階では、歌やダンスなどで英語の音やリズムに慣れてもらうことで、自発的に楽しむことを主眼においているそうです。まずは「英語って楽しい」と感じてもらうのが一番、と細田教育長は話してくれました。


 これを手助けするのが、134名在籍するネイティブスピーカーの先生。日本人の担任とは別に、多くの英語話者を配置することで、教員の負担を減らすと同時に、外国人とコミュニケーションする環境を作り出しているのだとか。

 また、教員が英語の指導法を学んでいない小学校向けには、オリジナルのDVDを作って配布し、授業に役立てられるようにしているとか。ここにもやはり、コミュニケーションツールとして英語を位置づけるスタンスが貫かれています。

 金本代表理事が家庭でのありようについて質問すると、細田教育長は保護者の方に、学校の「グローバル・スタディ」であったことを話してもらってください、と伝えているのだそうです。宿題であったり、保護者としては「勉強しているか」というインプットの作業を気にしがちですが、まず子供たちが経験したことを話してもらう、というアウトプットが大事なのだとか。

 自分以外の存在に「分かるように伝える」ということは、コミュニケーションにとって非常に重要なポイント。それは日本語でも英語でも変わりません。相手の伝えたいことを聞き取り、そして自分でも伝えるという行為を通じて、結果的にコミュニケーションスキルの向上につながるという訳です。

 これまでの取り組みからフィードバックし、内容の見直しを行ってメソッドを磨き上げてきた「グローバル・スタディ」。外部の業者が実施する試験の結果をもとに、よくできている点、改善が必要な点を各学校に通知し、きめ細かいアドバイスもしているとか。1学年当たりの児童生徒数が約1万1000人いるというさいたま市ですが、学校数も多く大変だと思う反面、様々な子供たちの例を蓄積できるので、逆に強みになっているのかもしれません。

 さいたま市では、小中学校の児童生徒合わせて570名が「ジュニア大使」の認証を受け、さいたま国際マラソンなどのイベントで、外国からの訪問者にさいたま市のことを紹介する活動も行っているといいます。学校だけでなく、外に出て実際にコミュニーケーションする機会も大事にしているとのこと。

 細田教育長が強調していたのが、教員の側から指導するのではなく、児童や生徒が自主的に取り組めるようにしていること。小学生ではドラマコンテスト、中学生はディベートコンテストを自主的に運営し、自分たちの意思を伝え合う経験が、大きな糧となっているようです。

 日本人グローバル化計画推進協会でも、東京スカイツリーなど外国人観光客が集まるスポットで、子供たちが英語を使ったガイドをする、といった取り組みを行っているそうですが、義務教育の9年間をフルに使い、学年に応じて必要なカリキュラムを提供する「グローバル・スタディ」の仕組みを聞き、非常に参考になった様子でした。

 2020年度から適用される新しい学習指導要領では、より実践的な英語力の育成が目標となっています。細田教育長によると、これまで取り組んできた「グローバル・スタディ」と、新しい学習指導要領をどのように融合させていくか、というのが現在の課題だとか。

 単なる英語力強化ではなく、コミュニケーションを通じて自分以外の多様な考えや価値観を知り、互いに認め合い、尊重すること。それこそが「グローバル化」なのだと、座談会は締めくくられました。

取材協力:一般社団法人 日本人グローバル化計画推進協会/さいたま市

(取材:咲村珠樹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください