夫婦の「決定権」はどっちが握るべきか…自分の髪形にも夫のジャッジを求める妻が“絶対に譲らなかった”こと
オトナンサー / 2024年6月2日 8時10分
夫婦は対等の立場。どちらが上で、どちらが下という階層はありません。しかし、私が運営する夫婦仲相談所には「妻が上から目線でものを言うのでイラッとする」「夫のモラハラ発言がチクチク胸に刺さる」、そして最近認知されてきた「夫が無言の圧力で自分の主張を通そうとする」という不機嫌ハラスメント、いわゆる“フキハラ”関係まで、フィフティ・フィフティではない夫婦関係の不満の声を多々耳にします。
私が必ず尋ねることは、「決定権はどちらが握っている?」です。もめるけれど、最後は妻の言う通りになって円満な場合はそれでOK。決定後にずっと「だから言っただろ」と文句を言うのは、夫婦間に亀裂が入る一要因なのでNG。決定権がどちらにあっても、「我も同意の上の決定だ」と腹落ちさせることができない夫婦は“黄色信号夫婦”となります。
日常は決定シーンの連続です。「牛乳を買うか、豆乳を買うか」「子どもの迎えは妻が行くか、夫が行くか」などなど。小さなことはさほど気にならなくても、車や家電など高価なものを購入するとき、夏休みの旅行先を決めるとき……そんな「二人で決めないと、後々もめそうな選択肢」が出てきたときはどうでしょうか。皆さんの家庭では、最後に決めるのは夫と妻のどちらなのか、決定後に文句を言うか言わないか……これらを見直してみてください。
興味深いアンケートとともに、「夫婦の主導権」について見ていきましょう。
■「姉さん女房」夫婦は◯◯が高い!
明治安田生命保険が2019年、20~79歳の既婚男女を対象に実施した「いい夫婦の日」に関するアンケート調査の中に、「夫婦の主導権はどちらにあるか」という質問があります。
全体の主導権は、「妻」が66.3%と過半数を占めており、「夫」の14.5%を圧倒しています。結婚年数を比較すると、結婚1年目までは「夫」が約2割、「妻」が約6割であるものの、3年目からは「夫」が約1割、「妻」が約7割という結果に。結婚年数を重ねるとともに、夫婦の主導権は妻へと移行していくようです。
また興味深かったのが、「夫婦円満か」という問いに対して、「円満である」と回答した夫婦間の年齢差を見ると、「妻が年上」の夫婦は80.6%。「夫が年上」(75.4%)、「同年齢」(77.5%)と比較すると、「妻が年上」の円満度が最も高いのです。さらに、「妻の方が5歳以上年上」の夫婦は「円満である」との回答が9割近くを占めており、“姉さん女房”の夫婦は円満度が高いことがうかがえます。
「妻が年上」の夫婦について、その理由を見てみると、「よく会話をする」(75.2%)、「感謝の気持ちを忘れない」(64.9%)、「相手を尊重・信頼する」(59.2%)との回答の割合が高く、中でも「よく会話をする」は全体の平均より10ポイント近く高い結果です。“姉さん女房”夫婦は多くの会話の中で相手を尊重し、感謝の気持ちを伝える、よいコミュニケーションが取れているようです。
古いことわざで、「年上女房は金のわらじを履いてでも探せ」というのがあります。現代では年齢差別と眉をひそめられるので使われませんが、経験値が豊富なので、主導権を握っても角が立たないのでしょうか。
■教育方針を巡り…初めて対立した二人
美知留さん(38歳、仮名)の夫、隆司さん(仮名)は6歳年上の44歳。職場の上司と部下の関係からの恋愛です。仕事に厳しい隆司さんを尊敬していた美知留さんは、交際中から、プライベートでも必ず隆司さんにお伺いを立てていました。
結婚後もそのスタイルは変わらず。どこに住むのか、週末どのように過ごすのか、何を食べるのか、果ては自分のヘアスタイルやファッションまで、隆司さんのジャッジを求めました。
職場の延長で決定権の偏る関係が生まれていたわけですが、美知留さんはそれが心地よかったといいます。年齢も夫が6歳上なので、年上を立てるという気持ちもありました。もともと、自分で決めるのが苦手な性格だったため、夫が決めてくれるのがありがたいと思っていたそうです。
ところが、子どもが生まれてから状況は一変します。二人は教育方針が全くの逆でした。
小学校受験を経験し、そのまま中学・高校・大学と進んだ美知留さん。子どもにとって、そのスタイルが競争しなくていいので幸せだという考えです。一方、地方出身の夫は、必死に勉強して地元の国立大学に入学した努力の人。「10代の時期に楽をさせては強い人間になれない」と反対です。
美知留さんは、この件に関しては譲りませんでした。夫が折れることもなく、二人は度々口論をするように。夫から「費用を出すのは俺の方だ」とひどい言葉でののしられることもあったそうです。
ある日、幼稚園の両親面談があり、そこで二人の立場は一気に変わります。その幼稚園は教育熱心なことで有名でした。先生から「お子さんは優秀なので、小学校受験を目指してはどうか」と提案されたのです。
それだけなら、夫も折れなかったかもしれません。しかし、その後に先生からこんな言葉がありました。
「最近、真帆ちゃん(仮名)は『パパが嫌だ』と言っています。ママにいつも怒っている、と。ママは本を読んでくれたり、お勉強を教えてくれたりするので好き、と」
自分が間違ったようで、いたたまれなくなった夫はその後、子どもの教育に関してはノータッチになりました。教育は妻の意見に従うことにしたのです。それでも、以前ほどスムーズな関係ではなくなった美知留さん。それで夫婦仲相談所に来られたわけです。
美知留さん夫婦の例は極端かもしれませんが、夫か妻のどちらかが“主導権を握る”のではなく、得意な分野の主導権を各々が担当すればいいのではないでしょうか。金銭管理が得意な妻なら、家計のことは妻に任せる。大工仕事が得意な夫なら、DIYは夫に任せる。大きな買い物、子育てに関しては時間をかけて会話して、両者が納得するように進める。もちろん、子どもが大きければ子どもも交えて意見を募る――。
全ての主導権を一人が握るという関係は、健全とはいえません。絶対に間違えない人間などいません。「これに決めちゃったけど、間違いだったね。次はよく考えよう」と、決定者を責めない姿勢を第一にしてください。
「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美
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