【賛否】わが子を「叱らない」「怒らない」親のスタンスに「何がダメなの?」の声…専門家が考える“懸念”
オトナンサー / 2025年1月12日 8時10分
わが子を「叱る」ことは難しいもの。子育て中の親なら、きっと誰もが一度は「叱り方」について悩んだことがあるでしょう。一方、「叱らない」「怒らない」スタンスの子育てを行っている親も一定数いるようですが、ネット上では「まったく叱らないなんてできるの?」「叱らないって逆に難しくないか」「絶対に叱った方がいいと思うけど…」「親が子どもを叱らない、怒らないってアリなん?」といった否定的な声が上がる一方で、「いいと思う」「叱らない方がいいよね」「何がダメなの?」など肯定的な声も一部あり、常に賛否が巻き起こっています。
「子どもを叱らずにいると、どんなふうに育つんだろう」と関心を持つ親もいるようですが、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんは「『叱らない』『怒らない』が何を指すのかで、メリットもデメリットも変わってくる」と指摘します。「叱らない親」「怒らない親」に育てられた子どもはどのように成長するのか――。専門家による見解と“懸念”です。
■“王子さま化”、“王女さま化”することも
子育てにおいて、親はなぜ子どもを叱るのか、怒るのか。これはどちらにおいても、目の前の子どもの行動に満足がいっていないからです。
しかし広辞苑で調べてみると、「叱る」と「怒る」には違いがあることが分かります。「叱る」とは「(目下の者に対して)声をあらだてて欠点をとがめること」、「怒る」とは「激して気があらだつこと」と書いてあります。
子育てにおいても、この両者はよく比較されることがありますが、そこでも違いが見られ、「叱る」はより望ましい行動に導くという指導の色味が強いですが、「怒る」はただ親が子どもへの不満を感情的にぶつけているに過ぎません。目の前のよくない状況を改善、解決したいという思いは同じであっても、行われていることは違うわけです。
「叱らない」「怒らない」という子育てが、もし、子どもがよくない行動を取ったときにも“大目に見る”というやり方であれば、多くの場合、成長とともに親が手に負えなくなっていきます。
小さいうちは、たとえ好き放題やったとしても、親が「まぁ何とかなる」と思える範囲で収まるかもしれませんが、4~5歳にもなれば行動範囲が広がり、できることも増えてきますから、好き放題のままだと親が完全に振り回されてしまうのです。その段階で、「我慢が苦手」とか「気持ちの抑制ができない」などの悩みが増え、家庭の中で“王子さま化”、“王女さま化”してしまうことも少なくありません。
一方で、「叱らない」「怒らない」という子育てが、“親が感情を荒げない”という意味でなされているのならば、子どもは親から傷つく言葉を言われることもありませんし、怖い思いもしないので、それはメリットといえます。
このように、「叱らない」「怒らない」が、“何でも大目に見ること”を指すのか、“感情的な穏やかさをキープすること”を指すのかで、メリットもデメリットも変わってくると思います。感情を荒らげずに、でも伝えるべきことは伝えられているのであれば、メリットばかりといえるでしょう。
■大事なのは「子どもを導けているか」
「叱らない」「怒らない」子育ては「アリ」なのか、それとも「ナシ」なのか……と考えたことがある人も少なくないと思います。
「怒る」というのは、親が自分の感情を制御できない場面で起こるので、その視点で見れば「怒らない子育て」は“アリ”だと思います。感情をぶつけたとしても、基本的には現場の改善にはならず、多くの場合、子どもに反抗され改悪してしまいます。さらには、子どもに対し、「困ったときは相手に怒鳴り散らせばいい」という誤った手本を示していることになります。
次に「叱らない子育て」について、単純にアリかナシかとは言い難く、その中身によってどちらにもなり得ると思います。
もし、「叱る」が辞書的に「声をあらだてて」なされるのであれば、「怒る」と何ら変わりません。多くの人が「叱らない方がいいよね」となるのは、「叱ること=強い言動」というイメージがあるからです。
しかしそれは、感情があらわなのがよくないのであって、淡々と子どもを導く叱り方であれば必要なことです。子どもが自然に世の中のルールを学ぶかといえば、そんなことはありません。誰かが教えてあげなければ学べないこともたくさんあります。それを叱りながら伝えていくのであれば、叱らない子育てだと学ぶべきことが学べないので、この解釈では「叱らない子育て」は“ナシ”になるかと思います。
「叱る/叱らない」「怒る/怒らない」は、個々人で言葉の意味の捉え方が違うものなので、その言葉だけで「叱った方がいいのか、叱らない方がいいのか」という問答をしてしまうと、誤解を招いてしまいます。
大事なのは「子どもを導けているか」です。ここに親の感情が伴うと、つい余計なことを言ってしまったり、子どもが反抗したりと、「導き」から程遠くなってしまいます。子どもに「何がよくて、何がダメなのか」ということを、感情抜きで伝えるのはとても難しいものですが、目指す方向性はここにあります。
そう考えると、「叱るべきか、叱らぬべきか」で迷う以上に、親自身の気持ちのコントロールをどうやりくりしていくかが、バランスを取る上での一番のポイントといえるかもしれませんね。
オトナンサー編集部
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