私も育児ノイローゼになったからわかる。女性に必要なのは「つながること、話すこと」
OTONA SALONE / 2022年5月25日 12時1分
コロナを潮目に急速に働き方の変化が訪れている。SNSを経由した仕事もその一つ。従来ならば考えられなかった経緯で、まったく新しい「行動」を仕事にする女性が登場しているのをご存じだろうか。女性たちの新しい働き方を紹介していく。
【新しすぎる働き方図鑑#2】後編
見えてきた立ち位置。「司会&モデレーター」として活動を始めることに
そしてシングルマザー友理さんの仕事が見えてきた。リスナーとスピーカーの間に立つ司会&モデレーターとして活動するようになる。
「講師の話を単純に聴くだけではありません。講師とリスナーの間をうまく繋いで、リスナーであるママさんたちがすぐに実践できる情報や実生活で役立つ具体的な情報を引き出せるように、講師にわかりやすく質問したり、講師の話を深堀りしたりして、最終的には参加者全員が納得できるように工夫しました」
セミナーの講師とリスナーの「繋ぎ役」としての役割が高く評価され、「孫の手モデレーター」として広く知られるようになった。孫の手のように行き届くモデレーターという意味だ。
さて、うまい繋ぎ役とはどんな工夫をしているのか?
「先生たちの話を聞いていると、単純に疑問に思うことが出てきます。その時に、素通りするのではなく、疑問を感じたまま、ありのままを躊躇せずに訊いてみるのです。たとえば『感謝をすればうまくいく』なんてフレーズは、具体的にはどうやって感謝すればいいのかわからない。それならばと、スピーカーにぶつけてみるのです。『今日から実践できることを教えてください』と」
ママたちは、環境を変えられるわけでもない、立場も変わらない、お金だってない。そんな人たちが出来ることって何ですか?と切り込んでいく。ふわっとした話で終わらせない、ディベートになってもいい。答えを導けたらリスナーも興味深く聴けるし、結果的にスピーカーの評価もあがる。
Clubhouseでのモデレーターとしての活動は朝から晩まで続いた。子どもたちがいる日は途中でミュートにして、子どもたちにご飯たべさせたり、トイレに連れて行ったり。
「大事な話をするときは子どもたちにも『今からめっちゃ大事なことをするから、5分だけ静かにしてね』と子どもたちにも協力してもらいました」
1日中ネットにログインして話してる姿は、亡き夫の親戚にまで知られるようになる。
周囲からは「遊んでるんじゃないよ、シンママのくせに」と批判されてしまう
「でも、スマホに向かって1日中楽しそうに話してますから、遊んでいるように見えたんでしょうね。シングルマザーなんだから、SNSで遊ばないで仕事をしろって思われていました」
友理さんは2か月と期間を決めて、Clubhouseに集中して取り組んだ。
「2か月後に何の変化もなく、仕事にもならなかったら辞めて、別の仕事を見つけようと思いました。自分にそう言い聞かせてモデレーターとしての役割を続けてみたんです」
そして2か月後、ついに道が開けた。2022年3月にセミナーやイベント企画、SNSコンサルティングの会社を設立することになったのである。
「Clubhouseで知り合った人のなかに、シングルマザーで育ったという経営者の方が現れ、大変な気持ちがわかるので、ぜひ出資しましょうと言ってくださって。でも何ができるのかわからないと正直に言ったんです。そうしたら会社を作りましょうということになりました」
ちょうど同じころ、亡き夫と暮らしていた家を売りに出すことに。そのわけは?
「旦那さんが他界したあと、住まいは私の財産になりましたが、他の借金が残っていました。それでも旦那さんの思い出もあるし、同じ場所に住み続ける予定でした。でも親戚から疎まれていて、子どもたちの面倒はみてくれないし、わざわざここに住んでる必要ないと思うようになって」
移住したい。でもシンママは家が借りられない。起死回生のキャンピングカーとは?
漠然と移住を考えて、知り合いがいる地域へ引っ越そうと思ってもシングルマザーでは不動産屋の審査が通らず、信用問題でつまずいてしまう。そんな中、たまたま夫の仕事の廃材を処分してる時にふと降りてきたものがキャンピングカーだった。でも、正直全く興味がなかったが、直感に従いキャンピングカーを調べ始めた。
「シングルマザーだから家も借りられないし、家も売れないかもしれない。どこに行くとしても、とりあえずキャンピングカーで暮らせばいいかも!と思ったんです。思い立ったら早くて、ちょうど近所にキャンピングカーが300台以上並んでいるカーショップが! ピンときた車に乗り込んでみたら、車検の日付が旦那さんの誕生日だったので、即決しちゃいました」
高い買い物だったが、嬉しいことにキャンピングカーを買った1週間後に夫と暮らしていた家が売れた。そしてさまざまな縁で移住することも決定した。
「たまたま縁があったのですが、山梨に移住することにしました。山梨は空き家率が全国で一番高いんですね。空き家をリフォームして暮らせば空き家問題の対策にもなり、シングルマザーが住めるよう空き家をリフォームできる思い切って子どもたちと一緒にキャンピングカーで引っ越すことに」
こうして移住先、山梨で子供たちの学校の転校手続きも済ませて、4人の暮らしも始まった。
オンラインセミナーが成功してわかった。自分の「育児ノイローゼ経験」が生かせる
「最初に武田双雲さんにスピーカーになっていただいて、はじめて有料オンラインセミナーを開催したんです。約400名以上集まって大好評でした。はじめて会社としての収益がありました」
オンラインセミナーは多い日で400人もの受講者が訪れた。その多くがママさんたち。友理さんのセミナーはリピーターも多く好評で、モデレーターとしての仕事は、他の企業からのオファーもくるようになりますます仕事が増えていった。
「講師の先生たちも、受講者も私にとっては大切なお客さまです。セミナーは開催することも大事ですが、やりっぱなしにならないよう開催後のフォローが大事。コミュニティを作って、受講者であるママさんたちがコミュニケーションを取りやすくしたり、横に繋がれるようにしたんです」
繋がりのないママたちは、誰に頼ったらいいかわからない。孤独な子育てが原因で起きる産後うつ、育児ノイローゼは深刻な社会問題にもなっている。だが周囲がママに手を差し伸べようにも、昨今はマンションの掲示板に「子どもたちに話しかけないでください」と貼られている情勢、うかつには手を貸せない雰囲気も漂っている。
友理さん自身も子育てで誰に頼って良いかわからず、また周囲に甘えることに抵抗もあり、育児ノイローゼになった過去がある。その経験からも「人と人をつなぐこと、ママとママをサポートする人を繋ぐ役割がある」と気づいた。
「私の役割は『つなぐ』こと。誰に声をかけたらいいか、助けを求めたらいいかわからないママたちと、どの人が困っているかわからないママたちを繋げるオフラインの「場所」を作ろうと考えました」
つなぐことで運命を切り開いたから、同じようなママたちの役に立ちたい
こうして友理さんは新たに「ママ応援クラブ」を立ち上げた。現在オンラインで3000人のママさん会員がいる。
オンラインは「顔が見えないから」こそ相談できることがある。たとえば近所の顔見知りに離婚に関する相談しずらい。しかし全然顔の見えない相手にはアドバイスができたり、深刻な悩みを打ち明けることもできる。
「また反対に、オンラインだけでは実態がつかみにくいので、買ったキャンピングカーを利用して『ママメディア』として草の根運動をしていきます。2022年の夏は全国を縦断する予定で、必要なところに必要な情報が行き届くような活動をして、全国にいるヘルプが欲しいママとママをサポートする人たちを繋ぎます」
ますます意欲的な友理さんは、その他にストリームヤードというツールを使ってfacebook、ツイッター、YouTubeでママさんたちに役立つ情報を同時配信している。
「特にテレビが扱うことができない話題を題材にしています。例えば夫婦問題、膣トレーニングとか、多動やADHDの子どもを持つ悩みとか、ナイーブだけれども、ママたちが本当に知りたいことについて、専門家に話を聞いて配信しています。怪しい情報は絶対に発信しません。ママたちにとって安全な情報、信頼性の高い情報を届けたいです」
友理さんに今の悩みを尋ねると、社会貢献をいっぱいしたいと思っても、ひとりでは小さな力でしかない。だからこそ、多くの人を巻き込んで人に頼る力を鍛えたいのだとか。
忙しく頑張っているシングルマザーの姿を見ている3人の子どもたちは「ママは世界を変える仕事をしてるんだね」といって励ましてくれる友理さんの一番近くにいる応援団だ。
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