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復讐のために子どもに「ママに会いたくない」と言わせる夫。息子には母を傷つける自責の念もあるだろうに

OTONA SALONE / 2024年3月23日 21時1分

この2月、法務省法制審議会は「共同親権」を可能にする民法改正要綱を答申しました。「共同親権」とは、離婚後は父か母のどちらか1名に子の親権が帰属する現状の「単独親権」ではなく、離婚後も父母の双方が子の親権を持つ方式です。政府は今国会にも民法改正案を提出する方針です。

 

改正の背景には「子の連れ去り問題」があります。離婚を考える親が親権を確保するための監護実績を作ろうと、子どもを連れて姿を消す事象で、海外では「誘拐」と判断される違法行為です。

 

長年この問題を追いかけてきたライターの上條まゆみさんが、連れ去りの実態を解説します。

【共同親権を考える#3】後編

モラハラ夫に「疑心暗鬼フラグ」が立ってしまったら、その加速はもう止められない

ほどなくして元夫は、お酒を飲むたび綾さんに絡むようになった。

 

「トリガーは、私が元夫の実家を尊重しない、ということ。私は月に1〜2回は元夫の実家に顔を出し、そつなくお付き合いしていたつもりです。でも、元夫は足りないという」

 

元夫を立てるつもりで、仕事をセーブしたのも悪かった。搾取されていると感じたのか、元夫は、綾さんの稼ぎが減ったことに不満をもらした。

 

「『稼ぎもないのによく好き勝手できるな』とか『奪われるばかりの結婚生活にはうんざりだ』など、散々いやみを言われました」

 

綾さんも弱い女性ではないので、言われっぱなしではなく、冷静に立ち向かう。理路整然と諭すと、元夫は余計に荒れた。言い争いが始まると、長男は自室にこもるようになった。

 

離婚したい。離婚しよう。綾さんも元夫も、離婚の意思は一致した。が、元夫は次男の親権を譲れないという。元夫は、血がつながっている次男のことを可愛がっていた。

 

「私はどうしても離婚したかったので、わかった、親権を譲るよ、と言いました。共同養育ができるのであれば、親権にそれほどの意味はないと思ってしまったのです」

 

これはある意味で正しく、ある意味で間違っている。親権がなくても共同養育はできるが、親権がある側が拒否すれば、共同養育はできない。親権の内容に、子どもがどこに住むかについて決める居所指定権が含まれているからだ。

 

「『ママに会いたくない』というのが、次男の心からの言葉だとは思えません。言わせているのか、誘導しているのか……。思えば、元夫が次男をうちに送ってくるとき、次男は元夫の顔をうかがうようなしぐさをしていました。元夫と次男が二人でいるときにどんなことを吹き込んでいたのか、だいたい想像がつきます」

 

そういえば離婚前、次男が「これからは二人で生きていく」と口にしたことがある。「二人って誰と誰?」と聞いたら、「パパとぼくだよ」と答えた。そうか、最初から仕組まれていたのか。

 

子どもは「復讐のための道具」に使われて「言わされている」。いつか自分を責めてしまうだろう

綾さんの元夫のように、実の母親から幼い子どもを引き離し、自分で囲い込もうとする父親がいる。母親にも子どもにとっても、残酷な行為だ。そこに愛はない。あるのは執着、あるいは復讐だ。

 

「親権を譲ってもいいと告げられて元夫は、そうまでして私が別れたがっていることにひどく傷ついたのだと思います。プライドの高い人なので、余計に」

 

いま元夫は、次男と二人で暮らしている。綾さんが「会いたい」と言っても「子どもがいやがっているから」と頑なだ。

 

「子どもに「ママには会いたくない」と言われたときは、本当にショックで、生まれて初めて死のうかと思いました。自分でもこれはまずいなと思い、『いのちの電話』に相談しようと思いましたが、いざ電話をかけようとしたら、いろんな窓口があってどこにかけたらいいかわかりません。母や友だちに話を聞いてもらい、なんとか気持ちを立て直しました」

 

綾さんは、次男が「ママに会いたくない」と口にするに至った背景に思いを馳せてみた。親の諍いの板ばさみになり、辛かっただろう。どちらかを切り捨てるしか、自分を守れなかったのだろう。

 

仕方がないことだった。次男の気持ちに寄り添おうと思うけれども、正直、子どもに裏切られたという思いは消えないでいる。

 

「『あなたの言葉がどれだけ私を傷つけたかわかってる?』『どれだけ地獄に突き落としたかわかってる?』 次男に向かってつい、そう言いたくなってしまう私がいるんです」と、綾さん。

 

痛いほどわかる。親だからといって、いきなり聖人になれるわけではない。だからこそ綾さんは、できるだけ明るく、しあわせに生きていくつもりだ。仕事に励もう。趣味もおしゃれも楽しもう。いつか次男に会えたとき、満面の笑みで「大好きだよ」「愛しているよ」と伝えられるように。

 

「次男も潜在意識では、母親を傷つけたことで自分を責めていると思うんです。かわいそうでなりません」

 

前編記事>>>『6歳の次男はある日突然「ママに会いたくない」と口にした。それから10か月、会えていない

 

■編集部より

共同親権や離婚、連れ去りに関するご自身のご体験、ご感想がある方、ぜひお聞かせください。

こちらから

 

≪ライター 上條まゆみさんの他の記事をチェック!≫

 

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