「自由恋愛」の世で忘れていましたが……割と長い間、結婚は「家の都合」でなされていた。いわんや平安貴族をや【NHK大河『光る君へ』#12】
OTONA SALONE / 2024年3月25日 20時0分
*TOP画像/道長(柄本佑) 大河ドラマ「光る君へ」12回(3月24日放送)より(C)NHK
紫式部を中心に平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第12話が3月24日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、歴史上の人物の背景を深掘り解説していきます。
本放送では、まひろ(吉高由里子)への恋心を断ち切れない道長(柄本佑)のもとに縁談の話が次々に舞い込んできます。
道長はまひろへの思いを抱えながらも、倫子(黒木華)と結婚することをついに決めます。
ましてや平安時代。結婚とは最大の「勢力拡大」の道具であったから
まひろは道長と遠くの国へ行き、二人だけが幸せになる将来ではなく、彼が世を変えるという「己の使命」を果たすことを何よりも望んでいます。
道長はまひろの思いに応えるため、彼女から妾を断られたことをきっかけに、父・兼家(段田安則)に左大臣家との縁談を進めてほしいと伝えます。
道長はまひろの願いを叶えるためにも、直秀(毎熊克哉)の死を無駄にしないためにも社会を変えていけるように動き出します。
しかし、彼がそれを実現するためにとった方法は当時の慣習に従い、結婚し、自身の勢力を拡大していくことでした。
現在は権力者の息子にすぎない彼がまひろと自分が願う社会を実現するには、結婚によってのしあがっていくしかないのです。
最終的に、世の歪が正され、人びとが幸せに暮らせる社会が実現したとしても、そこにいたるまでには少なくない人たちが傷つくだろうと予想できます。
いつの時代においても改革では犠牲者が出ます。何かを得るには何かを犠牲にしなければならない…そしてそれは“道長とまひろの試み”においても例外ではないのかも。
貴族なんて生涯「恋のうた」ばかり詠んで生きていたと思いきや、きっと現実はこんな感じだったのですね
道長が結婚相手に選んだ相手は源家の姫・倫子。彼女は「道長様をずっと…ずっとお慕いしておりました」「それゆえ ほかの殿御の文は開かなかったのでございます」と父・雅信(益岡徹)に話し、道長を婿にしてほしいと涙を流します。
一方、道長の心はまひろ一筋で、倫子に対しての愛情はありません。まひろに倫子との結婚を伝えたときにも「幸せとは思わぬ」「されど地位を得て まひろの望む世をつくるべく 精いっぱい努めようと 胸に誓っておる」と胸の内を言葉にしています。
倫子はおっとりとした見た目とは違い、強く、しっかりとした女性ですが、真実を知るとかなしむはず…。
両親から愛情を注がれ、この世の汚い部分から引き離されているように見える倫子でさえも、権力闘争や男たちの欲望に巻き込まれていきます。そして、本人も両親も知らないうちに人間の汚い部分や世の歪にふれることになるのです。
本作の2話では、詮子(吉田洋)が「この世の中に心から幸せな女なんかいるのかしら みんな男の心に翻弄されて泣いている」と、道長に語るシーンがありました。倫子も詮子が語るように男の心に翻弄され、泣くことになるのだろうか。
漢詩が読める女も、かぶを洗う女も、「貴族の姫」に生まれてしまったら「ヘンなやつ」だった
当時、貴族の女性が炊事や掃除をすることはありませんでした。床を拭いたり、大根を洗ったりするまひろの姿は他の貴族にとって奇異に映ります。
本放送では、為時(岸谷五朗)が気に掛ける女性の娘・さわ(野村麻純)が初登場しましたが、彼女も父から「女は何もするな」と言われて育ちました。しかし、さわはまひろの家事を手伝うことに。
貴族社会が規範とする女性像からあえて逸れることで得られる発見やよろこびがあります。特に、まひろやさわのように物事に偏見や固定観念を抱かず、ポジティブに行動することでしか気付けないものもあります。
家事をする二人の姿は御簾の奥に隠れている女性たちよりも、生を謳歌しているともいえるでしょう。
カブを持つさわの笑顔には姫君たちのどこか取り繕ったような笑顔とは違うものを感じとれます。“平安時代における貴族の理想的な女性像”から一歩外れることで、見えてくるものもあるのかも。
つづき>>>平安貴族男性は「妻2~3人、さらに複数の妾と関係を持つ」のが普通という衝撃。なぜそんなことが可能だったのか?
≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫
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