【インタビュー】ほとんどのことは「見栄」、「何を大事にするか」で幸せに。サバンナ八木さん(前編)【個人事業主必見】
OTONA SALONE / 2024年8月28日 12時10分
いつも癒しの笑いを届けてくれる、お笑いコンビ サバンナの八木真澄さん。八木さんといえば、2023年に「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」と「アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP)」の資格を取得、24年には「1級FP(ファイナンシャルプランナー)技能検定 学科試験」に合格。最近では書籍『年収300万円で心の大富豪』(KADOKAWA刊)を出版するなど、お金のプロフェッショナルとして話題です。今回は、FP八木さんが考える「お金と幸せ」について語っていただきました。
>>【後編】「人生のおり方」を考えたら、お金のかからない「リスキリング」だった
年収300万円でも豊かな気持ちで暮らす方法とは
――『年収300万円で心の大富豪』はお金の考え方の指南書であると同時に、「本当の豊かさ」を問いかける内容になっていて、たくさんの気付きを得られました。
ありがとうございます。この本には、「お金の考え方や使い方を知って、人と比べなくていい自分らしい幸せを見つけよう」というメッセージを込めています。
僕がいる芸人の世界は、億単位を稼ぐトップ芸人とアルバイトと兼業している芸人が、同じ舞台に立ちます。同じテレビ番組に出演しても、ギャラが1本数十万円の人もいれば数千円の人がいます。
じゃあ、お金持ち芸人がみんな幸せで、アルバイト芸人が不幸せかといったら、そんなことはないんです。芸人の多くは、お金がなくても幸せになれる方法をたくさん知っています。
――八木さんの著書にある「白州の空き瓶にトリスを入れて飲む」は、まさにその例ですね。
そうそう。僕が大好きな「白州」という名前のウイスキーは、700ミリで7700円くらいするんです。しかも、リアル店舗ではいつも売り切れています。そこで僕は、4リットル4400円の業務用「トリス」を買い、白州の空き瓶にトリスを入れて飲んでいます。最初はトリスの味ですが、酔ってくると味がよくわからなくなって、白州を飲んでいる気分になるんです。お得でしょ。
――たしかに、酔ってしまえば雰囲気で楽しめそう! 著書では他に、「近所の公園がきれいなのは高収入芸人のおかげ」など、FP八木さんとしての幸せの感じ方も紹介されていて、なるほどと膝を打ちました。
以前は、同期や後輩芸人が自分より稼いでいると、うらやましいと思っていました。でも、稼いでいるってことは、そのぶん税金を多く払っているんです。日本は累進課税なので、個人事業主で4000万円以上の収入があると、45%の所得税がかかります。さらに、住民税が10%。消費税もかかるので、1億円稼いでも60%以上は税金なんです。彼らの多額の税金のおかげで、近所の公園のトイレがいつもキレイで、トイレットペーパーも完備されているわけです。警察官や消防士が僕らを守ってくれるのも、彼らが多額の税金を払ってくれているおかげ。そう思ったら、妬むどころか、感謝するようになりました。
僕がタワマンに住まず、高級な服を着ない理由
――とはいえ、八木さんの所得ならきっと、白州は無理なく買えそうですし、都内のタワーマンションに住んだり、ハイブランドファッションを着たりできると想像します。リッチな生活には興味がないのですか?
興味のあるなしというより、先を見通して生活すると、いまの暮らし方、考え方になるんです。個人で事業をやっていると、収入の総額が上がるとものすごくもうかった感じがするんですけど、実際はそんなことないんですよ。
例えば、個人事業主の芸人の月収が60万円だった場合、これを手取り額と錯覚しそうになりますが、ここから保険や年金、経費、税金などを差し引くと、会社員の手取り30万円とそんなに変わらないです。会社員は月収に加えてボーナスもありますし、退職金、厚生年金など手厚いフォローがありますが、個人事業主にはそれがない。この点を見越して生活すると、そんなにぜいたくできないんです。
芸能人が億単位を稼ぎ始めると、多くの人が都内の高級な家に住んで、子どもを私学に通わせて、ハイブランドの服を着て、高級車に乗って、高い税金を払い続ける生活を始めます。それ自体は夢があっていいことですが、総収入額だけを見て、生活にかかる諸経費を考えずにお金を使ってしまう人が思いのほか多いのも、芸能の世界では事実です。
だから、僕は節約をしているんじゃなくて、一般企業が社員に支援する財形貯蓄を自分でやっていて、将来必要なお金を計算したら、いまはこれだけしか使えませんって生活をしているだけなんです。
会社員は、定年後は退職金や厚生年金、企業年金などで月20万円くらいを死ぬまでもらえますが、個人事業主は退職金もない、厚生年金もない。国民年金だけだと、月の収入は6万円とかですよ。都内じゃとても暮らせませんよね。
野球選手に例えたら、もっとわかりやすいです。野球選手の寿命は短いですよね。仮に20歳からプロになって30歳で引退と考えたら、10年でほぼ一生分を稼ぐわけです。10年で6億円稼いだとして、税金を引くと、残るのは2億5000万円ぐらい。6億円と聞いたらすごいけど、10年で一生分稼ぐのと、会社員で定年まで働くのは、そんなに変わらないです。でも、稼いでいるあいだは、いい車に乗るやろうし、いいマンションに住むやろうし、金遣いは荒くなる。
本当は、ある時期にまとめて稼ぐ人は、「封筒貯金」をしないといけないんです。例えば、月の食費が10万円やったら、4週に分けて1週間に2万5000円ずつを封筒に分けて入れておけば、ペース配分できます。個人事業主は、一生分のペース配分を考えて生活しないといけませんし、そうすると僕みたいな生活になるはずなんですよ。
>>幸せになる方法。個人事業主がやっておくべきこと
――ちなみに、個人事業主が最低限やっておいたほうがいいお金の対策はありますか?
小規模企業共済と労災保険には入っておくべきです。小規模企業共済は、個人事業主向けの退職金みたいな制度です。月の掛け金は1000円から7万円で、手続きは銀行でできます。掛け金の額は途中で変更できるし、確定申告のときに控除対象となります。
労災保険は、仕事中にケガをしたり死亡したりした場合に補償が受けられる保険です。こういう制度の話は、NSC(吉本の養成所)の授業にも入れてほしいなあ。
人と比べなければ、生活はむちゃくちゃラク
――八木さんが、東京ではなく大阪に家を買ったことも、資産形成と関係していますか?
そうです。東京より金額が安い大阪に買って、家族は大阪に住んで、自分は東京で一人暮らしです。僕が買った家を、もし東京で買ったら、おそらく4~5倍の値段です。家以外にも、あらゆることにお金がかかる東京で家族が生活したら、うちの場合は幸せじゃないなと思ったんです。だって、うちの嫁、百貨店勤務時代に、ボーナス出たからってタクシーで帰宅した人ですよ。7000円かけて。東京に住んだらダメでしょ。なので、家のお金はぜんぶ僕が管理しています。
でも、実はいま生きている人たちって、ほとんどが金持ちなんですよ。なんでかって、いつでもサブスクで好きな映画を見られるでしょ。昔なら映画を好きなだけ見るには大金が必要だったけど、いまは自宅のテレビをスクリーンにして、好きなだけ映画鑑賞できる。なのに皆さん、大金持ちって気付いてない。それは、他の人と自分を比べるからです。人と比べへんようにしたら、むちゃくちゃ楽ですよ。
なにが幸せか、自分で選択できるか。40代・50代は精神的な「人生のおり方」の練習、将来のための準備をする期間。サバンナ八木真澄が「お金と幸せ」の真理を説く、読みやすいビジネス書。
■『年収300万円で心の大富豪』(KADOKAWA刊)
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■サバンナ 八木真澄(やぎ ますみ)
1974年生まれ。京都府出身。立命館大学産業社会学部卒業。94年に学生時代の後輩・高橋茂雄とお笑いコンビ・サバンナを結成。「ブラジルの人聞こえますか~!」など1000個以上のギャグを持ち、柔道2段、極真カラテ初段の筋肉芸人としても活動するなど、テレビや営業で活躍中。2012年に結婚し、2児の父となる。長年日記やイラストなどを書き留めており、著書に『まだ見ぬ君へ』(幻冬舎よしもと文庫)、『未確認生物図鑑』(ヨシモトブックス)などがある。23年には、2級ファイナンシャル・プランニング技能士とアフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も取得している。
≪ライター・薬機法管理者 力武亜矢さんの他の記事をチェック!≫
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