「いちばん多い更年期症状の主訴はやはりホットフラッシュですが」抱え込まず来院してほしい症状とは？（後）

明るいお人柄と、軽快な語りからあふれるポジティブなオーラに、「お話するだけで元気を分けていただける」とファンも多数の産婦人科医・小川真里子先生。このたび福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センターでの診察をスタートされました。

長年に渡って更年期のトラブルに向き合ってきた小川先生に、改めて「更年期という時期だからこそ気を付けたいこと」を伺いました。

前編記事『婦人科専門医に教わる「更年期かもと思ったら最初にしたほうがいいこと」って？』につづく後編です。

更年期症状、いちばん多い主訴は？「やっぱり、ホットフラッシュですね」

「10年、20年前ならば、不調を感じて受診しても更年期障害とは診断されず、内科、整形外科などさまざまな科を渡り歩く人が多くいました。いまは、最初から更年期障害かなと思って産婦人科を受診し、はっきりと『ホルモン補充療法をやりたいです』と希望を口にする人が増えました」

こう振り返る小川先生。20年前ならば更年期障害の治療はまず漢方で、ホルモン補充療法（HRT）は効果がなかった場合の最後の手段だったのだそう。ですが、いまは最初から「漢方もあるし、HRTもありますが、どうしますか？」と提示することが普通になり、「HRTを希望します」と選ぶ方も増えてきたそうです。

「いろいろな情報が手に入りやすくなり、治療方法もあることが知られるようになりました。また、ピルの普及により、そのままHRTに移行する人も増えました。お嬢さんの世代がピルを飲んでいるので抵抗が薄いという母世代も登場しています」

では、この10年で受診時の主訴はどう変わったのでしょうか。

「いちばん多いのは変わらず、ほてり、ホットフラッシュ、汗などです。汗がひどくて辛い、ほてりがしんどいという訴えが多く、続いて、関節痛、イライラ、気持ちの落ち込み、不眠などです。明確に更年期だなと自分で判断して受診できるのはホットフラッシュですので、私の患者さんの場合はほとんどの方が訴えます。この点で主訴は大きくは変わっていません」

いっぽうで、診察をしてみると、実は更年期障害ではなかったというケースも多々あるそうです。

「例えばですが、40代後半から50代で月経が順調なのにイライラが出てくる場合、更年期症状ではなくPMSだというケースがあります。年齢的にもうPMSは違うでしょと思うかもしれませんが、そもそもPMSは20年前なら治療の対象になると思えておらず、我慢を重ねがちな症状です。耐えきれなくなって、やっぱりそうかもと気づいて駆け込んでいらっしゃるのです。何であれ我慢せず来院してください」

生理痛も同様に、治療を受けるべき症状だと気づかないまま我慢を重ねがちな症状です。更年期が近いタイミングまで生理痛や過多月経を我慢し続けたものの、体力の低下を自覚する中、あと何年このつらい症状があるかわからない状態に耐えきれなくなり、やっと治療にたどりつく人も後を絶たないのだそう。

「ですが、朗報もあります。1999年に低用量ピルが使用できるようになって今年で25年、これから更年期に差し掛かる人たちは若いころから低用量ピルがあった人たちです。HRTへの抵抗は薄らぎ、また月経のコントロールをしている人も珍しくない世代ですから、より治療に積極的でしょう。もっと下の世代はオンラインピルの利用が高く、かつて1桁だった使用率が10％台まで上がっており、さらに状況はよくなると感じています」

ただし、オンラインピルの中には産婦人科医が関与していないサービスも混在する点には要注意です。利便の面では女性躍進に寄与していますから、信用できるサービスを選びたいものですね。

お話／小川真里子先生

福島県立医科大学　ふくしま子ども・女性医療支援センター　医学部産科婦人科学講座　特任教授

1995年福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学病院での研修を経て、医学博士取得。2007年より東京歯科大学市川総合病院産婦人科勤務、2015年より同准教授。2022年より福島県立医科大学　特任教授。日本女性医学学会ヘルスケア専門医、指導医、幹事。日本女性心身医学会 認定医師・幹事長・評議員。日本心身医学会 心身医療専門医・代議員。2024年4月から福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター　特任教授。東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで、毎週金曜午前に完全予約制の更年期・PMS外来も。https://avance-clinic.jp/

 

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