「愛されて結婚したと思ったのに、だまされた」夫が発達障害と診断され、職を転々。身の危険を感じるがモラハラが始まった!【体験談】
OTONA SALONE / 2024年9月12日 21時0分
内閣府の調査(※)によると、結婚したことのある人のうち、パートナーからDVを繰り返し受けた経験がある人は、女性で10.3%、男性で4.0%という結果が出ています。
DVは殴る、蹴るなどの身体的暴力だけでなく、怒鳴る・無視るなどの心理的な攻撃、生活費を渡さず外で働くことを制限するなど経済的に圧迫することも含まれます。
なかでも心理的な暴力「モラハラ(モラル・ハラスメント)」は、身体的暴力に比べると実態がわかりにくく、被害者本人も自分が被害にあっているのかわからない場合も多いのです。
本記事では、夫を支えているつもりだったのに、実はモラハラに合っていたという36歳女性の体験談をご紹介します。
彼女はそろそろ結婚したいと思ってマッチングサイトを利用。出会ったのは、大学の講師をしている男性でした。
「大好きだからハグさせて」と、ロマンチックな言葉に浮かれて結婚したのですが、幸せは長くは続きませんでした。
夫は、結婚前には想像もつかなかったような人間に豹変したのです。
【モラハラ脱出と「自立」 ♯1】前編
※「男女間における暴力に関する調査(令和2年度調査)」/内閣府男女共同参画局が令和3年
君に出会えて俺は世界で一番幸せ者だよ!幸せいっぱいの日々
佳奈さん(仮名・36歳)は、27歳の時に、マッチングサイトで出会った真さん(仮名・38歳)と結婚しました。真さんは、大学で経済学の研究者をしている人でした。
「このまま一人というのも寂しいし、そろそろ結婚したいなと思って相手を探していました。
夫は出会った時はすごく優しくて、『君に出会えて俺は世界で一番幸せだよ』とか『大好きだからハグさせて』と臆せず言葉にしてくれるような人でした。デートの時も、ドアを開けて『どうぞ』と言ってレディファーストしてくれるのでキュンとしました。
ラブレターもしょっちゅうくれて、そんなに好きでいてくれるならこの人でもいいかなと思ったんです。」
押しに押されて結婚した佳奈さん。ただ、当時を振り返れば、些細なことを気にするなど、気になる一面もあったと言います。
「結婚前からちょっと細かい人だなと思うことはあったのですが、結構ユーモアがあって話が面白かったので、まあ、問題ないかとスルーしました。
結婚後、家具にちょっとでも埃がついていたら、指でなぞってフーッと息を吹きかけられたことも度々。ついには自分でルンバを買ってきて、休みの日には一日中ルンバを動かして掃除していました。」
脱衣所の手すりに頭をぶつけていた夫
結婚して一緒に暮らし始めてまもなく、佳奈さんは、ある現場を目撃して驚きました。
「何か異様な物音がしたので脱衣所に行ってみたのですが、そこに付いている手すりに何度も頭を打ちつけて、『なんだこのやろう!』と怒っているんです。理性を失ったかのように何度も打ちつけるものですから、壁に穴が開いてしまいました。
その様子を見て、もしかしたら発達障害か何かなのかもしれないと思って……。
発達障害者支援センターに電話で相談したら、いくつか病院を紹介してくれました。」
佳奈さんは「そんなにキレるのは何か問題があるからかもしれない。診察してもらおう」と真さんに提案してみたそうです。すると意外にもすんなり、「そうだな、行ってみるか」と応じてくれたのだとか。
今まで、ついカッとなってキレたことで自分から離れていった人が何人かいて、自身でも「俺は沸点が低い」と気にしていたようで、提案を受け入れてくれたようです。
その後の診察や検査の結果、ADHDと自閉症スペクトラム症だと診断されました。
「夫は母親に虐待されて育ってきました。10歳の時にお母さんは癌で亡くなったのですが、その当時のことを『せいせいした』と言っていたくらいです。虐待の経験が、今の夫に何か影響を与えているのかもしれないと思っていました。
だからこそ診断がおりた時、夫が困っているのだから一緒に力を合わせて助け合っていこうと思ったんです。
夫はそんなこちらの気持ちも知らず、怒りにまかせて日常的に『お前は家事ができない』『何をやらせてもだめだ』と私にあたってきました。辛かったですが、それでも頑張っていました。」
やがて長女が生まれ、佳奈さんは、真さんに怒鳴られても我慢して暮らしていました。
しかし、ある時「これはダメだ、もうついていけない」と思う事件が起こります。
「娘が3歳の時のことです。夫が娘を抱っこしていたのですが、駄々をこねたらアスファルトの上にポイっと投げたのです。
これはおかしいと思って、市役所の女性相談の人に相談に行ったんです。
担当者は、『離れた方がいい。あなたの旦那さんはもう治らないから』と言いました。
そうは言われても、もう結婚して7、8年経っていたので、離れられないという思いもありました。」
職を転々とする夫
ちょうどその頃、舅が病で倒れ寝たきりになり、一家は真さんの実家で暮らすことになりました。単に舅の介護のためというより、お金が底をついたという事情もありました。
真さんは結婚当初務めていた大学を突然辞め、そこから一家は坂を転がり落ちるように困窮していったのです。
「夫は、結婚後3年間は九州の大学で講師をしていたのですが、ある日突然辞めてきて、私の地元の関西に転居しました。
転居後、『俺はこれから仕事を探す』と言って、大学の事務のアルバイトを見つけてきました。アルバイトだけど、これでなんとか暮らしていくしかないと思っていました。子どもがまだ小さいので私はパートに行けない時期だったので、不安ではあったんですけど……。
やがて夫は収入を増やしたいと言って、別の大学の契約社員の仕事に就いたんです。やはり事務職だったのですが、すごくブラックな職場だったようで、さらに私への当たりがキツくなりました。転職と同時にモラ度も上昇していったんです。その後、夫は『もう、あんな仕事は嫌だ』と辞めてしまいました。」
佳奈さんは、「もうお金もないから、あなたの実家でお父さんと一緒に暮らそう」と言って、実家で舅と同居することにしました。真さんは研究職の仕事を見つけてきましたが、いつ嫌になって辞めてくるかと思うと佳奈さんはヒヤヒヤしたそうです。
同居後まもなく舅は入院。真さんは不安が募ったのか、佳奈さんや長女に強く当たるようになりました。
「何度か、『別居だ! 離婚してくれ!』と大声で叫ばれました。
もう終わりだなと決定づけたのは、娘が駄々をこねた時のことです。幼い娘に、『お前、何言っとんじゃ!こら!!』と怒鳴って、近くにあったビールの空き瓶を床に叩きつけて割ったのです。
パリンという音がして。同時に、今まで我慢に我慢を重ねてきましたが、私の気持ちもプツンと切れました。
その日以来、娘は幼稚園に行くと、『おうち怖いから帰るの嫌だ!』と泣くようになってしまって……。子どもにこんなしんどい思いをさせてまで夫を支え続けるのは良くないと思い、別居に向けて密かに準備をしようと決意しました。」
佳奈さんはすぐにでも別居したいと思ったそうです。ただ、子どもがまだ小さかったので、もう少し大きくなって自分が仕事に出やすくなるまでは時間を稼ぎ、それから別居しようと考えたそうです。
「すぐに離れることは難しかったのですが、その日に向けて着々と準備しました。
地元の賃貸住宅を契約して、転居後に通わせる保育園や幼稚園も目星をつけ、転居先の警察にも『夫がストーカーをするかもしれないので、連携を取ってください』、とお願いしました。
弁護士も見つけて挨拶に行きました。」
言っていることが次々変わる
佳奈さんはしょっちゅう夫から怒鳴られていました。些細な家事の手抜きを100倍くらい大袈裟に取り沙汰されたり、前はいいと言っていたことを数日後にはダメだと言われたりしたそうです。
「私は司法書士になるため受験勉強をしていますが、最初にそれを勧めたのは夫でした。
『お前は法学部を出ているから、司法書士になって俺を金銭的に楽にしてくれるのはどうだ?』と言ったのです。
私も面白そうだと思い、勉強を始めました。楽しくて、毎日家事と育児の合間を縫って頑張りました。
すると、『お前は勉強ばかりしていて、家事がちゃんとできていない。いい加減にしろ、勉強をやめろ』と言い出したのです。
結婚当初は、「君は外に働きに行かないで、俺のことを支えてくれたらいい」と言っていたのに、舌の根も乾かぬうちに、「なんでお前は外で働かない。この野郎、お前なんか役立たずだ!」とキレたこともあります。」
妊娠中でさえ、『パートで働くのはいいけど、家事がおろそかになっている』と説教するということは日常茶飯事。地雷がどこにあるのか分からず、佳奈さんはいつも緊張していたと言います。
反撃
佳奈さんも一方的にやられっぱなしだったわけではありません。
「別居する2年くらい前のことです。モラハラをする相手は黙っていては調子に乗る、こちらもガツンとやらないと、と思って怒鳴り返したんです。すると、夫がひるんだので、ある程度の制圧はできることが分かりました。この戦法で1年くらいは平和だったんです。
でも、誰かに怒鳴るのは好きじゃないし、そういう苦労をしてまで一緒にいる相手ではないと思いました。
彼の身の回りの世話をしている時間ももったいない。そんな時間があったら、自分や子どものために使いたい、一緒にいる価値がない。全く無駄な労力だと思い、制圧するのをやめました。」
しかし、大声をあげて物を投げる派手な暴れ方、子どもの泣き声。佳奈さん一家のただごとではない様子に、誰も気がつかなかったのでしょうか?
当時、一家は賃貸の戸建てに住んでいたそうです。家の周りは倉庫や工業地帯に囲まれていて、隣の家は離れていました。夜になると人通りもなく、不審な物音がしても誰にも知られることはありませんでした。佳奈さんは、「誰も気づいてくれなかった。場所が悪かった」と言います。
日々、夫から人格否定されるような暮らしをしていた佳奈さん。ひどい経済DVにも苦しんでいました。【後編】では、経済DV、そして夫のもとからの“昼逃げ”、その後の明るい兆しについてお話しします。
▶つづきの【後編】はこちらから__▶▶▶▶▶
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