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経済学者だった夫からの「経済DV」。「オマエは無能でなにもできない」の呪縛と決別し、生き直すためにたてた目標【体験談】

OTONA SALONE / 2024年9月12日 21時1分

大学で講師をしていた男性、真さん(仮名)と出会い、バラ色の結婚生活が待っているはずだった佳奈さん(仮名)。しかし、夫は、突然キレたり、家電や家具を投げて暴れたりして妻や子に当たり散らすモラ男でした。昼逃げの準備はしていたのですが、その日は思いがけず突然やってきました。

本記事は、佳奈さんのモラハラ体験をお届けする【後編】です。

【モラハラ脱出と「自立」 ♯1】後編

 

◀この記事の【前編】はこちらから__◀◀◀◀◀

 

経済DV、食費が足りない!

夫の真さんは、結婚当初は大学で講師をしていたものの、長くは続かず職を転々としました。アルバイトや契約社員だったこともあり、家計も困窮を極めていったそうです。当然のように始まった経済DV。新婚当初は月に6、7万もらえましたが、突然大学を退職してアルバイトになってからは、「生活費くらいお前が稼いでこいや」と言うようになりました。

 

「当時は、まだ子どももいなくて私も身軽だったのでパートに行って、月10万円ほど稼ぎました。

夫は大学事務のアルバイトをしていたので、月に15万くらい収入があったのですが、家賃と光熱費以外は全て私が負担していました。しかし、ちょうどパートを始めた頃に妊娠していることが分かったので、困ってしまって。」

 

佳奈さんは、お金のために出産間際まで働きました。会社からは出産後2ヶ月したら復帰して欲しいと言われましたが、赤ちゃんを預けるところがないため復職もできず、夫が稼ぐ15万だけで生活することになったそうです。

 

「食費は毎月3万円。何が買えるかなと思って毎日ご飯を作っていました。当然、足りる訳がないので自分のへそくりから出していましたが、夫はそんなことはお構いなし。
『俺は肉が食べたい、ステーキが食べたい、焼肉が食べたい』と勝手なことを言いました。

すごく腹が立つのが、夫が経済学の研究をしていたということです。
結婚前は、『俺は、経済学をいろんな人に分かってもらうために研究してきた。その経済学を使って、いろんな人を幸せにするのが夢だ』と言っていたのです。」

 

人を幸せにするどころか、妻である佳奈さんにやっていたのは真逆のことでした。

 

「食費も足りないのに、外食をしたりゲーセンで遊んだり、趣味のパソコンなどにお金を使いたかったようです。」

 

 

お金が足りなくてやっていけないことを佳奈さんが訴えると、「お前が働かないせいで苦労しているのに、なんでそんな偉そうなことが言えるんや!」とたびたび言われたそうです。
佳奈さんは子どもを保育園に預けて働くことも考えましたが、保育料も安くはありません。パートで10万円稼いでも、数万円が保育料に消えてしまうのです。
さらに、夫からのモラハラ攻撃の影響も大きかったので、佳奈さんは働くことを躊躇しました。

 

「夫から常に『お前は無能だ、何もできない』と言われ続けてきたので、『果たして私を雇ってくれるところなんてあるのだろうか』とずっと思っていました。
それが事実であろうとなかろうと、毎日繰り返し蔑まれることで、何もできないと思い込んでしまうことがモラハラの怖さです。」

 

 

“昼逃げ”決行、着の身着のままで長女を連れてシェルターへ

shutterstock.com

秘かに別居のための準備を進め、「そろそろできるかも」と考えていた頃のこと。
児童相談所の相談日に面談に行くと、突然、「引越しまであと1ヶ月も待つのは危ない。今すぐ逃げてほしい。今日すぐにでも実行に移さないと危ない」と言われました。

 

「突然のことで驚きましたが、児童相談所の人が市役所に助言してくれて、女性相談の人に『これからシェルターに行きましょう』と促されました。

当時は、警察にも相談するほど身の危険を感じていました。
夫はキレると家中の物を投げたり、家電をボコボコにして壊したり、ルンバを2階から1階に投げ落として窓ガラスを割ったりしました。空気清浄機など大きくて重たいものも投げるので怖くて。

夫に反論したらボコボコに殴られて、物を壊しながら怒鳴られ続ける……お決まりのコースなので何も言えませんでした。その様子を見て子どもも泣きますし、毎日、命の危険を感じながらビクビクして過ごしていました。」

 

佳奈さんは当初、シェルターに行くつもりはなかったそうです。ですが、児童相談所の方に、『子どもに大きな影響が出ている。お子さんがおかしくなってしまうよ』、と言われてシェルター生きを決心。

 

 

これを持って逃げたらなんとかなるという袋を用意していたので、それと貴重品だけ持って逃げました。女性相談の人には、スマホは家に置いて行きなさいと言われました。
近い将来、“昼逃げ”の日が来るだろうと思い、新しいスマホを自分の名前で契約していた佳奈さん。たまたまそれが届いた直後だったため、新しいスマホだけを持って逃げだすことにしました。

 

佳奈さんは関西圏の実家の近くに部屋を借りる契約をしていましたが、シェルターに行く時に女性相談の人から、「あなたの夫の凶暴性を考えたら、実家の近くはもちろん、関西圏には住まないでほしい。URも住んでいたことがあるからだめ。絶対に住んでいる場所を突き止められる。あなたの夫は研究者だから頭がいいだろうし、鼻が効きそうだから」と言われました。

 

「そう言われた時は本当に悲しくて、泣きました。相手が普通の男性だったらそこまで言われることはないと思います。実家の土地家屋も私が相続しましたが、そこにも住めないのです。」

 

 

女性相談の担当者が心配するのも無理はありません。
佳奈さんが夫の実家で暮らしていた時、震撼するような出来事が起こったのです。

「夫は、家の内側に4箇所、外側に5、6箇所、監視カメラを付けたんです。昼間の家の守りが手薄になっては困ると言っていましたが、本当は私の“昼逃げ”を疑っていたのでしょう。

カメラの前を通ったり、室内を動きまわったりするだけで、ビービーと警告音がして気味が悪かったです。娘はそれもあって、『家に帰るのが怖い』と泣いていました。
夫は自宅だけではなく、私の実家にも監視カメラを6台くらいつけて、まるでストーカーのようでした。」

 

 

シェルターで落ち着く間もなく、知らない町へ

shutterstock.com

2024年1月末、長女を連れて取るものもとりあえずシェルターに行ったのですが、長居はできませんでした。職員に、「あなたはお金もあるんだし、全く知らない土地に行って、早く新しい家を借りなさい」と言われたそうです。

 

「“昼逃げ”を計画していた時、祖父が亡くなって数百万円相続したので、それを元手に別居する計画を練っていました。
手元に転居費用があったので、早く出ていくよう促されました。シェルターも次々と人が入ってくるので、私みたいな人は出て行かないといけないのです。」

 

住む場所も決まらないまま長女を連れてシェルターを出た佳奈さん。まず、見知らぬ土地でホテル住まいをしました。

 

「シェルターの職員には、『駅前の不動産屋に行って、私でも借りられるアパートを貸してください』と言えば絶対に借りられると言われました。ホテル住まいをしている間、自分の住所がない、住む家がないというのもストレスで、土地建物の重要性を改めて感じました。あの頃は、本当にしんどかったです。」

 

一緒に逃げた長女は、“昼逃げ”するまではまつ毛の抜毛を繰り返したり、下唇から血が出るまで噛んだりする自傷行為を繰り返していました。しかし、ホテル暮らしを経てアパートに移る過程で、次第に落ち着いてきたそうです。

 

 

2月上旬、佳奈さんはやっとアパートに引っ越しました。長女を預けられる場所がないと、仕事の面接にも行けないので、保育園を探しました。

 

「住民票を移さずに転居したので、書類が色々必要で大変でした。近隣の保育園の2次募集の期限が2月15日だと言われたのですが、以前住んでいた自治体からDV証明を取り寄せようと思うと、全く間に合いません。
新しい自治体の女性相談の窓口に相談したら、『それでは間に合わないでしょう。うちで書きます』と言ってくれたのでギリギリどうにかなりました。

全然知らない町ですが、ここに来てからツキが巡ってきたような、疫病神から離れて運が向いてきた気がします。」

 

 

4月から長女が保育園に通い始め、佳奈さんはハローワークで見つけた事務職のパートに行っています。夫と別れるための調停も始まりました。

 

「調停が始まったのはいいのですが、夫が、『俺は離婚したくない』と言って、調停に来ないんです。
2回目の期日も仕事でいけないと言ってきて、次は2ヶ月後になってしまいました。来てくれないと話が進まないし、調停も打ち切りになってしまいます。
訴訟を起こしたら離婚できる可能性はありますが、DVの証拠を出すのが結構辛いという話も聞きます。暴言が録音されたレコーダーの音声を自分で起こすので、何度も聞かなければいけません。」

 

しかし、佳奈さんは、できたら裁判ではなく調停で終わらせたいと考えています。

 

「裁判にお金をかけたところで取れるものが増えるわけでもありませんし、たくさん財産分与しろとか金で誠意を見せろとか言うつもりは全くありません。さっさと別れてほしい。それだけです。」

 

 

スモールステップからモラ男に縛られない世界へ

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佳奈さんは、やっと生活のペースができてきたので司法書士試験の受験勉強を再開しました。勉強する時間さえ取れたら、受からないことはないと前向きに考えているようです。

 

「どんな資格でも、勉強する時間をどれだけかけられるかにかかっていると思います。
ある本に、『司法書士は文字が読めて文字が書ける人なら誰でも受かる』と書いてあって腑に落ちました。

どれだけ覚えるために時間を割けるか、細かいところまで詰めて覚えられるのか、それさえクリアしたら、誰でも受かる資格だと思います。あとは自分の頑張り次第です!」

 

週4日間パートに行って、幼い子どもを育てながらの受験勉強。決して楽なことではありませんが、佳奈さんは、目標を持って頑張ることが支えになっていると言います。

 

「目標がなければ、私はどこかで潰れていたと思います。
夫のモラハラに悩んでいた時は、ろくな職歴もない私が、夫から離れて自立して子育てするなんて絶対にできないと思っていました。乱暴な夫の言うことを聞いて一生を終えるしかないと、ずっと思い込んでいたのです。

でも勉強を始めて、『資格さえ取れたら、子どもと一緒に暮らしていけるお金を稼げる。取れない資格ではない』と思った時から、夫と離れる未来が動き出しました。」

 

 

専業主婦だから何もできないと決めつけていましたが、専業主婦でもパート主婦でも、一人で自立して生きていくことはできると思うと佳奈さんは言います。

 

「主婦だから我慢しないといけないとか、モラ男に耐えないといけないということは絶対にありません。自立して生きていくチャンスはあります。」

 

佳奈さんは、「夫から離れる勇気を持って資格を取得してもいいし、仕事を始めるのもいい。スモールステップから、モラ男のいない世界に飛び出していけるのではないか」と考えています。

 

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