51歳、初めての結婚。夫の家族に飛び込んで「ステップファミリー」に。決断できた決め手とは【体験談】
OTONA SALONE / 2024年10月5日 21時0分
「家族=家父長制(※)」がスタンダードだという考え方は、今は昔。そのあり方や価値観は急激かつ多様な広がりを見せ、それぞれに唯一の「家族像」が描かれる時代を迎えています。
この「家族のカタチ」は、私たちの周りにある一番小さな社会「家族」を見つめ直すインタビューシリーズです。それぞれの家族の幸せの形やハードル、紡いできたストーリーを見つめることは、あなた自身の生き方や家族像の再発見にもつながることでしょう。
さて、第1回目の今回にご紹介するのは、51歳で初めての結婚をし、結婚10年目を迎えたひろみさん(仮名)。
離婚歴のある夫は4歳年上。3人の息子は既に独立していましたが、結婚した瞬間に、息子たちが築いた家庭を含む3家族のステップファミリーとのお付き合いが始まります。さらに、独身の身から一気に「おばあちゃん」という立場まで!
年齢とともに変化した結婚への考え方や、ステップファミリーとの毎日について、ひろみさんにお聞きしました。
※男性の「家長」が一家の長となり,ほかの家族メンバーに対して絶対的な支配権 をもつ家族制度のこと。
【家族のカタチ ♯1】前編
「結婚は身売り」――幸せな未来が描けず、自立を目指した20年
“女性はクリスマスケーキと同じ。24歳までは人気だけど、25歳以降は売れ残り”――そんな価値観がまかり通っていた時代に、まさに20代を生きていたひろみさん。ところが、当時の本人は結婚に対してまったく前向きな気持ちになれなかったのだとか。
「だって私ね、結婚はまるで“身売り”だと思っていたから」。
その考えの根本には、ひろみさんの家庭環境がありました。
「母を見る限り、結婚生活はひたすらに自分を押し殺すというイメージしか持てなかったんです。
たとえば食事の時間は、リビングで一人優雅に食べる父を横目に、母と私と弟は別の場所でひっそりといただく。家のことは何もしない父の傍らで、母は文句も言わずせっせとお世話する。
家族同士で本音を言い合うような空気は皆無でしたし、そんな発想自体もなかった。母を見ても、結婚生活が楽しいとかいいものだなんて、まったく思えませんでした」。
理想的な未来やあたたかな結婚生活を自ら手に入れられるとは思えず、「結婚しなくても自力で生きていける人生」を目指したというひろみさん。情報を集め、考え続けること2年。歩むべき道として辿り着いたのは、高齢者福祉の仕事でした。
「人から必要とされ、自分の喜びにもなる仕事だと思ったんです。
当時は別業界で事務職員として働いていましたから、まずはボランティアで経験を積んでから、特別養護老人ホームへ転職しました。笑顔に触れられて、自分が役に立てて、やりがいを実感できましたね。その後、職種や職場を変えながら20年。様々な資格もとって、40代後半には管理職を任されるようになりました。
でもね、そこでやっと気づいたんです。『このままだと、私の人生は仕事だけで終わっちゃう』って」。
「自分は自分のままで、共に生きる」という結婚の在り方に触れ、49歳で一念発起!
キャリアアップを果たし、目標だった「自立した日々」を実現したひろみさんでしたが、気づけば休みは月4日程度、年末年始も泊まり込みで勤務……そんな生活が当たり前に。
それまでは仕事と趣味を両立しながらそこそこ充実した日々に胸を張れたものの、管理職になってみると、それもままならなくなったといいます。
「管理職になって少し経った49歳の時、初めて人生の現在地を客観的に捉えられたんです。
『50代を逃したら、私は一生結婚せず、趣味にすら時間も割けず、仕事一色の人生だ。本当にそれでいいの?』って。
仕事の忙しさを口実に目を逸らしていましたが、年齢という数字を前にしたら未来を見つめざるを得なかった。自分のチャンスが徐々に小さくなっていることをリアルに突き付けられて、初めて真剣に結婚を考えるようになりました」。
新たなアンテナに引き寄せられたのか、そんなひろみさんの目に一つの新聞記事が飛び込んできます。
「“大人婚”というテーマの記事でした。『全てを委ね依存し合う関係性ではなく、それぞれが自分を保ちながら、 相手との共通点を共有していく――そんな結婚が増えていますよ』という内容に、結婚のイメージが根本からひっくり返ったんです」。
「身売り」から「大人婚」へ。かつて自分を縛り付けていた結婚に対するイメージをアップデートしたことで、一筋の光を見出すことができたひろみさんは、早速大手結婚相談所に登録しました。
「結婚歴・子どもの有無」にはこだわらない。信頼できる相手となら、あとから良い形にできると信じていたから。
その後、ちょうど1年の婚活期間を経て、ひろみさんは現在の夫と結婚に至ります。
そこまでの道のりは、どんなものだったのでしょう?
「セミナーで心構えを勉強したり、1対1の顔合わせやパーティーなどに出向いたり。本当にいろいろな方と会いましたね。その結果わかったのは、“経歴や肩書きは関係ない”ということ。どれだけ輝かしい経歴があっても、決断力がない方や、お話が合わない方が、たくさんいたんです」。
信頼できるパートナーに出会いやすくするための条件設定が、むしろ出会うべき人を排除しているのでは……。そう思ったひろみさんは、それまで相談員のアドバイスをもとに決めていた“一般的に無難とされる条件”を次々解除。
「さらに言えば、私は結婚経験もなく、具体的な結婚生活のイメージも抱けず過ごしてきた人間でしたから、むしろ結婚歴がある人の方が頼もしいかも、と思うようにもなりました。もちろん、事情が複雑なこともあるかもしれないけれど、そうなったらその時々で考えていこう、って」。
やわらかな笑みを浮かべながら、そう話してくれたひろみさん。婚活開始から半年後には、結婚歴や子どもの有無などの制限も取り払っていったといいます。
やがて間もなく出会ったのが、やがて夫となるAさんでした。
夫は「私を解放してくれる」人だった
「彼とはテニスが趣味という共通点でマッチングされました。初めて会うときも、私は相手の写真も見ずに行ったんですよ(笑)。それほどに、相手の内面や興味のベクトルというものを重視するようになっていたんです」。
お相手のAさんは、とても情熱的でオープンマインドな男性でした。ひろみさんが心を開くのに時間はかからず、出会って3カ月後には、結婚を決めたという二人。今だから言葉にできる、「家族になる決め手」はあったのでしょうか?
「私が『彼となら家族になれる』と思ったのは、私が固くなったり委縮したりせず、カタチで例えるならば “マル”のままの自然体でいられたから。それまで自分の家族とすら本音で話すことはなく、仕事では立場が上がるにつれて相手との距離を保つことが大切になる。自分から人の懐に入っていくのが苦手で、孤独な私でした。
ところが、オープンなマインドな彼の前では、何かを抑え込んだり尖らせたりせず、それはそれは自然に柔らかな“マル”のままでいられたんです」。
そんな相性の良さを、ひろみさんはこんな風にも表現します。
「彼と出会い、そして家族になって得られたもの。それは『自分が解放された』という感覚でした。
“相性の良さ”という言葉を漠然と使っていたけれど……今振り返って言語化すると、この感覚こそが“相性がいい”ということなんだと思います」。
まさに、かつて自身の背中を押してくれたあの新聞記事の通り。ひろみさんとAさんがそれぞれのままで、互いの人生経験や価値観を共有していく日々が始まりました。
▶つづきの【後編】『「母親ではない私だから…」焦らず、見守り、理解しながら。「3世代ステップファミリー」の心地よいカタチを探し続ける』では、関係性の構築のための苦労・いい具合の距離感づくり・育児などの未経験を補うために心がけたこと等についてお届けします。__▶▶▶▶▶
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