秋の入り口には「白い食材」というけれど、白ければ何でもOKというわけではなく…?【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
OTONA SALONE / 2024年10月13日 11時0分
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
私は研究開発部に属し、さまざまな商品に携わってきました。その過程で、たとえば漢方原料が土地土地で少しずつ性質を変えること、四季のうちでも変わることを知り、やがて人間の心身そのものが気候風土に大きく影響を受けていることに深い興味を持つようになりました。中医学を学び、国際薬膳調理師の資格も獲得、いまもまた新たな活動を続けています。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
コホンといったら、もう「肺」の気が上がっています
咳はどうして出るのか。西洋医学ならば喉から気管支にかけての炎症と説明されると思います。いっぽう中医学では、「肺の気が上がっている」と捉えます。肺の機能は肝の機能との連携関係があり、肺の気は降りていることが正常とイメージします。肺が少し良くない状態になると、肺の気が降りずに上がってしまい…結果、コホンとなっていると考えます。
ここで大事なのが、コホンの状態の肺は「少し良くない状態」になっているということです。肺は「潤っていると心地よい」という性質があるので、外気が少し乾燥し始めただけでも翌朝にはコホンとなったりします。秋の空気はいつ乾燥が進むかわかりにくいですよね。今の時期はまだ乾燥がそこまで進んでいないので、外気が乾燥する前の対策として、肺を潤わせておくことが大切です。
では、潤いとはどんな食材を摂ってケアすると良いのか。「秋は白い食材」がおすすめとよく言われます。例えば白きくらげ、大根、はちみつ。これらの食材は身体の中のどこでどんな働きをしてくれるか…というと、肺の経絡に入って潤いを生み出してくれる働きをします。豆腐は大腸で潤いを生み出す働きをしてくれます。肺と大腸は表裏関係なので、大腸のケアは肺にとっても嬉しいケアとなります。結果的に、これらの食材を俯瞰して見ると…みんな“白い”。秋は肺・大腸を潤してくれる白い食材がおすすめなので、「秋は白い食材」と言われます。
体を潤すための白い食材を取り入れたいが、白ければ何でもいいわけではなくて…?
白きくらげ、大根、豆腐の中で、おすすめのトップバッターは白きくらげです。最近ではスーパーの乾物コーナーで目にすることが多くなって嬉しい限りです! 乾燥した状態で売られているので、重くもなく気軽に購入いただけると思います。身体の中で水分を生み出して、肺・大腸を潤す優れモノですので1番手とさせていただきました。豆腐ハンバーグに白きくらげソースという、白い食材をWで使ってみました。ハンバーグのたねの半分を豆腐にしたうえで、細かく刻んだ白きくらげをソースに混ぜ込みました。白きくらげの食感を楽しみながらソースとハンバーグを味わう…おすすめです!
もうひとつ、おすすめの白きくらげレシピが、白きくらげのはちみつ漬け。白きくらげは30秒から1分湯通しをして、冷蔵庫ではちみつといっしょに2~3時間寝かせます。こりこりとした食感が嬉しい、この時期におすすめの満足度の高いスイーツです。今回は上にクコの実を乗せて、シャインマスカット、さつまいもを合せました。さつまいもはゆでて、白きくらげと一緒にはちみつ漬けにしました。さつまいもは腎を補う「補腎」の働きをしてくれるので、呼吸のパートナーである「腎」にとって頼もしい存在ですし、腎を補うことが出来るのは更年期対策としてもおすすめです。なにより、甘くて美味しいというところが嬉しい食材です。
大根はさっと干してから使うと甘みがぐんと増します
さらに、この時期おすすめの白い食材は大根。山芋などもそうですが、1日天日干しをするだけで水分が抜けて甘みが増します。TOP画像のように厚さ5ミリ程度にスライスして朝から干し始めて、夜ごはんの食材として使います。切り干し大根のように完全に水分が抜けきるまでは至らないので保存食にはなりませんが、大根の自然の甘みが凝縮されるので、スープに入れたりおかゆに入れたりと活躍の場が増えます。丸1日干すのは少し手間かもしれませんが、手間をかけた分の幸せを甘味から感じられます。食が進まない時は大根を生で食べるのがおすすめです。大根おろしは消化を促進してくれるので、食べたモノを胃・小腸・大腸へと降ろしてくれます。結果的に大腸の働きが良くなると、表裏関係の肺のコンディションにも良い影響があらわれます。
はちみつの見た目は透明なのですが、中医学では「白色」と捉えています。「白露」の暦を説明した際に「透明のしずくを白色と表現するところに風情を感じる」と申し上げたのですが、通ずるところがあるのかもしれませんね。はちみつと乾燥と言えば、北京ダックを思い出します。北京の緯度は日本の秋田県・岩手県とほぼ同じですが、内陸のため基本的に乾燥しているそうです。北京ダックは丸鶏にはちみつを使った飴を何度もかけてコーティングするのですが、秋の乾燥ではちみつ飴が乾きやすくなると何度も塗り重ねやすくなるそうです。空気の乾燥の度合いが深くなるほど、はちみつが塗り付けやすくなって北京ダックが美味しくなる。しかも身体に入ったはちみつは身体を潤す働きをしてくれます。乾燥が深くなるという身体にとって少し不利なことを、逆手に取って身体に有益な工夫にしている北京ダック。「自然を理解しながら自然に負けない先人の工夫」のことを思い出しては、いつも感心しています。
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