今でいうなら、ききょうはキラキラした「インスタグラマー」、まひろは本音ぶちまけ「X民」だった⁉ 【NHK大河『光る君へ』#38】
OTONA SALONE / 2024年10月7日 16時30分
*TOP画像/まひろ(吉高由里子) ききょう(ファーストサマーウイカ) 大河ドラマ「光る君へ」 38話(10月6日放送)より(C)NHK
平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第38話が10月6日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
ききょうは光る君の物語を賞賛しつつも…まひろとは作家として分かり合えない!?
ききょう(ファーストサマーウイカ)はまひろが書いた物語について「帝は そなたの「枕草子」を破れるほどお読みになっておったのに 今は その者の物語をいたくお好みだそうだ」と、伊周(三浦翔平)から心が不穏になる言葉を告げられたことがありました。ききょうは伊周にまひろ(吉高由里子)が書いた物語を自分も読みたいと申し出て、この物語を手に取ることに。
敦康親王(渡邉櫂)の様子を見に内裏を訪れたききょうはまひろに会い、光る君の物語の感想をストレートに告げます。
「光る君の物語読みました。引き込まれました! あんなことを お一人で じっとりとお考えになっていたのかと思うと たまげましたわ。 まひろ様は まことに根がお暗い」
ききょうは多くの貴族たちと同様に光る君の物語に引き込まれ、この物語に投影されている“暗さ”にも気付いています。
ききょう自身も宮中ではつらいことが多々あり、気を落とし、考えを巡らせていたことも少なくないはず…。今だって、定子の件でふさぎ込むこともあるように思います。それでも、まひろにはじっとりと考えていたとはたまげたと伝えています。
まひろは「ハハハ…。根が暗いのは わきまえております」と答え、彼女は根の暗さも個性の1つとして受け止めているようです。「瑕こそ 人をその人たらしめるものにございますれば」と思いを口にしていたこともありますが、まひろにとって心の暗い部分は誰しも持ち合わせているものであり恥じるものではないのです。
ふたりのやりとりが作品論で終わるのかと思いきや、まひろの「ききょう様のように 才気あふれる楽しい方が藤壺にいらしたら もっと華やかになりますのに」という何気ない一言が波風を立てました。ききょうは定子(高畑充希)の身内を支えるために生きていること、まひろに腹を立てていて、源氏の物語を恨んでいることをまひろに伝えます。
史実においても紫式部は清少納言と文学に対する考えが相容れなかった
清少納言は『枕草子』において自分が気に入ったものを綴っています。例えば、「あてなるもの(上品なもの)」には「甘い汁をかけたかき氷」「雪のかかった梅の花」などが書かれています。これらの記述はInstagramのオシャレ女子の投稿と似通う部分があると思います。こうした投稿に「自分もそう思う!」「うわあ。ステキだよね!」と共感はできますが、つらいときに心の慰めになるものではありません。また、紫式部は清少納言が自慢話を書いているとも批判していますが、Instagramにおいても「あのユーザー、また自慢してるよ」と思うことってありますよね。
紫式部の清少納言への批判は「軽薄な人」「風流ぶっている人は本当につまらないときも、感動しているように振る舞うから自然と不誠実な態度になる」といったもので、考えの浅さや真実味に欠けていることを指摘するものが多くあります。世の中や人間を深く観察する中でこの世界は美しいだけではないことを知った紫式部にとって、清少納言のキラキラとした世界観はどこか違和感を覚えるものだったのかもしれません。
現代でいえば、紫式部はX(旧:Twitter)に本音をぶちまけるタイプ、清少納言はInstagramの自身の投稿ページに華やかな世界観を創り上げるタイプといえるのかも。
>次のページ:伊周は道長に対する怒りや嫉妬を「呪詛」で晴らそうと……。
伊周の苦しみは限界に。呪詛に頼る伊周
本放送では、ライバルともいえる相手に怒りをぶつけているのはききょうだけではありません。伊周は道長に対する怒りや嫉妬に限界がきたよう…。
内裏では敦成親王のご寝所の下から呪詛の道具が見つかり騒ぎになります。
行成(渡辺大知)の調査の結果、呪詛を依頼したのは伊周の縁者であり、円能という僧がかかわっていることが分かりました。伊周と敵対する者を排除するために行われたのだそう。道長らは呪詛にかかわったものをどのように罰するべきか話し合いますが、厳しい罰を要求する者も多くいました。伊周については参内停止となりました。
伊周が自ら呪詛を行うシーンもありましたが、その姿は気がふれているといっても過言ではなく、鬼気迫るものでした。
自分の力は衰えていく一方、ライバルが成功の道を威勢よく歩く姿によい気はしないのが人間というものでしょう。また、伊周は道隆(井浦新)の嫡男で、才色兼備の自信家ですが、彼にもダークサイドがあり、麗しい顔の下では怒りや嫉妬、挫折感などがうずまいています。
伊周は自分の心をコントロールすることがもはやできなくなり、道長の前で怒りをぶつけ、呪いの言葉を口にしました。伊周は呪いの言葉をつぶやくことで道長を蹴落とそうとするだけでなく、自分の心を落ち着かせようとしているようにも見えました。
権力を得るために神経をすり減らし、身も心も疲れ果てた伊周の姿は、当時における権力闘争の厳しさを物語っているといえます。すべてを懸けてねらってきたものを手にできなかったとき、人間は正気を保ち続けられるのでしょうか……。
▶つづきの【後編】では、平安時代の名づけ事情についてお届けします。__▶▶▶▶▶
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