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「いつまで勉強するの?このままじゃ死ぬわよ」64歳でやっと執念の「アクティブ・カラーセラピー」を開発、夢の単著も手掛けた

OTONA SALONE / 2024年12月14日 20時31分

アクティブ・カラーセラピー協会代表の吉原峰子さんからは、80歳が目前とは思えないエネルギーを受け取ります。アクティブ・カラーセラピーとは、12色のカラードットを使って自分の心の声を引き出す、峰子さんが独自に開発した手法のこと。協会の認定セラピストは約200名にのぼるといいます。

 

40代で種を蒔き、50代は働き盛り、60代で蒔いた種が実り、70代には自著まで出版したという峰子さんに、その半生を語っていただきました。

 

前編『 「あなたはあなたのままでいい」色を通じて伝えたい。やりたいことゼロだった専業主婦が、44歳で自分を突き動かす信念に出会うまで』に続く後編です。

 

聞いていないのになぜ? プライベートサロンでの不思議な出来事

峰子さんの評判は口コミで広がり、県外からも仕事の依頼がくるようになりました。そして47歳の時、クライアントから「熊本にカラー診断をできるところがないのでお店を開きませんか?」と誘われ、自分のサロンを開くことになったのです。

 

「必要とされているならと思って、一等地のマンションの最上階の部屋を借りて、壁一面を鏡ばりにして意気揚々と開店したんです。けれども、1ヶ月経ってもお客さまがまったく来ないんです。ショックで呆然としてしまいました」

 

慌てて何十万もかけて新聞広告を出しましたが、来たのはたった一人だけだったそう。

 

「貸衣装店なら需要があるかもしれないと営業もしてみましたが、『必要ない』と断られて一度で心が折れました。嫌なことは忘れてしまうタイプなので、明確な金額は思い出せませんが、毎日息をしているだけでこんなにお金がかかるんだと、愕然としたことは覚えています。途中で熊本のローカル局やNHKでも取り上げていただけて、少しお客さまが増えましたが、高額な家賃と経費は補えなくて。結局2年で閉店したんです。経営は向いていないと痛感しました」

 

ビジネスとしては残念な結果に終わりましたが、峰子さんはこのサロンで、アクティブ・カラーセラピーへ繋がる気づきを得ることになります。

 

「お客さまの首元にカラードレープを当てていると、何人ものお客さまが『話すつもりはなかったのですが、実は離婚して』『朝元気に出勤した夫が亡くなって』と、ポロポロと話し始めるんです。私の方から個人的なことは、一切聞いていないのに」

 

「もしかしたら、色自体に人の心をオープンにする何かがあるのかもしれない」サロンを閉めた後も、この考えがずっと峰子さんの頭から離れませんでした。

 

「このままじゃ死ぬわよ」10年間の学びを経て、64歳でアクティブ・カラーセラピー開発へ

50代に突入した峰子さん。幸運なことに知人の紹介から、福岡の資格取得学校と熊本の美容専門学校で講師として働き始めます。

 

「子どもを学校に送り出した後、車で1時間半から2時間かけて職場に着く。6時間ほど講義した後、運転して帰ってきて家事をする。そんな生活を週6日、忙しい時は10日間休みなしでしていました。でも全く疲れたと思ったことがなかったんです。趣味で習っていた水泳で体力がついたこともありますが、やはり必要とされていることが嬉しかったのかもしれません。50代が一番元気で働き盛りだったわね」

 

しかも驚くことに、色彩心理やカラーセラピー、心理学を学ぶため、日本各地のセミナーや勉強会にも足を運んでいたのです。

 

「熊本のサロンでの体験が、ずっと忘れられなかったんです。色がどのように人の心理に影響するのか、とにかく確かめたくて。でも、いくら勉強しても、しっくりくる答えに辿りつかないんですよ。一般的な色彩心理では、色に固定的な意味を割り当てます。例えば、青色なら『冷静』『信頼』『安定』といったように。けれども、実際には同じ青色を見ても、海を連想してワクワクする人もいれば、寒さを感じて不快に思う人もいるでしょう? 感じ方は人それぞれなのに『選んだ色からあなたの状態を考えると…』と、固定の意味を押しつけるのが正しいとは思えなかったんです」

 

一律の解釈では、きっと個々の本当の感情や状態に当てはめるのは難しい。それならどうすればいいのだろうと不安を抱え続け、気づけば10年勉強し続けていたといいます。そんなある日、ずっと峰子さんの活動を見守っていた親友から「いつまで勉強するの? このままじゃ死ぬわよ」と指摘され、峰子さんはハッと目が覚めました。

 

「私、もう64歳になっていたんです。確かにいつ死んでもおかしくない、このまま答えに辿りつかないまま死ぬかもしれないと焦りました。手当たり次第勉強するのは一切やめて、立ち止まって考えてみたんです。一体何がこんなに不安なのか。私が恐れていたのは、人に答えを与えることでした。それなら、その人自身に答えを出してもらえばいいんじゃないかと、ふと閃いたんです」

 

色を通じて人の深層心理を引き出す新しいアプローチに辿り着いた峰子さん。多くの人にこの手法を試してデータを集めました。そして、心理学の専門家から「投影法を応用したセラピーですね」とお墨付きをもらい、本格的にこのメソッドを広めていくことに決めたのです。数年前に法人化し、大手企業との取引が増えていた時期でしたが、カラーアナリストの仕事を手放すことに一切迷いはなかったといいます。

 

「アクティブ・カラーセラピーでは、色を通して自分の心の声、潜在意識下にある言葉が自然と出てきます。セラピストがその言葉を復唱することで、自分の言葉を客観的に聞ける。今まで悩みの一側面しか見えていなかったのに、あらゆる角度から俯瞰して見られるようになる。自分の言葉だから、ポジティブなものでもネガティブなものでも、誰のせいにもせず受け入れられる。カラー診断やカラーセラピーとは異なり、自分からでてきたものだからブレがない。これなら『あなたはあなたのままでいい』と、迷いなく伝えられると確信しました」

 

こうして、峰子さんが64歳の時に『アクティブ・カラーセラピー』が誕生したのです。

アクティブ・カラーセラピーで使用する「カラードット」。特注の12色の丸いアクリル製カードです。ご年配の方でも小さな子どもでも手に取りやすいように、手のひらサイズにしたのだとか。

67歳からの挑戦。死ぬ前に叶えたい出版の夢

峰子さんは、アクティブ・カラーセラピーを後世に残したいという想いから、同時に『アクティブ・カラーセラピー協会』を設立。熊本の貸し会議室で、認定セラピストの養成講座を始めました。

 

「1、2回目は、仕事関係の知り合いが来てくれて20名ほど。3回目以降は、カラーアナリスト時代の生徒や、外部講師を勤めていた学校の生徒も受講してくれるようになって。徐々に受講者が増えていって、途切れることはなかったんです。今までのご縁に本当に感謝しました」

 

さらに、自分が生きている間にどうにか形として残そうと、Facebookやブログでの発信も開始。すると、67歳の時、親友から「峰子さん、これは本にできる内容よ」と驚くような一言が。峰子さんは「その手があった!」と、すぐに知り合いの著者や紹介された編集者を尋ね、出版する方法を探しました。けれども、期待とは裏腹に「色に関する本は需要がないから」と、3年かけてもどこからも前向きな返事がもらえなかったといいます。

 

「もちろん、毎回ショックで落ち込みました。でも、不思議と次の日には前向きな気持ちになっていて、一度も諦めようなんて思わなかったの。今思えば、アクティブ・カラーセラピーを必要としている人は世の中に絶対にいるという、アクティブ・カラーセラピーへの自信があったのかもしれません」

 

そんな峰子さんに、思わぬチャンスが訪れます。Facebookを見ていると、とある出版社の『本気で著者になる出版ゼミ』という広告が流れてきたのです。峰子さんは、募集要項を読み終えるや否や、応募ボタンをクリックしていました。

 

「頭で考えるより体が反応してたわね。読み始めて応募ボタンを押すまで、1分もかからなかったと思います」

 

緊張で震えていた出版ゼミでの出会いをきっかけに、72歳で著書出版!

出版ゼミの場所は東京で全3回の土日開催。毎回編集者の講演後に、受講生が出版企画を3分間プレゼンします。初回はパソコンが必要だったため、峰子さんは自宅から有線のデスクトップパソコンを抱えて家を出ました。高速バスや飛行機を使い、4時間かけて会場に着いたといいます。

 

「周りの参加者を見渡すと、30代から上でも50代半ばくらい。明らかに70歳の私が最年長でした。しかも、ベストセラー作家の方や伝説のCAと呼ばれた方など、みなさん魅力的な方ばかり。さらに、プレゼンもお上手なの。私は初日のプレゼンから、緊張で声も足も震えが止まらなくて。とんでもない場違いな場所に来てしまった、早く帰りたいと泣きそうな気持ちでいっぱいでした」

 

帰宅してからも、上手くできない自分への失望と恥ずかしさが消えません。もう参加したくないという思いは、日に日に強くなるばかり。そんな峰子さんを救ったのは、アクティブ・カラーセラピーで出てきた自分自身の言葉でした。

 

「次の講座の開催が目前に迫っても、どうしても怖くて参加する気持ちになれなくて。そんな時、ふとアクティブ・カラーセラピーのセルフセラピーをやってみたんです。私が選んだのは、白。 その白を見つめて自分が口にした答えは『できない自分を認める』でした。その瞬間、できないからこそ受講する意味があるんじゃないって、覚悟が決まったんです」

 

その後、峰子さんは一度も欠席せずにプレゼンに取り組みました。ところが残念なことに、峰子さんの企画は選ばれなかったそうです。ここでの出版はあきらめて、峰子さんが懇親会場に向かおうとした時でした。なんと、同じ班で学び、親しくなっていたライターから声がかかったのです。しかし、すぐに出版社で企画が通り…とは、案の定いきませんでした。アクティブ・セラピーを受けた編集者からは好評でも、企画会議に持ち込まれると「色は売れないから」とはねられてしまうのです。

 

「でも、不思議といつかは企画が通るはずと、後ろ向きな気持ちには一度もなりませんでした。何人もの編集者の方にアクティブ・カラーセラピー自体は気に入っていただけていたからです。アクティブカラー・セラピーへの自信は高まっていくばかりでしたし、何よりライターさんが一緒にあきらめずにいてくれたことが大きかったです」

 

さまざまな出版社に企画を持ち込み続けて約1年後、ようやく企画が通ったといいます「峰子さん、企画が通りました!」と報告してくれる電話越しにライターさんもボロボロに泣いているのがわかって、もう涙が止まらなかったそう。本を出したいと思い立って5年後の2017年。峰子さんが72歳の時に、念願の本が出版されたのです。

出版記念パーティーでの集合写真。中央の赤いドレスを着てピースをしている女性が峰子さん。

「本をきっかけに全国から講座に申し込んでくれる人が増えたんですよ。今では、オーストラリアにも認定セラピストがいます。2019年には台湾版が出版されて、韓国からも翻訳のオファーがきているんです。少しずつですが着実に、アクティブ・カラーセラピーが国を超えて広がっているように思います」

 

努力ではない。好きだから死ぬまでやり続けたい

アクティブ・カラーセラピーは、2024年で15周年を迎えます。44歳でカラーアナリストとなり、50代から10年にわたり学びを深め、64歳で自ら新しいメソッドを作り上げ、来年80歳になるにも関わらず、今もなお現役で活動し続けている峰子さん。どうしてそこまで努力し続けられるのかと伺うと、「努力じゃないのよ」と意外な答えが返ってきました。

 

「元々趣味もろくに続かないくらい飽きっぽい。努力家じゃないから、気が向かないことは頑張れない。でも努力家じゃなくても、好きなことなら放っておいてもどんどん前に進むんです」

 

峰子さんは、今まで少なくとも2,000人以上のお客さまと向き合ってきました。しかし、同じコースで同じ色を選んでも、同じ答えにたどり着いた人は誰一人としていません。峰子さんにとって、アクティブカラー・セラピーで最も喜びを感じる瞬間は、その人が自分自身の答えを見出す時だそうです。

 

「毎回ね、目が開かれるような思いで心が震えるの。自分が紡ぎ出す答えは、自分だけにしかない、この世で唯一無二のもの。誰とも被らないその違いに、私はその人がこの世に生まれた意義や価値があると感じるんです。自分の本音と向き合い、どこかホッと安心したような表情を浮かべるお客さまを見ると、私まで幸せになるんです」

 

峰子さんは前のめりになり、熱がこもった声で続けます。

 

「やればやるほど奥が深くて楽しい。私の人生が豊かになっていく。やらなきゃと思っているわけではなくて、ただ好きでやりたいだけなの。だから、努力しているつもりもないし、覚悟して頑張っているわけでもないんです。アクティブ・カラーセラピーは、色の神様から『これはジェンダーや年齢、国籍、思想、宗教、価値観に関係なく、みんなの役に立つもの。だから、あなたが独り占めしないで、みんなに渡していってあげてね』と預かったもの。これからも息が続く限り、必要としている方へ渡し続けたいと思っています」

 

15周年パーティーで登壇する峰子さん。パーティーには、峰子さんの2、30年来の友人や知人、峰子さんの著書をきっかけにセラピストの勉強をした人もいたそうです。

気が向くか向かないか。アンテナを磨き続ければ、やり続けたいことに結びつく

周りから『努力し続けていてすごい』と見える人でも、実際は『好きなことだからやり続けているだけ』なのかもしれません。そして、人はそれを見つけると、人生が豊かになって輝きを増すのかもしれません。

 

では、どうしたら『心から好きでやり続けたいこと』を見つけられるのでしょうか。峰子さんは「アクティブ・カラーセラピーを受けていただくのが一番だけれど…」と一呼吸置いてから、「気が向いた時の自分を無視しないことが、第一歩になるんじゃないかしら」と話してくれました。

 

「私は、一切迷わないで『やりたい』『行きたい』って思った時は、そのまま行動してしまうんです。考える間もなく体が反応する時ね。例えば、カラーアナリストになった時とか、出版ゼミの応募ボタンをクリックした時とか。そうやって行動に移した時は、最終的にうまくいく。いい方向に、満足のいく結果につながるんです」

 

そして、誤解しないでほしいのは、それは重くて揺るぎないものでは決してないことだといいます。

 

「『お金が…』『時間が…』『体力が…』『家族が…』って、理由をつけて軽視されがちなんだけれど、気が向く瞬間こそ大切にしてほしいと思うんです。それは、自分で気づいていない本当の興味や好きなこと、本音に繋がっているはずだから。いろんな事情ですぐに行動できなくても大丈夫。心に留めておいたり、手帳や日記に書いておくだけでもいいの。それを続ければ、必ず好きでどうしてもやり続けたいことに近づくはず。だってあなたのアンテナが、ずっと伸び続けてそれを探し続けているんだから」

 

「書くのは苦手。でも、著書発売後も進化し続けているアクティブ・カラーセラピーを文章として残したい。上手く書けるようになりたい」と、78歳でライティングゼミへ。写真はゼミの卒業式の日のもの。峰子さんの挑戦はまだまだ続きます。

最後、峰子さんは80年近い自分の過去を振り返り、生き生きとしたチャーミングな表情で「後悔は全くないわね」と伝えてくれました。

 

つづき>>> 「あなたはあなたのままでいい」色を通じて伝えたい。やりたいことゼロだった専業主婦が、44歳で自分を突き動かす信念に出会うまで

 

・プロフィール

吉岡 峰子

アクティブ・カラーセラピーの創設者。1945年生まれの79歳。福岡県出身・在住。1989年にイメージ&カラーアナリスト・米国資格を取得。1999年から10年間にわたり、色彩心理や各種カラーセラピーなどを学ぶ。2009年に「アクティブ・カラーセラピー」を開発。現在は認定セラピストを育成しながら、自らもセッションを行う。著書に「12色セラピーで悩みがすっと消える」(主婦の友社より刊行)がある。

アクティブ・カラーセラピー協会 公式サイト https://www.active-colortherapy.com/

 

取材・文/鈴木まゐ

 

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