「家計に関わる重要な決断をひとりで行ってしまう」「家計の問題に関して、自分の考えが絶対だと信じ込む」「無謀な転職や退職も相談せずに進めてしまう」など……。これらは、モラハラの特徴です。
今回は夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香が、夫の突然の「ラーメン屋開業」、そしてモラハラによって家族の生活が大きく崩れてしまったというTさん(40代、結婚12年目、首都圏在住)にお話を伺いました。【後編】です。
※個人が特定できないように設定を変えてあります
「心身ともに限界」そんなときに発覚した夫の裏切り
身を削って夫のラーメン屋を手伝う日々。そんな中、夫の信じがたい行動が発覚しました。
「夫は風俗に通っていたのです。それを知ったとき、私の心は粉々に砕け散りました。私が家計を支え、ラーメン屋を手伝い、毎日疲れ果てて帰宅している間に、夫は自分の『ストレス解消』のためにと、私を裏切り風俗にお金と時間を使っていたのです」
Tさんの夫は反省するどころか開き直り、悪びれる様子もありませんでした。Tさんがどれほど傷ついているかを伝えても、彼は耳を貸そうとはせず、自分がいかに疲れいてるのか、毎日頑張っているのか話をすり替えるだけでした。
モラハラ夫が話をすり替えるのは、責任回避と自分の優位性を保つためです。自分が非難されそうになると、相手の欠点や過去の出来事、自分がいかに大変な状況にあるかということに話を移し、自分を守ろうとします。また、論点をずらすことで相手を混乱させ、会話の主導権を握り続けることを目的としています。この行動は、相手の自信を揺さぶり、自分への支配を強化する心理的な戦略です。
「私は鏡に映る自分の姿を見つめました。疲れ果て、やつれた顔。もう、これ以上夫と一緒にいるのは意味がない、無理だと心の底から思いました」
Tさんはその夜、荷物をまとめ、子供たちを連れて家を出て行きました。夫には何も言わずに実行したのだそうです。話し合ったとしても理解してくれない、自分は正しいと言い続けるのが分かっていたからです。言葉を交わしても、心がすり減るだけだと感じていて、もう夫に期待することは一つもなかったそうです。
「私はもうこれ以上、自分を犠牲にする必要はないと感じます。私は、私の人生を生きたいです」
家を出たTさんは実家を頼り「少しだけ家に置いて欲しい」と母親にお願いしたそうです。
「なんでそこまで頑張っちゃたのかね。昔から責任感が強い子だったものねぇ。でも、もう自分を犠牲にする必要はないよ。これからは、自分のために生きていいんだよ」
と声をかけてもらい、その言葉に救われる思いがしたといいます。
調停でも夫はウソを付き続けた 次ページ
調停でもウソをつく夫。私は失望の先にあった光に向かって
それからTさんは、弁護士に相談し、離婚に向けて動き始めました。長年一緒に過ごしてきた夫との関係を断つことは簡単なことではありませんでしたが、ラーメン屋での怒鳴り声の記憶や、風俗に通っていたことへの失望感が、徐々に迷いを吹き飛ばしてくれました。
離婚を承諾しない夫は、「自分は家族のために頑張っていた、妻が家庭を壊した」と想像通りのウソを調停で話していたそうです。しかし辻褄が合わないことはすぐに判明し、最後には離婚を受け入れざるを得なくなりました。
自分を認めて背中を押してくれる人がいる、それがあるから離婚への勇気が持てたと思う、と語るTさん。
「これからは『自分に嘘をつかずに自分を大切にしよう』そう心に決めた私は、今までの事情と離婚について同僚たちに打ち明けました。驚きながらもみんな理解を示してくれて、私を支えてくれました。母子家庭になるとどんな試練があるのか不安でいっぱいでしたが、夫と結婚していたときのほうが体力的にも精神的にも、そして金銭的にもキツかったので拍子抜けしたような気持ちでした。今は誰に支配されることもなく、子供たちとの笑い声が絶えない家庭になりました」
もし、あなたが誰かの支配のもとで自分らしさを失い、心が悲鳴を上げているなら、勇気を持って一歩踏み出してください。モラハラの支配下にいる時間は、あなたの大切な人生の時間を奪い取ります。
あなたには、自分の人生を選び、自分の幸せを追求する権利があります。支配や恐れではなく、自由や喜びに満ちた未来を手に入れるために、小さな一歩でもいい、今日から始めてみましょう。
支配に耐え続ける人生ではなく、自分自身を大切にする人生を。自分のために決断し、自分のために生きること、それが本当の幸せへの第一歩です。
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