ウガンダ、難民キャンプの現実 【サヘル・ローズ×リアルワールド】
OVO [オーヴォ] / 2024年4月21日 10時0分
太陽が照りつけるアフリカのウガンダを訪問しました。日本でも報道された南スーダンやコンゴ(旧ザイール)の紛争から逃れてきた150万人以上の難民となってしまった人々がどのような環境下で生活をしているのかを知るためでした。
首都カンパラから車で4時間半かけてたどり着いたのがホイマ。そこから1時間半、車で移動。途中に道なき道を走るため何回も顔を車窓に打ちつけ、やっと支援先のチャングワリ難民居住地に着きました。これまで至る所の難民キャンプを訪れていますが、今回のキャンプ地には絶句しました。広さは東京ドーム約1940個分。現在は主にコンゴから逃れてきた難民約13万人が暮らしているというのです。
決して豊かではないのは誰が見ても分かります。水道もない、電気もない。でも「ない」と言って立ち止まっている人たちではなく、あるもので生活をしていたのが、なんとも言えない現実でした。傷だらけの脚、ぼろぼろの服。チャックがなく何も入っていないバッグをいとおしく背負い、私たちへ「How are you?」と同じ言葉をひたすら投げかけます。
学校に通う子どもたちは日本でいう小学校低学年の子が多いのですが、3年生からだんだんと減っていきます。特に女子は8割近くが退学します。理由を尋ねると、家事のお手伝いをするのは基本的に女子で、人によっては早く結婚し家を離れます。他の難民キャンプ同様に課題なのは生理用品の不足。女子は生理になれば、学校を休まざるを得ないのです。ナプキンがないので仕方がありません。休んだ分だけ、どんどん授業に遅れていき、そして退学してしまうケースもあります。その親と同じ道をたどってしまっているのです。まさに負の連鎖です。ご飯を2日間食べていない子もいました。何よりも安全な状況ではありません。学んだところで大人になった子どもたちを生かせる場所ではないのです。祖国に帰ったとしても殺される恐れがあり、ここで生きていくしかないのです。
あちこちで戦争や紛争が起きている世界から自分たちは見放されている、忘れられている現実を彼らは痛いほど分かっています。親は教育をわが子に与えたい、将来自立するためには必要不可欠だということも分かってはいます。でも、ノートも鉛筆も買えない、衣類も買ってあげられない現実があるのです。電気のない教室では、3人がけのテーブルに5、6人が座っていました。子どもたちの夢は「家族を幸せにすること」です。
その親たちの中でも、働き者の女性がとても多いことに驚きました。朝早くから川で洋服を洗い、畑を耕し水くみをします。お店を構える親もいます。できることを全力で行い、物乞いではなく働くことを誰一人諦めていなかったのです。それを感じさせられたのが難民居住地内の市場です。もちろん、難民となった人々が生きるために、できる技術を最大限に生かして店を出しています。パイナップルやバナナ、トウモロコシの販売から、仕立て屋さんまで。外から仕入れた洋服や靴、日用品を扱うさまざまな商店が並んでいます。入り口のゲートと看板がなければ、正直、ここが難民居住地とは思えないほどです。それをいいと思うか、それを危機感として捉えるか? また、次回。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 16からの転載】
サヘル・ローズ/俳優・タレント・人権活動家。1985年イラン生まれ。幼少時代は孤児院で生活し、8歳で養母とともに来日。2020年にアメリカで国際人権活動家賞を受賞。
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