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「やってみなはれ」を全ての人に。サントリーがパラスポーツを10年以上支え続けてきたワケ

パラサポWEB / 2024年9月13日 7時30分

「私たちの活動の先で、社会や人がどのように変わっていくのか。その姿しか考えていません」

近年認知度が高まり、より身近になってきたパラスポーツ。サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)は、東日本大震災を出発点に、10年以上に渡ってパラスポーツに関わり、さまざまな支援活動を行ってきました。なぜ、パラスポーツを支え続けるのか。スポーツ、企業、人のつながりがもたらす、大きな可能性が見えてきます。

東日本大震災の復興支援からスタート

サントリーのパラスポーツへの支援は、『チャレンジド・スポーツ プロジェクト』として10年前の2014年からスタート。きっかけは、2011年に発生した東日本大震災の復興支援プロジェクトでした。その発端について、サントリーホールディングス株式会社のCSR推進部部長の橋爪崇さんはこう語ります。

「私たちの活動は企業理念に基づいて、いかにして社会に貢献するか。サントリーは100年以上前から生活困窮者へ無料診療を行う診療院を設立するなど、みんなでいっしょに立ち上がろうという思いで活動してきました。苦しんでいる方がいるのであれば、社会の一員としての役割・責任を果たしていかなければいけないと常に考えています。そういった意識のもと、復興支援から活動がスタートしました」(橋爪さん)

『サントリー東北サンさんプロジェクト』を端緒とするサントリーのパラスポーツ支援。同社社員の谷真海選手(写真右から2人目)の思いも込められています

2014年以来、当初はパラアスリートへの奨励金、車いすバスケットボールの体験会、競技用具の寄付・寄贈などの支援を、東北3県(岩手・宮城・福島)を中心に行ってきましたが、2022年秋からは活動を全国展開。サポートしてきた選手たちの活躍、そして同社社員であるパラアスリートの谷真海選手の存在が、プロジェクトを全国へと広げる契機の一つとなりました。

「谷は2004年に一般社員として弊社に入社し、その後トップアスリートとして活動していくことになりました。谷が競技を本格的にスタートすることになり、そのサポートをするにあたって障がいを持つ方が日常的にスポーツに取り組むことは相当なハードルがあることに気づかされました。谷は気仙沼出身ということもあり、東北3県での活動も一緒に取り組んでいます。また、活動していくなかで東北のみならず、全国の選手を応援することが世の中全体にとって必要だという考えにも至りました」(橋爪さん)

現在では、『サントリー チャレンジド・スポーツ アスリート奨励金』、小・中学生を対象にした車いすバスケットボール教室『ドリームアスリート』、大学生と共創する『パラスポデザインカレッジ』、そして医療・福祉系の大学生を対象にした『車いす操作スキル講習会』の4つに重点を置いて活動しています。

サントリーホールディングス株式会社CSR推進部の橋爪崇さん(右)、宮治河奈さん(左)

なぜ、パラスポーツを支援するのか。サントリーホールディングス株式会社CSR推進部の橋爪さん、宮治さんは、その目的をこのように語ります。

「ダイバーシティ社会の実現を一番の目標にしています。様々な方々が生活している社会の中で誰もが挑戦し、活躍できる機会を獲得できるように、そのきっかけをパラスポーツの力によって作っていければと思っています」(宮治さん)

「今、宮治がお伝えしたことが究極のゴールです。我々のような企業が地域の活動に色々な形で関わり、ともに取り組むことで地域社会が豊かになればスポーツ環境も豊かになる。それがひいては日本全体が豊かになり、最終的に共生社会の実現に繋がるのかなと思っています。チャレンジド・スポーツの活動を通じた共生社会の実現をゴールに置いて、しっかりとやっていきたいなと思っています」(橋爪さん)

大切にしている「現場に行く」こと

サントリーがパラスポーツとの関わりの中で最も大事にしているのは「現場に行く」こと。この姿勢は、サントリーが活動を始めてから、ずっと変わっていないそうです。

「以前お会いしたときに(結果が出ず)悔しい思いをしていたある選手が、次お会いしたときに自己ベストが出たと涙ながらに教えてくださった姿は印象に残っています。選手を応援するだけでなく、一緒に挑戦するというのはこういうことなのだと感じました。

現場に行き、お話を聞いて初めて気づくことがやはり多いです。なので、そうした現場での生の声、ご意見を聞くということを大切にしています」(宮治さん)

宮治さん自身も入社以来、たくさんのパラスポーツの現場に足を運んできました

2014年以来東北で6期、『サントリー チャレンジド・スポーツ アスリート奨励金』として全国で行われている本奨励金は、現在のかたちとなった2023年・2024年の2年だけでも延べ154人のパラアスリートへ支給されました。サポートしている選手が出場する大会があれば応援に行きます。これまで数えきれないほど会場へ足を運び、彼らの活躍を直接目の当たりにし、応援してきました。

こうした活動を行ってきたのは、「ともに挑戦しよう」という意識によるもの。奨励金の支給はあくまできっかけづくりであり、奨励金を活用した選手を応援し支える人たちが増えることで、その地域にパラスポーツが広く根付いていくこと。それが大切だと語ります。だからこそ、広く、多くの人と関わりながらも、その一人ひとりにしっかりとまなざしを向けることを忘れません。

「会いに行くのが本当に楽しみで。何気ない日常会話の中からでも、何か気づけることがあればと思っています。

地域でパラスポーツが根付いていくためにアスリート奨励金を始めたので、その当事者である選手、周りで支えるコーチ、障がい者スポーツ協会の方などその地域で関わってらっしゃる人たちが集まる現場に行くことに一番の意義がある。我々はきっかけづくりしかできませんが、そうして応援の輪が広がっていくことをゴールに活動しています。そして、その起点はやはり現場なのです」(橋爪さん)

大学生と「共に創る」、若者世代へのパラスポーツ発信

パラアスリートや地域の方々と深い関係を築き、支えてきた一方で、新しいチャレンジも続けています。そのひとつが、大学生と共創する『パラスポデザインカレッジ(以下、PDC)』です。

「弊社が10年前から『チャレンジド・スポーツ プロジェクト』の取り組みを進めてきて、ある程度、活動の基盤は出来上がってきました。その中で、パラスポーツのことをもっと世の中に伝えたいという思いが出てきて、誰に重点的に伝えた方がいいのかというと、それはやはり次世代を担う方たちだろうと考えました。そうした経緯で大学生の方々と一緒に取り組もうと立ち上げたのが、PDCです」(橋爪さん)

パラスポーツのことを知ったのは、『サントリー チャレンジド・スポーツプロジェクト』に携わるようになってからという橋爪さん。「本当に(パラスポーツは)知れば知るほど面白い、すごいなという印象です」

PDCは2021年10月にスタート。メンバーは大学生で構成されており、これまでSNSでの発信、車いすバスケットボール天皇杯でのイベントブース企画運営、大学生ならではの目線で紹介する車いすバスケットボールの選手名鑑など、若者世代の感性とスキルを活かして様々な企画にチャレンジ。この春には同世代の大学生を対象に「パラスポーツ意識調査」を実施し、その結果をコンテンツ化して発表しました。これらは大学生メンバーが自ら考えたアイデアがもとになっています。

photo by Karin Hirokawa

PDCを立ち上げるにあたって、サントリーは『共創=ともにつくる』を1つの大きなテーマとしました。

「PDCは大学生の皆さんが主体で、我々がそれを支えていくという立ち位置。このやり方は難しいこともいろいろとありますし、うまくいくとき、いかないときも当然あります。それでも、どういうふうにすれば若者世代に最も伝わるかということを考えられるのは同世代だと信じている。我々が企業としての目標や取り組みを主体にして考えてしまわないようにしています。」(橋爪さん)

「情報発信を考える中で、パラスポーツの捉え方や面白さを引き出す大学生のアイデアはすごいなと思います。また、若手選手の取材では選手と仲良くなるのが本当に早い(笑)。大学生だからこそのつなげる力、関係をつくる力が素晴らしくて、私自身も勉強させてもらっています」(宮治さん)

日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)が大学生へ実施したアンケート調査によると、パラスポーツやパラアスリートと接点があった人は、接点のなかった人に比べて、実際に障がいのある人に出会ったときに「声をかけてサポートした」人の割合が高く、自身に「共感力」「多様性がある」と回答した人の割合も高いという結果が出ています。

「私たちの活動の先で社会や人がどのように変わっていくのか。その姿しか考えていません」(橋爪さん)

サントリーがゴールとする社会の変化のためにも、将来を担う大学生にパラスポーツをより知ってもらうことは重要なのではないでしょうか。

合わせて読みたい!

日本財団パラスポーツサポートセンターによる大学生へのアンケート調査

https://www.parasapo.tokyo/topics/116324

『パラスポデザインカレッジ』メンバーによる大学生意識調査 https://www.parasapo.tokyo/topics/111856

パラスポーツとつながる「やってみなはれ」の精神

一般的に「パラスポーツ」と呼ばれる障がい者スポーツを、サントリーが自社のプロジェクトとして“チャレンジド・スポーツ”と呼ぶことには理由があります。サントリー創業者の鳥井信治郎氏が何かに挑戦する際によく口にした言葉「やってみなはれ」が由来です。この言葉は現在でも同社が大切にしている価値観であり、本プロジェクトにおける「チャレンジ=やってみなはれ」は障がいの有無に関わらず、すべての人に向けて込められた思いです。

橋爪さんは「スポーツを通した豊かな生活文化は地域で育つものであり、そこで一人ひとりの人間の生命の輝きが実現されること」こそが、チャレンジド・スポーツの意義だと語ります。サントリーが掲げるのは「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」というパーパス。企業の存在意義とパラスポーツとのつながりが感じられます。

2014年の活動開始から10年目、担当の2人がパラスポーツ支援に対して抱く思いは“ひと区切り”ではなく、ここからが“本当のスタート”。

「本当にこれからだなと思っています。活動を10年続けてきた中でも色々な気づきや課題が見つかりましたし、まだ始まったばかりで種まきの段階。これからもチャレンジド・スポーツに関わっている人、支えている人、応援している人、もちろんこれまで関わっていなかった人も含めて、輪をどんどん広げていきたい。そうして繋がったいろいろな人たちの思いをさらに広げられるように、これからも頑張っていきたいなと思っています」(宮治さん)

「チャレンジド・スポーツには大いに可能性があると思っています。我々はまだ活動して10年です。着実に仲間を増やして、ともに取り組んでいくこと。シンプルですがそれに尽きるのかなと思っています。あえて言うのならば、日本だけにとどまらず少しグローバルな視野で何かできることがないかということも今後考えていきたい」(橋爪さん)

人と社会を変えていく力を秘めたパラスポーツ。企業や人のつながりによってこれからもどんどんと発展し、新しい未来を見せてくれるのが楽しみです。

text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)

photo by Shugo Takemi

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