リオの金メダルゼロから13個に!東京パラ日本代表、飛躍の理由
パラサポWEB / 2021年12月9日 15時36分
車いすテニス・国枝慎吾の復活劇、水泳・木村敬一の涙の表彰台、そして車いすバスケットボール男子の快進撃……2021年8月24日から開催された東京2020パラリンピックの13日間を振り返るとき、脳裏に浮かぶのは“強い日本代表選手”の姿だ。
日本代表が手にしたメダルは、金13、銀15、銅23の計51個。2004年のアテネ大会に次ぐ、過去2番目の総メダル数となった。ここでは、今大会における日本代表の特徴や東京大会に向けた取り組みを振り返りたい。
パラリンピック日本代表選手団の金メダル順位の推移(シドニー2000大会~東京2020大会)
14歳で最年少メダリストとなった水泳の山田美幸 photo by Takashi Okui
東京2020パラリンピック閉幕翌日の記者会見。河合純一団長は、日本代表選手団の躍進を「多様性と調和を象徴する日本代表が全力で取り組んだ成果」と総括した。
好成績を収めた総勢254名のチームは、どんな構成だったか。
まず、選手団の年齢分布を見ると、過去大会と比べて若手、20代の選手が増加傾向だ。大会1年延期にも関わらず、平均年齢が若返ったことが見て取れる。初出場の選手も63%いた。
日本代表選手団の過去3大会における年齢分布男女別に見てみると、日本代表選手団の女性比率は、過去最大となる41.7%だった。東京大会が用意したアスリートスロット(出場枠)における女性の割合は40.5%であり、ほぼ一致していることがわかる。
東京2020パラリンピック日本代表選手団の性別割合「パラリンピックに出場できる肢体不自由、視覚障がい、知的障がいというすべての障がい種の選手が参加した。さらに、22競技にフルエントリーしたのは162の国と地域で日本だけ。最も多くの選手を送り出したのも日本であり、自国開催ならではの大きな力になった」(河合団長)
では、東京大会に向けてどのような取り組みが行われていたのか。
副団長を務めた櫻井誠一氏は、こう振り返る。
「東京大会で日本が金メダル13個の躍進を遂げた背景には、リオ大会で金メダルゼロだった反省があった。当時、水泳のサブプールや陸上のサブトラックを見学したが、メディシンボールをバンバンぶつけてオリンピックと同レベルのトレーニングをしている強豪国の姿を見て衝撃を受けた。選手の基礎的な体づくりを徹底することは、東京大会に向けて大きな課題だった」
自転車二冠の杉浦佳子は日本選手のパラリンピックでの最年長金メダリスト photo by Jun Tsukida強豪国のメダルの内訳を分析すると、陸上競技、水泳、自転車、卓球というメダル数の多い種目で活躍する選手を育て、1人の選手が複数のメダルを獲得することでメダルを量産している国も多い。
「こういった選手を育てるために、練習環境の改善、競技団体の戦略的な取り組み、トップ選手を養成するに至るパスウエイの明確化にしっかりと取り組んでいくことが必要であり、そのためにも競技団体の基盤整備が非常に大事だということに気づかされた」(櫻井副団長)
国を挙げた施策の成果も大きい。
オリ・パラ共用の練習施設「ナショナルトレーニングセンター・イースト」は2019年9月の利用開始以降、多くのトップ選手が毎日の練習や合宿で利用し、コロナ禍では貴重な活動拠点となった。
また、2016年10月にスポーツ庁が「競技力強化のための今後の支援方針(通称:鈴木プラン)」を発表したことが、メダル有望種目に強化費を重点配分することや選手発掘、女性トップアスリートへの支援強化などさまざまな取り組みを推し進める形になった。
車いすバスケットボール男子をはじめとする団体競技ではコロナ禍で成長を遂げた若手が代表の座を掴んだ photo by Hisashi Okamotoもちろん、地元開催の利点もあった。暑さやコロナ禍というストレスのある状況において、日常の延長線上で大会に臨むことができたり、ボランティア含む多くの応援を受けたりすることができたのはプラスだった。
「残念ながら無観客開催だったが、NHKを中心に過去最多の540時間以上のテレビ放送があり、多くの皆さんの目に触れた」(河合団長)
金メダル数UPのカギとなるものは?さらに、今回の成果を高めていくために、櫻井副団長は事前の金メダル予想(編集注*)と結果の差を分析し「僅差で取りこぼした種目もあれば、実際は諸外国と基礎的なフィジカル面と技術面で明らかに差がある競技もあった。さらなる分析が必要だ」と指摘する。
*共同コンサルヒアリング時における各競技団体の金メダル目標は計23個。結果は13個獲得のため10の差があった
東京2020パラリンピック金メダル順位その他、マルチメダリストを養成してスーパースターを生み出す、金メダルを獲得できる競技数を増やす 、メダルポテンシャルの高い女性選手を強化するなどの課題が挙げられた。
パラアスリートを取り巻く社会の仕組みも変化している。企業による選手のアスリート雇用は増えてきたが、コーチなどのスタッフはボランティアがベースの現状がある。櫻井副団長は「東京大会は専任制度により、コーチも選手とともに歩むことができた。まだまだ不安定なので、継続的な専任制度が必要」と力を込めた。
「せっかく盛り上がったものも何もしなければ、一過性で終わる可能性がある」とは河合団長。この勢いを3年後のパリ大会につなげられるか。
text by Asuka Senaga
key visual by Jun Tsukida
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