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廣瀬隆喜が金メダリスト杉村英孝に勝利し、日本ボッチャ選手権連覇!

パラサポWEB / 2022年1月11日 17時23分

東京2020パラリンピックで日本代表が金・銀・銅の3種類のメダルを獲得したボッチャ。その個人戦日本一を決める日本ボッチャ選手権大会が1月8日と9日の2日間、スカイホール豊田で行われた。

新型コロナウイルス感染症対策で規模を縮小して開催された今大会は、2019年12月に実施された前回大会で上位(BC1・BC4クラスはベスト4、BC2・BC3クラスはベスト8)だった精鋭のみ出場した。東京パラリンピック日本代表も9選手が出場したが、存在感を示したのは“パリ世代”だ。4つのクラスのうち、BC1は仁田原裕貴、BC3は有田正行、BC4は内⽥峻介がそれぞれ決勝で東京大会代表を破り、初優勝を飾った。

宿敵であり盟友である廣瀬と杉村

BC2クラスは、廣瀬隆喜杉村英孝が順当に駒を進めて決勝の舞台へ。東京パラリンピックの個人戦で金メダルを獲得した杉村の注目度は高まっており、生観戦に訪れたファンはもちろんのこと、テレビ中継(東海北陸圏)、インターネット中継で観戦した人たちから熱視線を注がれた。

金メダリスト杉村の決勝にたどり着くまでの戦いぶりは圧巻だった。予選の第1試合を5-1、第2試合を15-0、そして第3試合を10-0と快勝、大会2日目の準決勝も9-1で勝ち上がった。

前回はライバルの廣瀬に日本一の座を譲り、そのタイトルを取り返そうと強い気持ちで臨んだことは想像に難くない。振り返れば、東京大会前に本番を想定した壮行試合があり、杉村は廣瀬から勝利を挙げたが、試合後「日本選手権ではないので、雪辱を果たしたわけではない」とコメント。その言葉からも、前回大会で敗れた悔しさがうかがえた。

東京大会のフィーバーは一旦落ち着き、現在は以前と同じように練習できているという杉村

「日本選手権では挑戦者なので」と話した杉村は、初日を終え「2年ぶりの大会で、日本選手権独特のピリピリした空気を感じた。一戦一戦自分の調子を上げていきたい」と決勝を見据えた。

東京大会ではチーム戦で杉村と共に銅メダルを獲った廣瀬も同様に、大会の中でコートとボールの相性を確かめながら調子を上げていた。予選を全勝すると、準決勝は8-0で蛯沢文子を退け、決勝に進出した。

最多回数の日本選手権優勝を誇る廣瀬

最近では杉村か廣瀬のどちらかが優勝する結果が続いており、いやが応でも決勝でのライバル対決に注目が集まる。だが、当の廣瀬は「自分が杉村選手に勝てるとかではなく、自分の持っているものを出すだけ。日本選手権が前回から1年以上空いたので、この間にやってきたことすべて出せればと考えている」とあくまでマイペースを崩さない。

2008年北京大会からパラリンピックに4度出場し、長きに渡りボッチャ界をけん引してきた日本の第一人者。連覇のプレッシャーもかかっていたが、過去に4連覇を経験しているだけに、「とくにその重みを意識したりはしないかな」と動じず、決勝のコートに向かった。

精度を欠いた杉村と雄叫びを連発した廣瀬
予選と準決勝では圧倒的な力を見せた東京パラリンピックの金メダリスト、杉村だったが……

そして迎えた決勝戦。先攻の権利を得た廣瀬は、短めの距離に的を作ると、強弱をつけながら同じ硬さと素材の6球を投げていく。第1エンドで2得点して杉村にプレッシャーをかけた。対する杉村は第2エンドでいつもの正確なショットを決めれば逆転できる状況だったが、転がる球のズレを修正できず、1点を返すにとどまった。第3エンドは廣瀬が加点し、杉村は2点のビハインド。最終第4エンドは杉村が廣瀬のコースの裏に球を集め、廣瀬が持ち前のパワーでジャックボールを押しても得点しにくい状況を作り出す。しかし精彩を欠く杉村に対し、廣瀬は球と球の隙間を着実に埋めていき、ライバルの逆襲を許さなかった。

廣瀬といえば雄叫び。決勝では第1エンドから雄叫びが響いた

試合は5-1で終了。廣瀬は両手でガッツポーズを作って「シャー!」と叫び、連覇を喜んだ。

東京パラリンピックの個人戦では目標のメダルに届かず、悔しい思いをした廣瀬。さらに進化した姿を多くの人たちの見せたいと、2年後のパリに向けて再スタートを切ったが、新しい章の1ページ目に記すにふさわしい金メダリストからの勝利だった。

「東京大会後、徐々に調整しながらやってきた。多少のズレはあったが今大会のなかで少しずつ修正して、決勝はほぼミスなしでやることができてよかったです」

勝敗を分けたポイントは「杉村選手の正面に何球か置くことができたのが大きい」と話し、「日本一は何度も味わっているが、杉村選手と1位を争うようになってから久しぶりの連覇でうれしく思う。杉村選手は本当に強い。今回は私が優勝したが、これからどんどん日本の全体的な底上げになればいいなと思います」と最後はいつものおおらかな笑顔を見せた。

一方の杉村は「自分らしくできなかった」と首を傾げ、最後まで立て直すことのできなかった要因について「それがわかれば勝てたと思う」と悔しそうに振り返る。

「応援してくれた人たちに申し訳ない。イチから見直して、いいプレーをお見せできるようにしたいです」と言葉を振り絞って会場を後にした。

「格上」の金メダリストに勝利した廣瀬(右)。「杉村選手の金メダルで気持ちが高まった」

ところで、これまで男女混合の種目だったボッチャはパリ大会から男女別になるが、国内の女子の競技人口はまだ少ない。

東京大会のBC1クラス日本代表・藤井友里子は「東京パラリンピック開催を通して、多くの方に、ボッチャを知ってもらい、『やってみたい』という声がたくさん上がっていたのがうれしかった」と話し、「健常者プレーヤーが増えることは、自分の練習機会が増えることにもつながるので」と歓迎する。

また、精度の高いアプローチや、2021年の新語・流行語大賞にトップテン入りするなど知名度を上げた「スギムライジング」で魅了する杉村に対し、今大会の主役となった廣瀬は、ヒットでボールを散らすなど局面を大きく変えるパワーショットが武器だ。

「ボールに寄せるのがボッチャだと捉えられがちだが、(空中でボールを動かす)ロビングなどいろいろな技術があるというのを発信していきたい」と廣瀬。

実際に、廣瀬のロビングは迫力満点で一見の価値がある。

どちらが上がるかわからない表彰台の中央には2大会連続で廣瀬が上がった

東京大会で3種類のメダルを獲得したボッチャが強くあり続けるには、杉村と廣瀬が互いに高め合って日本代表を牽引し続け、国内女子や若手、健常者を含む選手たちの練習パートナーを増やすためにも、奥深い競技の魅力を広めることが不可欠なのかもしれない。

自国開催のパラリンピックは終わったが、杉村も廣瀬も「ボッチャをブームで終わらせない」と口にしてきた。これから先、今大会の決勝で廣瀬がプレー中に聞こえて力にしたという、拍手やどよめきがさらに大きなものになることを期待したい。

text by Asuka Senaga

photo by X-1

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