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中間管理職が抱えている「メンタル不調」ほど、企業は対応が難しい理由

PHPオンライン衆知 / 2024年8月20日 11時50分

中間管理職のメンタルヘルス

企業において、社員のメンタル不調は大きな課題となっています。特に中間管理職は、上司と部下の間で板挟みにあい、心身ともに大きな負担を抱えているケースも珍しくありません。メンタルヘルス対策について、企業はどう考えるべきか。書籍『社員がメンタル不調になる前に』の一節を紹介します。

※本稿は、藤田康男著『社員がメンタル不調になる前に』(日本能率協会マネジメントセンター)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

カウセリングが有効か? コーチングが有効か?

相談とは、人に話を聴いてもらう行為です。話を聴く人は、相談者の話を聴くことで支援します。このような支援を対人支援サービスと言います。この対人支援サービスには、アプローチの仕方がいくつかあります。ここでは、カウンセリングとコーチングついて、私の言葉で説明します。

カウンセリングは、気分が落ち込んだ時に、本来の水準に戻すことを目的に利用するものです。心の状態を「マイナスからゼロに戻す」などとも表現されます。カウンセリングを行うカウンセラーは、相談者の心理的な問題に対応するために、心理学や精神医学、キャリア開発、労働関連法の専門的な知識を持っています。

それに対し、コーチングは通常の心理状態から、より良い状態へ向上させる目的で利用します。心の状態を「ゼロからプラスに上昇させる」などとも表現されます。コーチングでは、目標設定やアクションの管理、価値観の確認などを通じて行動変容を実現させます。

また、コーチはコーチングに関する知識を持っていますが、必ずしも心理学や精神医学の専門的な知識を持っているとは限りません。このように、カウンセリングとコーチングは同じように相談者に伴走しますが、そのアプローチ方法や持っている知識に違いがあります。

つまり、カウンセリングとコーチングの違いは、相談者の心理状態によって使い分けられるべきものなのです。では、今のあなたにとって、また、相談者にとって、カウンセリングが有効なのか、コーチングが有効なのか、分かるものでしょうか......。

恐らく、自分で分かる方、判断できる方は、これまでにカウンセリング、コーチングを受けた経験から知識として理解している、または、ご自身がカウンセラーもしくはコーチの方で、更に、ご自分の状態も理解している方だと思います。今の日本の状況で、そのような方はまだまだ少ないと思います。

少し乱暴な言い方になりますが、多くの相談者は、自分自身に適した対人支援サービスが何なのか分からないのです。ですから、まずはアプローチの手法にはこだわらず、話をしてみる、話を聴いてみるようにしましょう。その後、自分でそれぞれの体験から、どれが適しているのか否かを判断すれば良いのです。

人事労務担当者やマネジメント職の方の中には、アプローチ方法の違いを気にされる方が多くいらっしゃいます。その違いを気にするあまり、社員からの相談を拒む結果になってしまったり、社員に対して相談するハードルを上げてしまったりします。

まずは、相談してもらう、その行為自体が大切です。その上で、ちょっと違うかな? と思ったら、しっかりと話を聴いた後で、適しているサービスを案内すれば良いのです。

 

中間管理職のモヤモヤが一番難しい

相談対応として一番難しい社員の属性は、なんといっても中間管理職でしょう。中間管理職の方は、組織上、上司と部下に挟まれ、自分のルーティン作業と例外処理、並行部署との連携作業など、複数の業務をこなさなくてはなりません。なおかつ、多くのステークホルダー(利害関係者)に囲まれ、影響を受けつつ与えつつ、という立場です。

また、一般的に、中間管理職になる頃には、プライベートでも、結婚、子育て、介護と目まぐるしい変化の真っ只中であるはずです。このような多様な環境では、社員自身も何にモヤモヤしているのか、自分がモヤモヤしている真の原因は何なのか、判断しにくいのです。中には忙しさのあまり、自分の置かれている状況の言語化にさえ苦労する方もおられます。

更に、中間管理職の方には、ステークホルダーが多いことにも注意が必要です。高い確率で複数のステークホルダーの板挟みになっており、自分では優先順位がつけられない状態になっています。このような社員にこそ、人事労務担当者はより意識して、相談を受ける姿勢を示していくことが必要です。

また、中間管理職の方のモヤモヤが一番難しいのは、中間管理職を取り巻く環境が複雑だからという点だけではありません。多くの場合、モヤモヤが晴れた先に何らかの大きな意思決定がなされる可能性があるからです。

相談対応は、何らかの解決策を提示するものではありません。また、仮にその場で何らかの意思決定をするにしても、その意思決定をするのは相談者で、相談を受ける人事労務担当者ではありません。

しかしながら、甲乙つけ難い事象の話を聴き、相談者の心境の変化に寄り添っていると、あたかも相談を受けている人事労務担当者が一緒に意思決定をしているような錯覚に陥ります。

また、その意思決定を促しているように感じるかもしれません。話を聴きながら、知らず知らずのうちに、「そんなことは自分には決められない」「その意思決定に関わりたくない」と思うことがあります。これは、無意識のうちに自分の対応が、話を聴いているのではなく、意思決定を促している、と感じるからです。

人事労務担当者の方であれば、相談者の意思決定を促すような深入りはすべきでないと考えるでしょう。私もそう考えます。ですが、ここで意地悪な質問をします。

相談対応の中で、相談者が明らかに間違った意思決定をしようとした場合、あなたは止めることはできますか? また、止めるように意見を述べたとして、相談者は間違った意思決定を覆すでしょうか。更に、相談後、そのことを心の中に秘めておきますか? 然るべきレポートラインに、相談者の許諾なく報告しますか?

中間管理職の方と話をする際は、そう言った覚悟が必要です。中間管理職の方からの相談数は少ないのが実態ですが、相談があった際は、事前にレポートラインの確認や、相談者の許諾なく報告するべき判断基準をグループ内で目線合わせしておきましょう。

守秘義務と安全注意義務、会社のVMV(ビジョン、ミッション、バリュー)、顧客への責任に照らし合わせて、もっとも社会的に意義のある行動を目指すことが大切です。不正や横領、改ざん、粉飾などが見え隠れすることもあります。くれぐれも、人事労務担当者のあなた個人が責任の重みに押し潰されないように、組織の機能を果たすことを心掛けてください。

 

 

月曜日に集中するカウンセリング予約

Smart相談室のデータをみていると、カウンセリングの予約が月曜日に集中していることが分かります。

なぜ、月曜日に集中するのか。それは、週末を通じて蓄積されたモヤモヤに耐えきれないからです。もしくは、日曜日の夜に発生する「会社に行きたくない!」という気持ちを払拭できないまま業務に戻ってしまうからです。

一昔前に、日曜日の夕方に憂鬱になることを、その時間帯に放送されるテレビ番組のタイトルから「サザエさん症候群」なんて言いましたが、都市伝説のように言われていたこの症候群はあながち間違っていないのです。

人事労務担当の方は、月曜日には社員の顔色を見つつ、「今週はどんな仕事をするの?」「気持ちの良い朝だね」などと声がけすると共に、「気になることがあったら、気軽に相談に来てね」とも伝えてみてください。相談を希望する社員が高い確率でいるはずです。

そもそも、月曜日を憂鬱に感じるのは、週末の休みによって生活のリズムが崩れるからです。

夜更かしや起床時間の遅れ、朝食やランチの時間が変わるという物理的なリズムの乱れ、そしてリラックスした状態が長く続くことにより、副交感神経が優位となって交感神経とのスイッチがうまくできなくなるという乱れも考えられます。そのリズムの崩れが自律神経の乱れに繋がり、ひどい場合には、休み明けに出社できなくなってしまいます。

休み明けの声がけで相談を希望した社員については、気持ちへの寄り添いとともに、生活リズムの乱れについても念頭に入れておきましょう。生活リズムの乱れからくる気分の浮き沈みは、どんな社員にも発生しています。

そのような状態で働き続けると、高い確率で体調不良になります。このような場合には、積極的に介入して具体的なアドバイスをしましょう。また、お休みの過ごし方、生活リズムについて、社員に啓蒙していく必要もあるでしょう。

 

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