フランス人に学ぶ「人生で一番大切なもの」を明確にする生き方
PHPオンライン衆知 / 2024年12月19日 11時50分
プライベートを犠牲にして、仕事を優先してしまうという人がいます。しかし人生において仕事とはどんな意味を持つものでしょうか? フランスでは「人生で一番大切なもの」を明確にし、その指針にそって働くものだといいます。前田康二郎さんが、日本にも長く在住した経験を持つフランス人夫妻、パスカル・フロリさんとセドリック・フロリさんに学んだ生き方について書籍『改定新版 自分らしくはたらく手帳』よりご紹介します。
※本稿は、パスカル・フロリ、セドリック・フロリ、前田康二郎著『改定新版 自分らしくはたらく手帳』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋・編集したものです。
生き方の中に、 はたらき方がある
自分のことは自分が一番わかっているつもりでも、自分とかけ離れた立ち位置にいる人と話をすることで、改めて自分を知ることがあります。パスカルさんと話をしていると、フランス人についてのことはもちろん、日本人とはこのような特性があるのだ、と改めて気付かされるのです。
はたらくということについては、日本人は「仕事」が常に人生の中心にあり、その外側にプライベート、家族、休暇、趣味、友人など、その他のものが「付随」しているというイメージで生きています。だから日本人は、 「仕事もプライベートも大切」という考え方を「それはわがままなのでは」と思ってしまうのかもしれません。
なぜなら、「プライベートより仕事が優先」という姿勢を見せなければ、会社から評価されませんし、人生の中心を占めるメインの「はたらき方」がしっかりしていないと、その人全体がしっかりしていない、と家族や世間などから思われてしまうところがあるからです。パスカルさんも「そうですね。だから日本人は仕事に対してのこだわりや責任感が強いのだと思います」と言います。
一方、フランス人は「生き方」というものが常に中心にあって、その内側に、はたらき方、家族、友人付き合いなどがあります。フランス人は、生き方、自分の人生の指針にこだわりのある人が多いということも言えるでしょう。
Il faut manger pour vivre et non vivre pour manger.
人は、生きるために食べるのであって、食べるために生きるのではない
日本人は、仕事に対してのこだわりが強いから、そこに努力は惜しまない。一方フランス人は、自分の人生の指針を曲げないから、その指針の中で重要なものは、徹底的に大切に扱います。それが家族なのか、パートナーなのか、食なのか、ボランティアなのか、趣味の絵画なのかはみな人それぞれに違います。けれど、指針の中で「仕事」が大事な位置づけを持っているならば、努力は惜しまない。
パスカルさんは、「日本は、職場や家庭など、あらゆるものが個人単位ではなく、グループ単位ですから、それらのプレッシャーが大変ですよね」と言います。私も彼女にそう言われてドキッとしました。そうしたグルーピングを優先してしまうあまり、本来自分自身のやりたいこと、望む生き方を封印してしまう人がたくさんいるのではないかと思ったのです。
まずは、「あなたの人生で一番大切なもの」をはっきりさせる必要があるのではないでしょうか。
お金は大切、だけど......
ある会社で、役員の携帯が鳴りました。
その方が電話を切った後、どのような内容かを話してくれましたが、「セミリタイアして暇だから、南の島へ一緒に遊びに行かないか」というお誘いだったようです。そんな誘いって本当にあるんですね、と言ったら「でも仕事のほうが大事だし、何日か遊んだらすぐ飽きちゃうから断りましたよ」ということでした。セミリタイアした人もまだ若い方のようで、同じ年代で一緒に遊んでくれるような時間のある人がいないのでしょう。
お金があるのだから、1人で悠々自適に過ごせばいいのに、と思ってしまいますが、いくらお金と時間があっても、一緒に楽しんでくれる人がいないと、やはり物足りない。お金のある人はある人で悩みがあるということでしょう。
私もいつか、書いた本がベストセラーになって南の島で優雅に年に何冊かエッセイを書いて......などという生活を夢見ていますが、そのように妄想しているときが、一番楽しいのかもしれません。
L’argent ne fait pas le bonheur.
お金持ちだからといって、幸せとは限らない
お金は大切だけれど、何のために、どれくらい必要なのかということは、考えていないといけないことなのかもしれません。パスカルさんともよく会話をする中で「どう生きたいのか」ということが話題に出てきます。
「どう生きたいのか」ということを「最初に」考えておけば、たとえばお金や仕事に関しても、「これで十分」というところで打ち止めをして、他に人生を充実させるものに時間を充てることができるでしょう。しかしそれがないと、「とにかく今は稼げるだけ稼がないと。どう生きるかはお金が溜まってから考えよう」という発想になってしまいます。
自分にとって本当に必要なだけのお金があって、大切な人がいてくれればそれでいい。日本でも「粋」という言葉がありますが、フロリさんの家を訪れても、話をしても、いつもその言葉が思い浮かびます。「身の丈にあった、ふさわしい生き方、はたらき方」。それは伝統的な日本人の姿でもあり、フランス人とも共通するものがあると思うのです。
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