ポイント戦国時代のポイント経済圏を知る上で重要な5つのキーワードを紹介(菊地崇仁)
ポイ探ニュース / 2024年4月27日 6時14分
2024年4月22日(月)に、TポイントとVポイントが統合し、「青と黄色のVポイント」が開始した。
ポイント経済圏争いも激しくなり、ニュース番組などでも「ポイント戦国時代」と表現されることもあるが、新Vポイントの誕生でどのような所に注目すべきか。今後のポイント経済圏を見ていく上で、おさえておきたいキーワードを5つ紹介したい。
なお、これまでのポイント経済圏の変貌を確認してから読むとわかりやすい。
1.MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)
これまでのポイント経済圏は、Pontaポイント=au、楽天ポイント=楽天モバイル、dポイント=ドコモ、PayPayポイント≒ソフトバンク(ソフトバンクポイントからPayPayポイントに交換可能)と、ケータイ事業者(MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者))が軸となっていた。
新Vポイントにはスマホがなく、それでも経済圏として成り立つのかを聞かれることも多い。
しかし、Vポイントがたまるスマホは既に「トーンモバイル」があり、基本プラン、通話料、オプション料金に対して110円(税込み)につき1ポイントたまる。
「トーンモバイル」は、自社回線ではなく、ドコモ回線を利用してサービスを提供(MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者))しており、回線がなくてもスマホ事業に参入することはできる。
5大ポイント経済圏に食い込む可能性のあるWAON POINTにもイオンモバイルがあり、MVNOとしてサービスを提供している。今後、スマホがない事業者がポイント経済圏争いに参入する場合に、MVNOで参入する可能性が高い。
2.BaaS(Banking as a Service)
MVNOはMNOの回線を借りて事業を行っているが、銀行ビジネスでも同じようなサービスがある。
BaaS(Banking as a Service)は、銀行部分は既存の銀行が担い、サービス部分を事業者が担う仕組みだ。2024年5月9日(木)に予定しているJRE BANKはビューカードが楽天銀行を所属銀行とする銀行代理業者として各種契約締結の媒介を行うサービスとなり、入出金や振り込み、住宅ローンなどは楽天銀行が、それ以外のJRE POINTの付与などをビューカードが行う事になる。
同じようにドコモが行っているのはdスマートバンクだ。三菱UFJ銀行のAPIを利用したサービスを提供している。しかし、dスマートバンクは動きが遅いと感じるため、他の銀行ともサービスを開始する可能性があるかもしれない。
マネックス証券を子会社化したように、他の銀行を子会社化するという事も考えられ、オリックス・クレジットとの資本業務提携に関する発表もあったため、オリックス銀行なども想像してみている。
BaaSに話を戻すと、突然銀行が誕生するわけではなく、○○銀行の△△支店となり、例えば、JRE BANKの場合は楽天銀行の「JREはやぶさ支店」「JREとき支店」「JREこまち支店」、JAL NEOBANKは住信SBIネット銀行の「JAL支店」となる。
楽天銀行、三菱UFJ銀行、住信SBIネット銀行(NEOBANK)の他、GMOあおぞらネット銀行(BaaS byGMOあおぞら)、みんなの銀行(Minna no BaaS)などが提供している。
3.EC(Electronic Commerce:電子商取引)
ポイント経済圏のオンラインショッピングモールを見ると、楽天市場、Yahoo!ショッピングは強いが、他の経済圏で強いオンラインショッピングモールは見当たらない。
ドコモがAmazonと提携したのは、楽天市場、Yahoo!ショッピングと経済圏争いするにはECを強化する必要があるためだろう。
au PAYマーケットが2024年7月からPontaポイントを1.5倍で利用できる対象者を増やすのも、ECを強化する狙いがある。
こうなると、VポイントもECを強化する必要があり、今後の提携先などに注目したい。
4.タッチ決済
Vポイント陣営と他のポイント陣営の違いは、コード決済があるかないか。一応、モバイルVカードでVマネーを利用する事はできるが、正直微妙だ。
現在、スマホ決済と言えばコード決済を思い浮かべる人も多いが、Vポイント陣営が力を入れているのはタッチ決済。
タッチ決済に対応しているクレジットカードやデビットカードなどをレジでかざすと支払う事ができるサービスとなり、PINの入力やサインなども不要。
三井住友カードの対象カードをApple PayやGoogle Payに登録して、セブン-イレブン、ローソンのコンビニ、ガストなどの対象飲食店でスマートフォンでのタッチ決済を利用すると7%超のVポイントを獲得できる特典がある。さまざまな条件をクリアすると最大20%還元となり、対象加盟店を利用する人にはおトクだろう。
「スマートフォンのタッチ決済を利用すれば」と言う条件を見ると、Vポイント陣営としてはスマホ決済=タッチ決済に持っていきたいはずだ。
元々、日本人はSuicaやnanaco、WAONなどのようにかざして支払うのは慣れている。スマホ決済=タッチ決済をどれだけ普及させられるかで、Vポイントの位置づけが大きく変わってくる。
5.鉄道
突然専門用語ではなく一般的な単語を出したが、鉄道会社は金融ビジネスに力を入れはじめている。コロナの影響が大きかったのだろう。コロナ禍では鉄道乗車率が大幅に下がり、他のビジネスも考える必要が出てきた。
2023年にはJR西日本がWESTERポイント、JR東海のTOKAI STATION POINTなどを開始し、関東の私鉄もポイントをまとめてきている。
JR東日本が2024年5月9日(木)に開始する予定なのがJRE BANKだ。上記の2番目に紹介したBaaSでの銀行サービス提供となる。
銀行やケータイ事業は参入障壁が高いが、MVNOやBaaSの仕組みが用意されており、裏方を全て任せることで新規参入できる。
しかし、鉄道については線路を貸し出すようなサービスがなく、他のポイント経済圏でも簡単に参入できる物ではない。
JR東日本が新しいサービスを開始すると、他のJRグループも後日参入する事が多く、今後WESTER BANKなども開始する可能性もある。
ポイント経済圏の今後の動きはなかなか読みにくいのだが、それぞれの経済圏の弱みを強化するような提携・買収などが増えていくだろう。
それぞれの経済圏で強み・弱みもあり、1つの経済圏にまとめるのは難しい段階に来ている。消費者としては複数の経済圏をバランスを考えながら併用して使い、おトクを最大限にする事を考えなければならない。
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