佐原ひかりさん、新しい“お仕事小説”についてインタビュー「働くときに大事なのは、絶対にしたくないのは何かということ」
NEWSポストセブン / 2024年6月16日 16時15分
佐原さん自身がプライベートで手紙を書くときは、気持ちの赴くまま、徒然なるままに書き、それが楽しいそうだ。
年上のみなとと、若い飛鳥は、おたがいの年齢や性別にとらわれず、時折ぶつかりながらも、2人でしかつくれない関係性を築いて働き方を見つけていくのが気持ちいい。
「読んでいるときに風通しのいい感じにしたいと思って書いていました。なにしろ『鳥と港』なので。鳥は風に乗るし、海辺も風が吹くイメージですよね。本の中でも、実は要所要所で風を吹かせているんです」
そう聞いてから読み返すと、冒頭のページでも骨までかじかむような風が吹き下りているのに気づいた。風の向きは、そこからさまざまに変わっていく。
「最後のシーンは、浮遊感というかふわーっと広がるようにしたいと思っていましたね。季節が一巡りして終わるので、そう言えばうってつけの言葉を書いていたなと思い出して、ラストに持ってきました」
読み終えて、佐原さんからの手紙を受け取ったような、あたたかな気持ちになる小説だ。
【プロフィール】
佐原ひかり(さはら・ひかり)/1992年兵庫県生まれ。2017年「ままならないきみに」でコバルト短編小説新人賞を受賞。2019年「きみのゆくえに愛を手を」で氷室冴子青春文学賞大賞を受賞し、2021年同作を改題、加筆した『ブラザーズ・ブラジャー』で本格デビュー。ほかに『ペーパー・リリイ』『人間みたいに生きている』、共著に『スカートのアンソロジー』『嘘があふれた世界で』がある。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2024年6月27日号
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