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免許返納はしたけれど…… 運転をやめたことで認知症の症状が出始めることも

NEWSポストセブン / 2024年6月22日 16時15分

 こう話すのは、九州北部の過疎地域に1人で暮らす末永より子さん(仮名・76歳)。路線バスが自宅近くを走っていたのは、もう何十年も前の話だ。バスが撤退し、タクシー会社は潰れ”交通難民”向けにと市が走らせていたコミュニティバスも減便の憂き目にあったが、そもそも最寄駅までは末永さんの足で歩いて2時間以上。その最寄駅すら、2時間に1本程度しか列車は来ない。だから自家用車は必須だった。だが、メディアで連日のように報じられる高齢ドライバーによる事故を見て、息子や娘、親族からも「もう運転はやめてほしい」と懇願されたのだ。

「人生100年時代といわれるし、体もまだピンピンしているのに、このまま20年以上、移動の自由もなく生きなきゃいけないのかな、と思いますね」(末永さん)

半年後、日付や時間が分からなくなった

 東北地方の過疎地域に暮らす高齢の両親がいるという、都内在住の会社員・野老伸一さん(仮名・50代)も、免許を保持していた父(80代)に免許返納をお願いした。両親の移動には、父親が運転する車が必須だったが、父親もまた、高齢ドライバーが起こした事故のニュースを見ており「仕方ない」と免許を返納した。そして、その影響はわずか半年後に思わぬ形で訪れた。

「運転をせず、外に出なくなった父に、それまで全く予兆もなかったのに、認知症のような症状が出始めたんです。その時、母が初めて教えてくれたんですが、免許返納について、父の中では相当なショックと葛藤があったそうです。車の運転が好きな父でしたし、家族でドライブに何度行ったかわからないくらい、父にとって車は重要でした。だから、免許返納をと言われ、自分自身を否定されたような気持ちになっていたというんです。免許返納から1年も経たないうちに、日付や時間がわからなくなり、1人で食事や排泄もできなくなった。正直、こんなことなら多少の不安があっても、運転をさせ続けるべきでした」(野老さん)

 野老さん自身も、高齢ドライバーによる事故のニュースを何度も見ている。高齢の父が運転することで、万が一、誰かを傷つけてしまうのではないかという不安はあった。それでも、今は結果的に後悔していると打ち明ける。その後、認知症の初期症状が出始めた父親は施設に入居し、過疎地域に1人、高齢の母親だけが取り残された格好になった。

「母はもともと運転ができない。だから、買い物とか通院の際には、近くに住む親族にお願いをしており、以前より家族の負担が増えた。メディアは、高齢者は免許返納を、としか言わない。その後を経験していないからでしょう。元気な高齢者から免許を取り上げるより、もっと安全な車を作るとか、そういう議論がなされないと、我々だって、父のように運転する、移動するという生きがいを失ってしまうんではないでしょうか。少なくとも、父への行政的なフォローなど全くありませんでした」(野老さん)

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